「頭いっでぇ…」

「昨晩どんだけ飲んだんですかデンさん…」

「いや、途中まで覚えてんだけどよ。気づいたら自分家のベッドだったべ?」

「飲むのはいいですけど翌日に響かないようにしてくださいよ」


昨日私が帰ったあとも一人で飲み続けていたらしいデンさん。
後でノルさんに詳しい事を聞くと「足引っ張って連れて帰ったべ」との事らしい。
ノルさんも苦労するなぁ…。


「ふぅー…」

「名前さんお疲れみたいですね」

「うーん、ちょっとね。肩がこっちゃってさぁ。本当にマッサージ機買おうかな…」

「ぢょごっと後向げ」

「え、何スーさん」


私の背中に回ったスーさんはの大きな手を私の肩に乗せてぎゅっぎゅと揉み解した。


「うあー…スーさん上手…」

「そうなんですよね!スーさんってすっごくマッサージするの上手で僕もたまにやってもらってるんですよ!あ、もちろん僕も代わりばんこでやってるんですけど」

「いいなぁー。うちのギルはそんな事してくんないもん。アーサーはたまにやってくれるけど」

「アーサーさんですか」

「アーサーもけっこう上手でさ。こう、腰とかのツボをよく分かってんだよねーあの眉毛」

「腰…」

「今アーサー出張中で居ないんだよねー…なんか寂しいっていうか…あー、そこそこ気持ちいー!」

「名前さんってアーサーさんの事すごく頼りにしてますよね」

「うーん…そうだなぁ…まぁお隣さんだから何かあったらすぐ助けてもらえるってのもあるんだけど…いつも困った時一番最初に助けに来てくれるのっていつもアーサーだからねぇ。口煩いけど男らしいとこあるし…そういうとこは好きかなー……っていだぁっ!!!」


肩に激痛が走った。


「…すまね…つい力入っちまった…」

「ううん、大丈夫だよー。それにしてもスーさんマッサージ上手だよねー。あ〜だいぶ楽になった!」

「また辛がったらいつでもしてやっから」

「うん、ありがとう」

「それじゃあそろそろお昼ですしご飯食べに行きましょうか!」

「うん!」




―――




「つ、疲れた…」

「お疲れさーん。今日は遅かったね」


帰ってくるなり玄関先の廊下でへにゃりと倒れこむギル。


「本田ん家手伝いに行くの…今日で終わりだったから…」

「え、そうなの?」

「あぁ。それに明後日は出かけるしな」

「そっか。お疲れ様」

「おー…」

「お腹すいてる?」

「それより眠い…」

「よし、今日は私のふかふかベッド貸してやるからあっちで寝てこい」

「おー…」


ふらふらと立ち上がって服を脱ぎ始めたギルは疲れきった顔で私の寝室へと向かった。

私は明日休みだし夜更かしして映画でも見よう。

しばらく一人リビングで映画を見ていると、部屋から出てきたギルが目が開いていないままふらふらと私の横へ座り、ポンと膝に頭を乗せて再び眠りに落ちた。

犬か何かか、お前は。
ちゃんとベッドで寝たほうがいいと思うんだけどなぁ…。
ま、ギルがいいなら別にいいけど。


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