「あ…今日は祝日か…」


目が覚めると時刻は午前9時。
時計を見て一瞬心臓がドキッと嫌な音をたてた。

まだはっきりとしていない頭でパジャマのままリビングへと向かう。
あー、寒い。
本格的に冷え込んできたよなぁ…。


「ギルーおはよー…」


ソファーベッドに寝転がって布団から頭だけ出しているギル。
隣に腰掛けて体を倒し「朝だよー」と声をかけるも返事は返ってこない。


「ねむっ…」


ダメだ、昨日のお酒のせいでまだ体だるいや…
最近飲みすぎだなぁー私。


「ギールールーン」


ちょこんと出た頭をポンポンと撫でて枕元に肘を置いて頬杖をつく。


「ギー…って、あれ…?」

「あ、な、その…す、すまない…俺、だ…」


腕を掴めばゴツゴツとした感触。
あれ…ギルってこんなにゴツゴツだったっけ…?
それにこの声は…


「る、ルートくぅうううん!?」

「いや、その…昨日うっかり疲れ果てて眠ってしまってだな…!!」

「うわービックリした!!そうだったんだー。前髪下ろしてるから一瞬ギルと見わけつかなかったよ!!そっくりだよねー」

「すまない名前…」

「何ですかな」

「とりあえず…離れて、くれない、か」


顔を真っ赤にしているルート君。
あぁ、そういえば添い寝してるみたいになっちゃってるよね。
照れ屋さんだなぁルート君は。そんな所も可愛いなんて思ってしまう私は本田さんと同じ変態なんだろうか…。いや、これは純粋に弟を可愛く思うような心であってだね…

体を起こしてソファーの上でボーっとしているとルート君も体を起こして「はぁ…」と大きくため息をついた。


「幸せ逃げるよルート君」

「いや、もういい…。洗面所借りるぞ…」

「はいはーい。あ、でもちょっと待って」


―ピロリーン


「…何を撮っている…?」

「いや、寝起きルート君が可愛いもんだから、つい」

「お前…」

「違うよ。これは純粋にルート君を弟のように可愛がってるわけであって変態とかじゃないからね。断固拒否します」

「消せぇええええ!!今すぐ消せぇえええええ!!!」

「嫌だよ。前髪下ろしてるルート君って幼くて可愛いよね」


ふふふと悪い笑みを浮かべるとルート君は頭を抱えて「うわあああ!!」と叫んだ。
ルート君が取り乱す姿ってなんだか面白いなぁ。


「何朝から騒いでんだよ…あー、さみぃ…」

「ギル。床で寝てたの?」

「んあー…ルッツがソファー使ってたからな。毛布に包まって寝てた」

「すまないな、兄さん」

「気にすんな」


ルート君が片手で整えようとしている前髪をわしゃわしゃと撫でるギル。
こうして見るとやっぱりギルはお兄さんなんだなぁって思うよね。
ルート君もなんだかんだ言ってギルの事慕ってるみたいだし。
羨ましいなぁ…。


「よし、朝ご飯にしよう!!あ、でも食材ないんだった…。三人でどこかに食べに行こうか」

「いや、迷惑だし俺はそろそろ自分の家に帰るぞ」

「いいじゃん一緒に食べようよー。一緒にたこ焼き投げた仲じゃん」

「できればその事は忘れてほしかった…」

「食べ物は粗末にしちゃダメだよルート君」

「元はと言えばお前がどんどんビールを勧めてきたのが原因だろうが!!」

「だって私も酔ってたんだよ。酒の力とはいえ恐ろしいよね」

「その被害にあってんの全部俺なんだけど!?っていうかなんかお前ら前より仲良くなってねえか?」

「私とルート君は以前から仲良しだよ。ねールート君」


ルート君のゴツゴツした肩に手を置いて寄り添うとかちこちと体を強張らせて「あああああ…」と小刻みに震えた。
やばい、本当に面白いなぁルート君…!!


「俺の弟からかってんじゃねーよ!!」

「ちっ…」


ギルに無理矢理体を引き離され頭をぺしんと叩かれる。
パジャマから部屋着に着替えて三人で外に朝食をとりに出かけた。
適当に入ったファーストフードのお店でサンドウィッチとコーヒーを飲んでまったりと三人でお喋りを楽しんだ。
こういう朝も良いよね。

用事があると自分のマンションに帰って行ったルート君を見送り、私達も買い物をして家に戻った。
なんだかんだ行ってルート君を引きとめちゃったからちょっと罪悪感感じるなぁ…。


「お前さ…」

「んー何?」


本田さんの家に出かける準備をしているギルがごにょごにょと口ごもらせて私の顔をチラチラと横目で覗いた。


「お前…ルッツの事、その…随分可愛がってるみたいだな」

「うん。だってルート君本当の弟みたいで可愛いし優しいしかっこいいし。ついからかいたくなっちゃうよね」

「お前なぁ…俺の弟で遊ぶなよ。あいつ純粋なんだからな」

「だよね。軽くムキムキの筋肉触っただけで真っ赤になるし」

「触ったのかよ!?」

「アルコールの力って怖いよねー」

「ちっくしょぉおおお!!!」


ギルのやつブラコンだなぁ…。
まぁ本当のお兄さんには負けるけど私だってルート君の事可愛いし。

もっと仲良くなれるといいなぁなんて呟くとギルがよろけて壁に頭を打ち付けた。

何やってんだか、あのお馬鹿は。


.


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -