「こんにちは名前さん。ネタ徴収にやってきました」

「帰れ」


夕方。今日の晩御飯はコロッケ!!
結構得意なんだよね〜。
あ。揚げるのギルにも手伝わせよー


「ちょっ、無視しないでくださいよ名前さん!!貴方の本田菊ですよ!!」

「誰がだ。美少女にハァハァと息を荒くする人なんて私知りませんよ」

「酷いですねぇ。誰がここまで育てたと思ってるんでしょう、この小娘」

「育ててもらった覚えはねーよ死ね糞ジジイ」


マンションのすぐ近くの一軒家に一人で暮らしているこの男。
ここに引っ越してからというものの、色々と世話を焼いてくれる母のようであり、父のような存在だ。
しかし最近色々とイメージが崩壊しつつある。萌えーだの、テラカワユスーだの。


「最近人を蔑む表情が上手くなってきましたね名前さん」

「そうですか。そりゃあんなのと毎日居ればこうもなりますよ」

「昔はもっと無邪気で可愛かったんですけどねぇ…。きくしゃーんあそぼーってテケテケと駆け寄って来て…」

「なに捏造してんすかこのロリコンジジイ」


メモ帳にをスラスラとペンを滑らせる本田さん。
何書いてんだ…。
これ以上は時間と労力の無駄だと察した私は本田さんを無視することにした。


「ギルーコロッケ揚げるから手伝って」

「はぁー?ったくめんどくせぇな」

「はいはい文句言わないの」


渋々キッチンに来たギルを油鍋の前に立たせ、コロッケを油の中に入れていく。
うん、ジュワジュワといい音が鳴ってるじゃないか


「あちっ!!油飛んだ!!」

「ちょっとぐらい大丈夫だって」

「ダメですよ名前さん。そこはさんが舐めて消毒をしてさしあげないと」

「そんな展開誰も望みませんから」

「あちっ!!無理無理!!なんか無理だぜこれ!!」

「はぁ〜〜…。情けない」


油ごときで怯える男ってどうなんだろう…

深くため息をついてギルから菜箸を奪って油の前に立つ。
もういい。自分でやった方が早いわ、これ



「はい出来上がり。熱いから火傷しないでねー」

「あちぃ!!」

「言ってる傍からやるかー普通?」


涙目で口元を押さえているギルに水を差し出すとものすごい勢いで飲み干した。


「流石ギルベルトさんですね!!」

「流石って何!?もうわけわかんないよ本田さん!!」

「それにしても名前さんのコロッケは絶品ですね。どうやったらこんなに外はカリっと中はフワフワになるんでしょう…」

「あんま荒いパン粉を使わないことぐらいで特に工夫はありませんよ」

「才能ですか。見た目によらず料理は得意ですもんねぇ」

「どういう意味ですかそれ」

「まぁ食えない味じゃねーよな」

「褒めてんの?貶してんの?つか二人とも文句あるんだったら食べなくていいから。それこっちよこせ」


二人のコロッケのお皿に手を伸ばすと、ササッと私の手の届かない安全な場所にお皿を移された。
うわ、腹立つなぁこいつら…。
しかも食事時にアニメ見てるんですけどこの二人。


「サスケ悪役っぽくなりましたよねぇ。白眼族萌え」

「俺ガキの時ニンジャはビームが出せるのかと思ってたんだけど、ほんとは違うんだよな。あと刀は背中に挿すんじゃなくて腰なんだろ?」

「よくご存知ですねギルベルトさん。さては昨日の忍たま見てましたね」

「土井先生の説明分かりやすいぜー!」

「中の方が素晴しい証拠ですよ」

「何このオタク二人」


ダメだ、話に全くついていけないんですけど…!!
私だけ仲間外れかちくしょー…


「ご馳走さまー。…ちょっと二人ともアニメばっか見てないでご飯食べてよねー」

「ふぉおお!!アスマ先生ぇえええ!!」

「うわ、このねーちゃんべっぴんだな」

「あぁその人は紅先生と言ってキバやシノの先生ですよ」

「へぇ。結構俺好みだぜ」

「だんだんギルベルトさんの趣味を理解してまいりましたよ、私」


ムカムカムカ…
ちきしょう、私のことは無視かお前ら。
いい歳してアニメなんて見やがって


「はぁ…アーサーんとこでも行って来よ・・・」

コロッケもけっこう余ったし、わけてあげれば喜ぶよね


―ピンポーン


「アーサー。遊びにきたよー!」

「遊びってお前…」

「いいから中に入れてくれたまえ。寒い」

「ったく…」


料理中だったのか、黒いエプロンをつけているアーサーはさまになっている(格好だけね)
レトロなアンティークで統一されたアーサーの部屋。うん、いつ見てもいい趣味してるよこいつ。


「あ、これおすそ分け」

「ん。サンキュ。お前もう腹一杯いか?よければこれから一緒に…」

「いいいいい、いらん!!いや、さっきコロッケいっぱい食べたし!?それに今ダイエット中なんだよねーアハハハ!!」

「ダイエットって…。どこも太ってねーだろ」

「着痩せすんのぉおおお!!なんなら確認します!?」

「ばっ…!!何いってんだよばかぁ!」


あ、危なかったぁああ!!もう少しであの破壊的不味さの料理を食わされるところだったよ…!!


「そういえば、あのヒモ野郎はほったらかしにしてても大丈夫なのかよ?」

「あー。今本田さんと二人でアニメ見ながらご飯食べてるよ」

「相手にされないからこっちにに来たんだろ、お前」

「う…。なぜそれが分かった…」

「長く隣人やってりゃお前の行動パターンぐらい読めるんだよバーカ」


ちくしょー。なんかアーサーには何でも見透かされてる気がするよなぁ…
それだけ心を許してる相手って事なのかな。


「あ。そういえばこの間アルフレッド君とマシュー君が遊びに来てさ。もうすぐ入学だし何かお祝いあげたいんだけど何がいいかな?」

「はぁ!?ったくあいつまた勝手に…。ってゆーかそんなに気を使わなくてもいいからな」

「いいのいいの。いつも遊んでもらってるし。それに本当の弟みたいでかわいくってさ〜!」

「そ、そうか…」

「それで、お祝いは何にしよう?あ。そういえばアルフレッド君はビデオカメラが欲しいとか言ってたよ」

「うげ…マジかよ。もう万年筆かっちまったじゃねーか」


予想通りで嬉しいよ、アーサー。


「あいつらが好きなものって映画かゲームしか思いつかねーな」

「映画かゲームねぇ…。そういえばアルフレッド君はあのゲームにはまってるとか言ってたよ。ほら、あのウェーとかオェーとか名前の」

「それWiiだろ俺でも知ってんぞ!?」

「あ、それそれ。ったく最近のゲームってわけわかんないよ。スーパーファミコンでいいじゃんスーファミ」

「お前何時の時代の人間だよ」


しょうがないじゃん。ゲームには疎いんだよ、私。格ゲーか落ちゲーしかできないし。
ともかく、アルフレッド君とマシュー君の入学祝いはもう少し考えてみよう。
ティノ君とスーさんに相談するのもいいかもしれない


「さてと。そろそろ帰ろうかな」

「もう帰るのか?」

「うん。もうナ●トも終わってる頃だろうしね。後片付けしなくちゃ」

「お前も色々大変だな…」

「まぁね。それじゃあお邪魔しましたー」

「また明日な」


さて、後片付けは沢山残ってるぞ!!
お皿あらってギルの飲んだビールの缶を片付けて、終わったらギルに肩でも揉ませよう。あいつやたらとマッサージ上手いんだよね〜

靴を脱ぎながら小さく「ただいまー」と呟くと、本田さんが顔をひょこっと覗かせて「お帰りなさい」と申し訳なさそうにはにかんだ。
どうやら話しに夢中になりすぎて私の存在を忘れていた事を反省しているらしく、食器の片付けやお皿洗いなどを手伝ってくれていた。
ソファーに座ると「か、肩でも揉んでやろうか?」と照れくさそうにギルが私の後ろに立ったので、なんだか可愛く思え「それじゃあ揉んでくださいなー」と見上げると元気な声が返ってきた。

「もももも、揉むってどこをですかぁああ!?」と息を荒らしながら走ってきた本田さんを気にかけることはしない。













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