時刻は夜中の11時をさしていた。
いつもこの時間は寝てしまっている私だが、今日は見たいDVDがあった為こんな時間までテレビを見ていた。

一緒に見てたはずなのにギルは寝ちゃってるし…
私もそろそろ寝ようかな…


ガタッ


あれ、今玄関の方から物音したよね…?
ん…?なんかデジャヴ。

も、もしかして


「アーサー!?」

「ん〜」

「んーじゃねぇよ!!何酔っ払っちゃってんの!?明日も仕事あんだろーが!!」

「んぅー…」


頬を赤く染めているアーサーの目は虚ろだ。
やばい、これは本格的に酔っ払ってる。
早めに部屋に帰して寝かせないと…


「ほらアーサー立って、ってうぉおおおおおお!?」

「名前…」

「ちょっ、くっつくなって!!うぎゃぁああどこ触ってんだ無い胸触っても楽しくないってぇえええ!!!」


いきなり抱きついて、なにやらもぞもぞと私の体を触るアーサー
やばい。私の中の危険信号が激しく警報を鳴らしていた


「ちょっとアーサー!!」

「名前」

「耳元でエロい声出してんじゃねーよぉおお!!」

「いいだろ別に…」

「うわぁああん本田さーん助けてーー!!!」


なぜ近くで寝ているギルに助けを求めなかったのかはわからないが、一番最初に顔の浮かんだ本田さんに届くはずの無い助けを求めた(だってほら、本田さんは私の保護者みたいなものだし)


「こっち向けよ…」

「ヒッ…!!」


頬に手を添えられ鳥肌が立った。
こんなヘタレじゃないアーサーなんて嫌だなぁあああ!!!


「名前…」


アーサーの顔が目と鼻の先にある
ああもう、恥ずかしさで死ねそう…

力強く押しても、男のアーサーの力には敵うはずがない。ちくしょう!細っこいくせに!!

もうダメだ。諦めて瞼をぎゅっと瞑った


「何やってんだテメェ!!」

「ぐほっ」


目の前にあったアーサーの顔が視界からそれた
そして、私を見下ろすギルベルト…


「って、ギルぅう!?ちょっ、それでアーサー殴ったのぉおおお!?」

「あ…やっちった」

「やっちったじゃねーよ!!傘で殴るか普通!?ってアーサー頭から血ぃ出てるじゃん血ぃぃいい!!」


ギルがすぐ傍にあった傘で殴った為か、アーサーの頭からポタポタと血がにじみ出ている


「てめっ!!せっかく助けてやったっつーのに感謝の気持ちもねーのかよ!?」

「いや、感謝してるけど傘はないって!!道具なんて使わずに普通に殴るとこでしょここは!!」

「すぐ傍にあったんだから仕方ねーだろ!!」

「ん…なんか頭いた…」

「ぎゃぁああ!!血まみれで這ってこないでよアーサー!!」

「すげー、バイオハザード…」

「ゾンビ扱いしてないでタオル持ってこい馬鹿野郎!!!」



―――


とんでもない目にあった。
そもそもの元凶はこの男にあるので一発おみまいしてやりたいところだが、一応怪我人なので下手に殴れない。


「はぁー…。もうすぐ日付変わるじゃんか。明日も仕事あるっつーのに」

「わ、悪い…」


すっかり酔いが冷めたアーサーの傷をタオルで押さえ、息を吐いた。
だいぶ血は止まってきたな。切り傷みたいになってるから消毒しないと…


「ほら、消毒するから我慢しててね」

「あぁ…」

「ちょいちょいっと…。はい出来た。傷が広がらないように注意するんだよ」

「悪いな、色々と…。その、さっきは…」

「あ、今回は記憶飛ばしてないんだ。いいよ、水に流しましょう。ギルが怪我させちゃったしおあいこって事で」


ばつの悪そうな顔をして顔を背けるアーサー。
まぁ色々触られて一発ぶっ飛ばしてやりたいところだけど、今回は許してやろう。
それにこいつの酒癖の悪さは今に始まったことじゃない。


「ギルも謝りなさい」

「俺は悪い事してねーだろ!?つかお前もホイホイ酔っ払いに近づくのが悪いんだろーが!!そいつの酒癖の悪さ理解してんなら警戒ぐらいしろよ馬鹿!!」

「ちくしょー珍しく正論言いやがって…。むかつくなぁ、禿げろよお前」

「なんでだよ!?」

「アーサー、明日仕事大丈夫?」

「二日酔いじゃなけりゃな」

「ウ●ンの力あげるからこれ飲んでさっさと寝なよ」

「ほんとに悪い…」

「そう思ってるならもう酔っ払って私ん家の玄関叩かないでください」


なんでこいつは酔うたびに私の家の方に来るかな…。
毎回介抱してやると思ったら大間違いだぞ


「それじゃあお休みー」

「お休み…」

「二度と来るな眉毛」

「こら」



時刻は24時10分前
まったく、人騒がせな隣人のせいで寝るのが遅くなった。


「ほらプー、寝るよー」

「なんか目ぇ冴えたからテレビでも見とくぜ」

「うわ、いいよなぁプー太郎は。私も平日に夜更かししてみたいもんだよ」


夜通しで映画とか見てみたいなー。
休みの日は疲れを癒す為に早く寝ちゃってるし
ほんとに羨ましいぞこのプー太郎。


「それより、さっきお前あの眉毛に何かされてなかったか?」

「え?」


何やら、チラチラと視線を私とテレビの間を行き来させるギルベルト。
こいつ最近よくもじもじしてるよなぁ。
何か言えない事でもあるんだろうか。
女の私じゃ理解できない事でもあるのかもしれないし。うーん…


「さっき!!あの眉毛野郎に襲われかけてた時だよ!!」

「あぁ。抱きしめられてー頬触られて。あと胸掴まれたりベタベタ触られてた」

「なっ…!?」


ハトが豆鉄砲をくらったみたいな顔をしたギルは数秒間停止した後に、言葉を詰まらせながら小さく呟いた。



「おっ…お前に掴めるほどの胸ねーだろ…」


こいつ、朝までベランダに干してやろうかなぁ。

殺意を込めた目でギルベルトを睨むと、短く悲鳴をあげて部屋の隅っこで震えていた。

うん、この間の躾がよく利いてるみたいで良かった。

さぁ、不憫な奴はほっといてさっさと寝よ〜う。





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