「アルフレッド君、もう一作の映画すっごく良かったよ!!ヒューマンストーリーって言うのかなぁ…主人公の気持ちの描写とかが上手く撮れてて凄かった!」

「本当かい!?俺としては昨日見てもらった方が好きなんだけど、まぁ名前が褒めてくれるなら次もあんな感じで頑張るよ!!」


アルフレッド君の監督二作目の上映を終了し、学園内のテラスで皆で休憩を取っていた。
うん、二作目は昨日のと違ってかなり良い作品だったなぁ…。

それにしてもエリザとローデリヒさん遅いなぁ…。
映画の上映に間に合うように来るって言ってたけど来られなかったみたいだし…。
お仕事忙しいのかなぁ…。


「あのー、すみません!もしよければこのイベントに参加していただけませんか?」

「え…私?」

「はい!こういうイベントやってるんですけど是非参加していただければと思いまして。もうすぐ始まるんですけど今ならまだ間に合いますよ」


何かの役員のような男の子に渡されたビラを受け取とると、両サイドに皆が集まってきて私の手元を覗いた。


「美人コンテスト…?」

「ほほう…美女コンですか…」

「はい!18歳以上25歳以下の方なら誰でも参加していただけますので!」

「ワオ!!ギリギリだな名前!良かったじゃないか!!」

「さり気なく傷つくような事言わないでね、アルフレッド君。っていうかこういうの絶対私には無理だよね、うん。申し訳ないけど他あたってくれる?」

「その洗練された普通さが逆にウケるかと思ったのですが…残念です」

「え、なにこの役員。すっごい失礼なんですけど」


無駄にキャラの濃い脇役だな…。


「せっかくお誘いいただいたのですから参加すれば良かったのに…」

「大勢の前で恥を晒せと?死んでも嫌ですよ」

「うーん、名前ちゃんは美人と言うより可愛い少女って感じだもんなぁ」

「20代半ばの女捕まえて少女よばわりするフランシスさんもどうかしてると思いますよ」

「つーかお前がコンテストに誘われたって事自体が奇跡だろ」

「ちくしょう…否定できないから悔しい」


からかうようにニヨニヨと笑うギルの頬を抓ってやりたかったが今回は反論もできない。


「おや…」

「なんだか騒がしいな…」

「あぁ、さっきのコンテストが始まったんじゃないのかな」


学園祭のイベント用に用意されたステージの周りに沢山のお客さん達が集まっていた。
さっきのコンテストが始まったのかぁ…。
いったいどんな美人が集まってるんだろう。
私が口を開く前にステージ向かって全速力で走っていくフランシスさんとギルベルトと本田さんにささやかな殺意が芽生えつつ残りのメンバーと一緒にステージに向かう。


『エントリーナンバー5番、エリザベータさんです!!!』

「「「おおおおお!!!」」」


「……」


…何がどうなっているんだ。
どうして、エリザがステージの上に…?
その場に居た顔見知りメンバーご一行はステージの上のエリザの姿に開いた口が塞がらなかった。


『いやぁーとっても美人ですね!それでは自己紹介をお願いします』

『はい。エリザベータ24歳です。アンダンテというカフェで働いています。皆さん是非いらしてくださいね。宝物は私の親友と本棚に並んでいる本達です』


エリザァアアアアッ!?
えええ、ちょっ、なんでエリザがコンテストにぃいい!?


「うおお〜!!エリザちゃんやったら優勝間違い無しやなぁ!他の子らも別嬪さんやけどあの中だったらダントツでエリザちゃんが美人やわ〜」

「胸の大きさで勝つんじゃないかい?HAHAHA!」

「ちょっ、空気読めよお前ら!!」

「お前ら何を騒いでいるんだ!!」

「お静かになさいお馬鹿さんが」

「ローデリヒさん!それにルート君も…!」


後を振り返ってみると眼鏡をかけて腕に腕章を着けたルートヴィッヒ君と、腕を組んでプスプスと怒っているローデリヒさんの姿があった。


「あー、えっと…エリザはどういう経緯で…?」

「あぁ…それがだな…」

「私が説明します。ルートヴィッヒはこのイベントの役員をさせられているらしく、なかなかイベントに参加してくれそうな女性が集まらなくて困っていたようですよ。そこでたまたま学園内で遭遇したエリザベータに頼み込んでステージに上がっていただいたわけです」

「そっかー。ルート君も大変だね」

「あぁ…お前も来ているかと思って探してみたんだがなかなか見つからなくてな。エリザベータならイベントも盛り上がるだろうと…」


少し恥ずかしそうにずれかけた眼鏡を中指で押さえるルート君。


「ルッツの頼みじゃあいつも断れなかったってわけか」

「そういう事だ。それじゃあ俺はイベントの進行が忙しいので失礼する」

「うん。頑張ってねルート君」

「あぁ」


ルート君も大変だなぁ。
急ぎ足でステージの裏へと歩いていくルート君の背中を見送って、皆でステージの上に居るエリザに向けてエールを送った。

まぁ結果は言うまでもなく、エリザの優勝で盛大な盛り上を見せてコンテストは幕を閉じた。


「はぁー…もう、恥ずかしかった!!」

「そう?エリザけっこうノリノリだったじゃん」

「ステージの上だと緊張しちゃって変なスイッチ入っちゃって…。名前も一緒に出てくれれば心強かったのになぁ」

「引き立て役にもならないよ」

「ふふふ、謙遜しちゃって」


優勝トロフィーを片手に持ったエリザと合流し、皆で一緒にフェリ君達の絵の展示を見に行く頃にはもう太陽が傾きかけている時間になっていた。


「ヴぇ〜!皆ーこっちこっちー!」

「おせーぞお前ら」

「ごめんなぁロヴィ。エリザちゃんすごかったんやで〜!クイーンやクイーン!」

「はぁ?なにわけわかんねー事言ってんだよお前」

「二人とも、展示室ってここ?」

「うん!ゆっくり見てってね〜!俺と兄ちゃんの合作もあるんだ!」

「中も凄いな…」

「うーん、トレビアン」


展示室の中へ入ると色とりどりの色彩で描かれた絵が沢山展示されていた。


「お、フェリちゃんの絵ってこれか!?」

「そうだよ〜!えへへ、自信作なんだーそれ!」

「すごっ…!」


絵はあんまり詳しくないんだけど…なんというか、見ているだけで吸い込まれそうな絵ですっごく素敵…。


「フェリ君こんな凄い絵描けるんだね!」

「えへへ」

「おい名前、俺のも見ろよ」

「どれどれ?うわぁ…こっちも凄い!」


ロヴィーノ君のは抽象画って言うのかな…見てると不思議な気持ちになる絵だ。
この二人にこんな才能があっただなんて…。
感動してじっと絵を見つめていると隣でトニーさんが「ほんま上手やなぁロヴィ!!親分も鼻高いわー!」とロヴィーノ君の頭を撫でていた。


「本当に凄いな…うちのオフィスにも一枚欲しいぐらいだ」

「えー、これぐらい俺だって描けるんだぞ!」

「アメリカンでコミカルなタッチでしか描けないお前が何言ってんだよ馬鹿」

「本当に素晴らしい…。どちらかに私の漫画の表紙の背景などを描いていただきたいものです」

「本当に素敵ですねローデリヒさん…!」

「フェリシアーノとロヴィーノにこんな才能があっただなんて…驚きです」


ぐいぐいとフェリ君とロヴィーノ君に手を引かれ、展示室の奥にまで足を運んだ。


「じゃじゃーん!これが俺と兄ちゃんの合作!!」

「これって…」

「お前の為に描いた絵だ」

「風景画なんだけどこの暖かい色とキラキラした風景が名前みたいでしょ?」


ね?と首を傾げるフェリ君とほんのり頬を赤く染めて私の表情を伺っているロヴィーノ君。
え…私の為にって…う、嬉しすぎて言葉が出てこないのですが…


「ふ、二人とも…」

「なに、なに〜?」

「だ、大好きだぁあああああ!!!」

「ヴェー!?」

「な、何抱きついてんだよこのやろぉおおお!!」

「ああもう、すっごく嬉しいよ!!こんなに素敵な絵描いてもらえるなんて…私今世界一の幸せ者だー…」

「えへへ…良かったね、兄ちゃん」

「…あぁ」


両手で覆うように二人の体をギュッと抱きしめると、二人からも抱きしめ返された。


「あー!!何やってるんだい!!ずるいぞ君達だけ!!」

「悔しかったらこんな絵書いてみろよこのやろー」

「ロヴィ…お前絵使うなんて犯則やん…こればっかりは親分勝てんで〜」

「これはまた素晴らしい…。この一枚の絵の中に名前さんの素晴らしさが滲み出ているようですね」

「えぇ!流石フェリちゃんとロヴィ君ね」

「こんな絵描けるとか本当に凄いよな…。お、俺だって少しは絵心ぐらい…」

「…」


皆でわいわいと絵の前に集まり、私もしばらくの間この絵の前でじっと絵を見つめていた。

展示室を出ると辺りは随分と暗くなり始めていて、野外のお店なんかも片付けを始めているようだった。


「それじゃあそろそろ俺もサークルの方に戻るよ!打ち上げで後夜祭なんだぞ!」

「うん。楽しんできてね」

「あぁ!それで名前にお願いがあるんだ〜!打ち上げが終わるのきっと遅い時間になっちゃうから今晩君の家に泊めてくれないかい?」

「はぁああ!?バイクあんだからちゃんと家帰れよ馬鹿!」


私の言葉を制するように割って出てきたアーサーにアルフレッド君は心底嫌そうな顔をした。


「えー、だって家まで帰るの遠いから面倒臭いんだぞ。名前のとこならここから近いしな!」

「それじゃあわざわざこいつのとこじゃなくて俺の部屋でもいいじゃねーか!」

「それは絶対に嫌だ」

「…」

「お前どんな育て方したねん、こいつ」

「昔は純粋で良い子だったんだけどなぁアルフレッドも…子供の成長は恐ろしいねぇ」

「別にいいけど…あんまり遅いと私も寝てるかもしれないよ?」

「大丈夫さ!合鍵持ってるから!!」

「何で持ってんの!?」

「HAHAHA!!ヒーローに不可能はないんだぞ!!それじゃあまたねー皆!!seeyou!」

「逃げたな…」


いつの間に合鍵なんて作ったんだ…。
というかどうやって私の家の鍵を手に入れた…?

颯爽と去っていくアルフレッド君を見送っり、私達も暗くなってきたので解散する事になった。

帰り際に「展示はもう終わったから持って帰って!」とフェリ君から絵を貰ってしまった。
今度二人に何かお礼しなきゃなぁ…。

上機嫌で家に帰り、「この絵どこに飾ろうか?」とギルに尋ねると「別に…どこでも…」と不機嫌そうな返事が返ってきた。
また拗ねてるよこの子は。

学園祭、すっごく楽しかったなぁ。
アルフレッド君達の作った映画も凄かったし、フェリ君とロヴィーノ君の絵もとっても素敵だった。
頑張ってるルート君の姿も見れたし今日は本当に大満足だ。

ちょっとはしゃぎすぎちゃったから疲れたなぁ。
明日に響かないように今日は早く寝る事にするか!



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