「だから何故卵を割るだけであんな音が出るんだ!?」

「知りませんよそんな事。私は悪くありません、卵が悪いのです」

「卵のせいにするんじゃない!」


スーパーの野菜売り場の前で喧嘩をしている見覚えのありすぎる外国人男性二名。
いや、他のお客さん引いてるからね。
時々喧嘩の中に日本語じゃない言葉が交ざってるけど、あれドイツ語かな。

しばらく遠巻きにその様子をみつめていたものの、このままではお店の人にも迷惑が掛かりかねないので渋々二人の元へ歩み寄る。


「あのー…二人ともなんでこんなとこで喧嘩してるの…?」

「名前…」

「あら、こんな所で会うなんて奇遇ですね」

「っていうか二人ともスーパーの中で喧嘩しないでくださいよ。他のお客さんに迷惑です」

「あー…その、すまない…」


申し訳なさそうに謝ったルート君の肩をぽんぽんと叩いて慰める。


「今日は一人か?」

「うん。仕事終わって一旦家に帰ったんだけど食材きらしてるの忘れててさぁ。ギルはその辺のお菓子売り場で座り込んでると思う」

「兄さん…」

「二人ともお買い物?」

「あぁ。こいつに一人で行かせては朝になっても帰ってこないだろうからな」

「あぁ…ローデリヒさん方向音痴…」

「そ、そんなんじゃありませんよお馬鹿さんが!たまには二人で来るのも良いでしょう。同居人としてのスキンシップです」

「あはは。だけど二人を見てるとなんだか夫婦に見えてくるよ」

「料理の時に爆発音を鳴らす嫁なんて絶対に御免だ」

「私だってこんなゴツゴツの相手は嫌ですよ」


…この二人…上手く行ってるのかな…。


「なんやなんや、騒がしいと思ったらお前らやったんか〜」

「アントーニョ」

「トニーさん」

「こんばんはー名前ちゃん!昨日ぶりやなぁ」

「こら!私達にも挨拶をなさい!」

「まぁまぁ細かい事は気にせんとこうやー。三人ともうちで買い物?」

「あぁ」

「ほな今日のお勧めは感謝デーで安売りしてるお肉やで!!国産の黒毛和牛がなんとこのお値段!!めっちゃ安いやろ〜!!まぁ俺は絶対買わんけど」

「トニーさんんんん!!店員がそれ言っちゃダメ!!」

「せやかて肉なんて食べられるだけでありがたいんやからわざわざこんな高いの買わんでもなぁ。俺鶏肉一番好きやで〜」

「まったくあなたと言う人は相変わらずですね…。こんど何かご馳走してあげますからうちにいらっしゃい」

「ほんまに!?ローデリヒの料理久しぶりやわ〜」

「その被害に合うのは俺なんだがな…」

「ルート君…」


背伸びをしてルート君の頭をポンポンと撫でて「頑張れ…」と呟くと「あぁ…」と力なく頷いた。
ルート君大丈夫だろうか。
ローデさんもマイペースなゴーマイウェイな人だからなぁ…
今度肩でも揉んであげよう。





「アーサー随分顔色良くなったね。食欲も戻ってきたみたいだし」

「あぁ。もう充分風邪も治ったし明日から仕事に戻れるな」

「明後日からはアルフレッド君の大学の学園祭だもんねー。体力つけて挑まなきゃ!


「お前が体力つけてどーすんだよ。見に行くだけだろーが」

「それもそうだ」


いつものように三人でテーブルを囲み夕食をとる。
ギルもアーサーもすっかり風邪も治ったみたいで本当に良かったよなぁ…。
やっぱり皆元気な方がいいもんね。

アーサーが看病したお礼にと刺繍入りのハンカチをくれた。
これはまたアーサープロの素晴らしい刺繍のハンカチで…。
きっと休んでる間にやってたんだろうなぁ。
ありがたく貰っておきます…!


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