今日、会社帰りに変な生き物を拾った

毛の色は白、と言うより綺麗なプラチナシルバーのような色。
目は赤色でちょっと紫に近いような色。

ここまで言えば「え、なにウサギ?」なんて思ってしまうのが当然だろう。

まさか自分でも成人男性を拾う事になるなんて思いもしなかった



「何見てんだよお前…」

いかにもガラの悪そうな男が私を睨み上げた
ここがゴミ置き場な為か、それともこの男から流れる血の臭いか
異様な匂いが鼻につく


「…うちに来る?すぐそこなんだけど」

「はぁ?」


自分でも、自分の言った事を理解できなかった
ただ、あいつを見つめて口から出た言葉がこれだったんだ


「腕、怪我してるじゃん。手当てしないと傷が広がっちゃうよ」

「俺に関わるな」

「いいから来て。怪我人に拒否権はない」

「なっ!?ちょっ、引っ張るな!!」


男の首根っこをひっぱり無理矢理歩かせる(我ながら酷い扱いだと思うけど)


―――


「はい、腕伸ばしてー。消毒するから痛いと思うけど我慢してね」

「っ…!!いってぇ…」

「我慢してて。すぐ終わるから」


消毒液を塗って清潔なタオルでにじみでている血を抑えた

これはどう見たって刃物で切りつけた傷だよなぁ…
自分でやったとも到底思えないし


「はい、出来上がりっと」

「…」

「あんまり動かさないでね。傷が塞がらないとまた血がいっぱい出ちゃうし」

「…お前、何なんだよ」

「は?」

「見ず知らずの男を。しかも傷だらけでこんなに怪しい奴部屋に上げて身の危険を感じなかったのか」

「あぁ。私にもよく分かんないけどさ、なんとなく平気な気がして」

「はぁ…?」

「別に君は私に危害を加えようなんて思ってないでしょ。それにもし何かあったら大声でも出せばお隣さんも来てくれるだろうしね」


お隣さんは性格はアレだけどなかなか頼もしい奴だ


「…変な女」

「よく言われるよ。まぁその辺でゆっくりしてて。今ご飯作るから」

「おまっ…!!治療するつもりで来させたんだろーが!!何飯まで食わせようとしてんだよ!?」

「あらそう。別にいらないならそれでいいけど?」


ぐ〜〜


「あらあらタイミング良く腹の虫が鳴っちゃってるよ」

「…」

「パスタとか食べれる?」

「不味くなけりゃな」

「うわー。なんか凄いむかつく野郎だなー」


手際よくパスタを茹でて適当にソースを作る
その最中背中にもの凄い視線を感じたけど・・・
何か変なものでも入れないか監視してるのかな?
警戒心の強い男だ


「はい、できたよ」

「…」

「心配しなくても何も怪しいもの入ってないから」


フォークを手にとって安全だと教えるように自分からパスタを食べた
するとパスタに対する警戒心を解いたのか、勢いよくパスタを食べ始める

相当お腹すいてたんだな〜


「君、名前は?」

「…」

「あー。私は苗字名前」

「…ギルベルト」


見た目からして日本人でないことは明らかだったけど…。
ギルベルト。どこの国の人だろう


「国は?」

「なんでそんな事まで言わなきゃなんねーんだよ」

「ただの興味本意だよ。外国の人と接することは多いけどそんな髪と目の色の人見たのは初めてだから」

「…」

「あ、パスタおかわりいる?」

「…あぁ」


言えない理由でもあるんだろうか
まぁ他人を詮索するのは良く無いしこれ以上は聞かないでおこう


「お前…一人暮らしか?」

「うん。君は?帰る家とか…」


おっと、危ない危ない。
詮索は無用だったね


「…ねーよ」

「え」

「帰る場所なんて無いんだよ、俺には」


帰る場所が、無い


「そう。だったらここに居れば?」

「…今何て言った?」

「ここに居ればって言ったんだよ。帰る場所がないならそうすればいい」

「はぁ!?何考えてんだよお前!?」

「男一人養えるぐらいの給料はあんだよ。帰る場所がないんでしょ」

「…」

「ま。君の好きなようにしていいよ」


男はじっと私を見つめて黙り込んだ

そして、そっぽを向いて小さく呟くように言った


「仕方ないからここに居てやるよ…」


なんとまぁ、憎々しい口を叩く偉そうな男だ



かくして始まりを告げた新しい生活。


うん。とりあえず、成るように成るだろう


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