「ただいまーギルー」

「さみぃ…」

「うわっ、そんな薄着して来たの?そりゃ寒いよバカー」

「うっせーよ」


駅の前でポケットに手を入れてそわそわと体を揺らしていたギルの姿はなんとなくぎこちなくて、遠くから見れもあれはギルだなぁって分かってしまって顔が自然とほころびた。


「寒い?大丈夫?」


薄地の七部丈の服を着たギルの腕をさすってやると、ぷいと顔を背けて「さみぃ」と呟いた。


「それじゃあ早く帰ろうか。あー、でもその前に買い物していい?帰ったらアップルパイ作るから材料買わなきゃ」

「マジで作るのかよ」

「うん。私も食べたいしねーアップルパイ」


ふたりでのんびり歩きながらいつものスーパーに向かう。
こうやってギルが迎に来てくれたから夜道も怖くないなぁ…。


「あ、名前ちゃん!!あれ、今日はギルも一緒なん?」

「うん。今日からギルが駅まで迎に来てくれることになったんだー」

「余計な事言うなよ!」

「そっかー。最近暗くなるん早くなってきたもんなぁ…。俺もバイトさえなければ名前ちゃんを毎日マンションまで送り届けられるのに…くそぉっ…」

「トニーさん!!その気持ちだけで嬉しいよトニーさん…!!」

「名前、ちゃん…」

「なんだよこの雰囲気!?」


トニーさんの優しさに涙腺が緩みながらも買い物を済ませて家まで帰ってきた。
トニーさんにもアップルパイ食べてもらう約束したし、沢山作らないとね!
夕食の準備を手早く済ませて早速アップルパイ作りに励んだ。
アルフレッド君にアップルパイを渡すべく、明日アンダンテにきてもらうように電話を入れると「絶対行くよ!!アップルパイー!!」と受話器越しでアルフレッド君が大はしゃぎしている姿が目に浮かんだ。


「そんなわけだから明日は今日より遅くなるからね」

「んー。帰るときは電話しろよ」

「…ねえギル。やっぱりお迎えはいいよ。毎日時間合わせて来てもらうのもなんだかさぁ…」

「なっ、お前何かあってからじゃ遅いんだからな!?いや、まぁこんなペチャパイ襲うやつなんてそういねーだろうけど…世の中にはそういう趣味のやつも居るんだぜ!?」

「どういう意味だテメェ」

「そういうことだ。いいから明日も電話しろバカ」

「馬鹿って言った方がバカなんだバカ」

「じゃあお前もバカだバカ」

「お前もな」


結局明日も迎に来てくれるのか…。
まあいいか…。

アーサーを交えた三人で夕食を食べ、食後に焼きたてのアップルパイを食べるとパイの中のリンゴがとろとろシャキシャキでとっても美味しかった。
我ながらなかなかいい出来だなぁ…。
アーサーも美味しいって二つも食べてくれたし頑張って作った甲斐があったよねー。
ギルも珍しく憎まれ口もなく素直に美味しいって言ってくれたし今回のアップルパイはなかなか成功だったのかもしれない。
明日アンダンテで皆にも食べてもらおう!
皆も気に入ってくれるといいけどなぁ…。





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