「悔しい…」

「うるせ」

「悔しいとした事が足の速さで負けるなんてありえねぇ…。名前の弟に負げるなんて…うぅっ…」

「…」

「あの弟…もう一度勝負してぇ…」

「さっきから弟弟って…おめ本気であいつが名前の弟だって思ってんのげ?」

「は?あいつは名前の弟だっぺ。名前が言ってたし」

「……馬鹿あんこ」

「デンさんノルさーん。これこの間の体育祭な写真…って、何机に突っ伏してんすかデンさん」

「あー…?…はぁー…」

「なんすか、これ」


だらりとうなだれているデンさんを指さして首を傾げるとノルさんは「しんね」と顔を背けた。


「写真どうぞ。あ、あとDVDとかあるみたいですよー。アルフレッド君が昨日見せてくれたんできっとアイス君も今日あたり学校で配られてるんじゃないかと…」

「マジけ。んじゃ帰って見てみっかな〜!」

「あ、元気になった。ったくなんなんですか貴方は…浮き沈み激しいですね…」



―――



「香くーん!こんにちはー。今大丈夫かな?」

「名前。お客もいないし大丈夫的な」

「良かったー」


出来上がった写真を耀さんの所にも届けるべく亜細亜飯店にやってきた。


「耀さんは居ないの?」

「買い出し。何か用なら伝える」

「用っていうか…これ、この間の体育祭の写真!!けっこう美味く撮れてたから皆にももらってもらおうと思ってねー。はいどうぞ」

「ん」


写真を受け取った香君はちょいちょいと手招きをして私を厨房の中に入れた。
だ、大丈夫なのかなぁ…入っちゃっても。


「これ。新作」

「おおっ…!!また香君の新作デザート!?」

「対秋用の一つだから。餅の生地の中にサツマイモ餡を入れてみた」

「おおおお!!美味しそう!!」

「こっちは栗餡」

「香くぅううん!!やっぱり君分かってるよ!!乙女のツボついてるよーっ!!」


一口サイズにされたそれは口の中でもっちりと広がって何とも言えない甘さがと食感が…
やっぱり香君は天才だよ…。


「香君、君の事マスター香君って呼んでもいいかな…」

「いや、意味分かんないって」


香君に新作のデザートをお土産にもらって持って帰ると、ギルが「うんめぇええ!!」と一つ残らず食べてしまった。
絞め技を使ってお仕置きをする事には成功したけど…せっかく香君にもらったものが一瞬でなくなってしまった…。
また今度作ってもらおうかなぁ。
もうギルには一つたりとも与えない事を決心した。
お前は芋とビールでも食ってろ馬鹿野郎。






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