「おい名前、本当にここがルートヴィッヒの住んでるマンションかよ?」

「そう、だと思うけど…。なんだかすっごく家賃の高そうな場所に住んでるよねぇ…。学生の分際で生意気な!」

「まぁ中に入ってみようぜ」


オートロック付きマンション…!
うちのマンションは築年数が古いからついてないんだよね、これ。
いかにも高そうなマンションの入り口でインターフォンを押し、扉を開けてもらって中に入った。


「よく来たな、二人とも」

「お前なにちゃっかりいいマンションに住んでんだよ!?」

「ま、まぁ色々とな…。中でローデリヒとエリザベータ達が待ってるからゆっくりくつろいでってくれ」

「うん!お邪魔しまーす」


中も広々としたリビングが広がって、デザインもシンプルに統一された家具で統一されていた。
良いセンスしてるなぁ、ルート君。


「ワン!ワン!!」

「え、うわっ、ちょっと!!うひゃぁあああ!!」

「ワン!!」

「こ、こらお前ら!!名前は玩具じゃないぞ!?」


駆け寄っくるなり私の体に飛びついてきた三匹の犬。
大きな体の毛並みのいい犬と顔つきのととのった大きい犬に小柄で可愛い子。
三匹がいきなり飛びついてきたものだから体のバランスを崩しあっけなく後ろへ倒れてしまった。
ペロペロと顔を舐められたり色んな場所の匂いを嗅がれたり…
ルート君が体を起こしてくれてなんとか助かったけど、本気でびっくりした…。


「す、すまない名前。普段は行儀のいい奴らなんだが…」

「アハハー…人懐っこいんだね」

「おぉー!!アスターブラッキーベルリッツ!!お前らなにそんなにでかくなってんだよオイ!!」

「ワンワン!!」

「アハハハ!!なんだやっぱ俺様の事覚えてんのか!?よーしよし、わしゃしゃしゃー!!」

「出たよギルゴロウ」

「ギルゴロウ…?」

「うん。最近こいつすぐに動物たぶらかしてんの。本田さん家のワンコとお喋りできるんだよ」

「兄さん…友人が少ないからといって動物に手を出すだなんて…」

「ちょっ、なんか変な勘違いしてねぇ?」


ワンコ三匹を同時に抱きしめてその毛並みにモフモフしているギルを放置してリビングの奥に入ると、ローデリヒさんとエリザに加えてフェリシアーノ君とロヴィーノ君の姿があった。


「あ、名前だぁー!ヴぇ〜名前−!」

「ま、待てよフェリシアーノ!!抜け駆けしてんじゃねーぞちくしょう!!」


ここでもまた二匹のワンコみたいな子達が駆け寄ってきたかと思うと飛びついてぎゅっと抱擁を求められた。
うーん、どちらも可愛いから許しちゃうよなぁ…


「コラ名前!!二人を甘やかせるんじゃありません!!」

「いいじゃないですかローデリヒさん。微笑ましくて良いと思います」

「ちょっ、二人とも重いからどいてー!!」

「ヴぇー。やだやだ〜。兄ちゃんが離れればいいんだよ〜」

「んだとこのハゲ!!お前なんてこうしてやる…!!」

「いだっ!!んっ、そこ引っ張っちゃやだ兄ちゃんんんん!!」

「喧嘩をするな二人とも!!」

「だってルート、兄ちゃんが…」

「ここここいつが悪いんだからなちくしょう!!」

「ルート君も苦労するねぇ…」

「分かるか…」

「うん、よく分かるよ」


ルート君には極力優しくしてあげよう。


「び、ビール沢山持ってきたから皆で飲もうよ!!ローデリヒさんのお引越しを祝して!」

「あ、俺今パスタ茹でてたんだよ〜。そろそろ出来上がったかな」

「フェリちゃんってお料理得意なのね!」

「きっとエリザさんも気に入ってくれると思うんだ〜。沢山食べてね!!」

「ふふふ、フェリちゃん可愛い」


もってきたビールとフェリシアーノ君の作ってくれたパスタや色んな料理をテーブルに並べた。


「それでは早速乾杯いたしましょうか」

「はい!おーいギル、こっちおいでー。ビール飲み損ねるよー」

「マジかよ!?ちょっ、お前らまた後で構ってやるから離れろ!!」

「いや、兄さんは来なくていいぞ。そこで三匹の相手をしていてくれ」

「ルートォオオオ!?」

「それじゃあ乾杯しましょう!!」

「えぇ!!ローデリヒさんの引越しを祝って!」

「Prost!」

「おいコラァアア!!勝手に乾杯してんじゃねーよ!?」


ビールを3口ほど飲んでほっと一息つけば「俺にもよこせ!」とギルがせがんできた。
フェリ君やロヴィ君に勧められるがままに高そうなワインを何杯か飲んでいると、久しぶりにこう…頭がぐらぐらする感覚に襲われた。


「おい名前、大丈夫か?目がうつろじゃねーか」

「だ、だいじょぶ、です」

「大丈夫じゃなさそうだぞこのやろー。ちょっと休むか?」


ロヴィーノ君が私の身長に合わせて顔を近づけるのをぼんやり眺めながら首を縦に振ると、そっと手を引かれ体を支えられた。


「おいじゃが芋野郎。こいつ辛そうだからソファーで横にさせるけどいいだろ」

「名前、どうかしたのか?」

「いや、なんでもないよー。大丈夫大丈夫」

「少し顔が赤いな…酔ったのか?」

「うーん…私あんまりお酒強くないんだよねぇ…」

「なんなら俺の部屋でベッドに寝てもいいぜ?」

「お前は何自分の部屋へ連れ込もうとしているんだ。そんな事は認めん」

「ちくしょう余計な事すんなじゃが芋!!」


あー、ダメだ。頭ぐらぐらしてきた。
眠い…。


「ぎ、ギルー…」

「兄さん…?兄さんを呼べばいいのか?」

「うん。お願いします」

「おい兄さん、ちょっとこっちに来てくれ」

「あ?なんだよルッツ」

「名前が呼んでいるぞ」

「あぁ?」


フェリ君とエリザと一緒にお喋りをして、さぞかしギルにとっては天国のような時間を邪魔してしまった。
うう、ごめんよ…ギル。


「ったく、なんだよ…って、また酔ってんのかお前!!」

「ちょっ、肩貸して!!だるい!!眠い!!」

「ったおくおめーは酔ったらすぐ寝るんだからなぁ…。ほらよ」


私の横に座って肩をポンポンと叩いたギル。
それを合図にギルの肩に頭を乗せればその心地よさとギルの匂いにホッとして一気に眠気が押し寄せてきた。


「な、なんというか…」

「慣れてんな、お前…」

「こいつ強い酒飲んで酔うとすぐ眠くなんだよ。オマケに記憶飛んでる時とかあるから性質悪いぜ」

「チッ…つまんねーぜちくしょう…」


ゆらゆらと視界が揺れて視界が揺れたので瞼を閉じると意識が遠のいて行った。
よそ様の家で寝ちゃうだなんて、私ってば何やってんだろう。
まぁルート君の家だしいいよね。
昨日の疲れも残ってか、重い体がお酒の力でふわふわぐらぐらと揺れる感覚に襲われてそのまま意識を手放した。


「寝た、か」

「あぁ」

「なんというか…てっきり兄さんは名前の尻に敷かれていると思っていたんだが…。ちゃんと信頼されているんだな」

「は?どこがだよ」

「体を預ける相手をちゃんと選ぶあたり、名前もこの中で一番兄さんの事を信頼していう事だろう」

「べっつに…。ただ俺の肩が一番眠りやすいだけって理由だろ」

「ったく…少しは素直になったらどうなんだ」

「お前には言われたくねえ!!まぁ、頼られて悪い気はしねーけどな」

「あぁ…そうだな」






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