「うっしゃー!!そろそろ俺の出番だっぺ!!」

「あいやー!我も一肌脱ぐあるよ!!」

「兄貴、頑張ってください!!」

「あんこ、負けたら承知しねぇぞ」

「よーし、俺も参加するんだぞ!!リレーなら誰にも負けないからな!!ギルベルト、君も一緒にどうだい?」

「んー?酔いも覚めてきたしいっちょ走ってやっかな」


どうやら皆参加するみたいだなぁ。
だけど酒入ってんのに大丈夫か、こいつら…。
またもや酔っ払って服を脱ぎ始めるアーサーの頬を往復ビンタしつつ皆にエールを送った。
ギルのやつ大丈夫かなぁ…。転んで怪我でもしなきゃいいけど。
むにゃむにゃと寝息を立てて膝に頭を乗せて来るアーサーの眉毛をぐりぐりと押しつつグラウンドの皆の様子を伺っていると、どうやら4人揃ってアンカーとして走ることになったらしい。
という事は皆でガチンコバトルか。
どこで根回ししたんだ、お前ら。
大方アルフレッド君だろうなぁ…あの子この学校では顔が知れ渡ってる有名人らしいし。


「楽しみだね、あの4人だと誰が一番早いのかな?」

「そうだなぁ…アルフレッド君…いや、デンさん?体力だけはありそうだもんねあの二人」

「耀君もすごいよ?昔追いかけっこした事あるけどなかなか捕まえられなかったもん、僕」


追いかけっこって、何時そんなのやったんだろう。
ふと香君と湾ちゃんに視線を向けると表情が暗く顔を青くしていた。
イヴァン、亜細亜飯店の子達に何をした…?

そんなこんなでグラウンドにピストルの音が鳴り響き、リレーが始まった。
アンカーまでは4人かぁ…。
次々と父兄や一般の人が走っていくなか、アンカーの四人がラインに立った。
その瞬間実況中継をしていた女子生徒の声が黄色い悲鳴へと変わったのは恐らく某ヒーロー気取りの彼が原因だろう。

グラウンド中、学校中の視線が4人に注がれた。


「あ、耀君が一番にバトン受け取ったね。一番遅いのはギルベルト君のところかな…?」

「うっわー耀さんはやーい!!あの人いったい何歳!?」

「名前の上司の人も早いねー。追いついちゃいそうだよ」

「続いてアルフレッド君は…って、なんだあれぇええ!?早い!!早すぎだろう!?」


現在耀さんとデンさんが並んでそれを後ろからアルフレッド君が脅威の速さで追いつこうとしている。
ギルは…まだバトン貰ってないの!?不憫!!なんかリレーから取り残されちゃってるよあの子ぉお!!


「あ、並んだー」

「うっわぁあー!!」


アンカー三人が並び、グラウンド内の盛り上がりは最高峰。
だけどアンカーはトラック1周半って事になってるからまだ勝敗は分からな…って、あれ…?


「ぎぎぎ、ギルゥウウウ!?」

「うわぁあ!!ぎ、ギルベルトさん早いですね名前さん!!」

「時速何キロぐらい出てるんーあれ」

「うわぁあー!!あんなに早いってありえるんだ。漫画の中だけの世界だと思ってたわ」


え、ちょっ、何あの子…!!
あれうちの子!?うちのギルベルト君!?
三人との差がかなり広がってたのにどんどん縮まっていって、うわっ、ちょっと、嘘でしょ…!?


「俺様かっこよすぎるぜぇえええ!!」


再びグラウンド内にピストルの音が響き客席、生徒、職員側からまで大きな歓声が上がった。

前代未聞の生徒外種目で最高峰の盛り上がりを見せてくれて体育祭は過去最大級の盛り上がりだったと校長のお褒めの言葉をいただき無事閉幕となった。





「つ、疲れたぁー…」

「だらしねーなぁ」

「うるさいなぁ…ギルの知らないところで色々苦労したんだよ、私は」

「まぁそれぐらい俺様の活躍に比べたらへでもないぜ!!」


ケセセと高笑いしたギルはソファーに横になってうな垂れている私をバカにするように突いた。
ちくしょう、今日ばかりは何も言えない…。


「だけどギル、本当にすごかったね。君があんなに足速いとは思わなかったよお母さんは」

「だろ?あのアルフレッドの悔しそうな顔…楽しかったぜー!」

「今まで負けなしだったらしいからね、アルフレッド君。彼の残していった伝説塗り替えちゃったねーギル」

「少しの間あいつに睨まれそうだな、俺様」

「アハハ。かもねー」


だけど本当にビックリしたなぁ。
耀さんやデンさんやアルフレッド君も本当に凄かったけど、あれだけの大差をつけられて見事三人を追い越し堂々と一位でゴールテープを切ったギルが一番凄い。


「ほんと、凄いねーギルは」

「だろだろ。もっと俺様を称えろ!!」

「ゴールした時の台詞は余計だったけどねー。まぁバカっぽさが出てたから逆に良かったかも」

「んだとコラ。抓るぞ!」

「ごめんごめん。ギルすっごくかっこよかったよ。誰よりもかっこよかったよ、うん」

「う…」


褒めろだとか称えろだとか偉そうな事言うくせに面と向かって褒められると照れるんだよなぁ、こいつは。
それもまたギルの可愛いところなんだけどね。


「明日はローデさんの引越しパーティーだし今日は早く寝ようか」

「あ、あぁ…」

「それじゃあお休み、今日のMVPギルベルトくーん」

「お前なんかからかってねぇ…?」

「べつにー。ふふふ」


なんというか、嬉しいんだよね。
我が子の活躍が見られたというかなんというか。
あんなかっこいいギルの姿が見られただけで今日は大満足だ。
本田さんに借りたカメラ、沢山シャッターは押しておいたけどちゃんと撮れてるかなぁ…。
現像が楽しみだね。

それじゃあ今夜はギルの栄光を称えながら眠りにつくとしますか!





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