「やぁアルフレッド君。久しぶりだね。海以来かなぁ?」

「やぁイヴァン!こんな所で会うなんて奇遇じゃないか!」

「ふふふふ、うちの子がこの学校に通っててね。ちょっと応援しに来たんだ。ねートーリス、フェリクスー」

「お、お久しぶりですアルフレッドさん…」

「は、はじめましてやし…」

「アハハ。君は部下が沢山いるんだな!!友達は少ないみたいだけど」

「あははー。アルフレッド君ったら冗談きついよねー。僕今さっき水道管拾っちゃってさぁ。これで君の事殴ったらスッキリできそうなんだけど一発お見舞いしちゃってもいいかな?」

「HAHAHA!!君は愉快なやつだなイヴァン!!俺も君の事殴り飛ばしたらすっごくスッキリしそうだぞ!!」

「誰かぁあああ!!誰かこの二人を静めてくださぁあああい!!」

「な、何やってんの二人ともぉおおおお!?」

「「あ。名前」」


なにやら人だかりと不穏なオーラを感じてその中心部にある場所へ向かってみると、水道管勝手にコルコルと音をたてながら笑っているイヴァンと顔は笑ってるのに目が笑っていないアルフレッド君が睨み合っている姿があった。


「名前さぁああん!!」

「名前ーっ!!」


トーリス君とフェリクス君が涙目になって私に駆け寄ってきた。
うん、怖かったよね…。可哀想に。
私の後ろに隠れてビクブルと震えている二人と庇うようにしてイヴァンとアルフレッド君の間に立った。


「なんでこんなとこで喧嘩してるのかな」

「だ、だってイヴァンが…」

「僕?僕は何もしてないよー。アルフレッド君が居たから挨拶しただけだよ」

「ずるいぞイヴァン!!」

「はいはい、分かったから。喧嘩両成敗。ほら、二人とも謝って」

「なんで俺が!!絶対謝らないからな!!」

「え…僕もなの?名前」

「うん」

「だけど僕悪くないよね?」

「どういう理由があっても他人を怖がらせるような睨みあいをする人なんて私は嫌いです」

「き、嫌い…!?」

「嫌い…?名前は、僕のこと…嫌いなの?」

「う…」


二人がすごく悲しそうな目でみるもんだからつい許してしまいそうになった。
ダメだダメだ、これからの為にもこの二人には仲良くしてもらわないと…。


「嫌い、です。喧嘩する人は嫌い」

「そんな!!名前に嫌われるなんて嫌なんだぞ!!」

「ぼ、僕は名前に嫌われらどうすればいいの…?僕は君の事が大好きなのに、名前は僕の事嫌いになったらどうすればいいの…?」

「う、うん。だから仲直り。ね?ほら二人とも謝って。はい、ごめんなさーい」

「「………ごめんなさい」」


疲れる。すっごく疲れるよこの二人。
なんとかその場の不穏な空気も治まってギャラリーも帰っていった。
ああもう、アイス君の体育祭応援しに来ただけなのになんでこんな目に合うかなぁ。


「ねぇ名前、今日は大勢で来てるの?」

「うん。ギルとアーサーと上司の二人と…あと亜細亜飯店の皆と一緒になったんだよ!」

「わぁ、いいなぁ〜。僕もそっちに行っていい?」

「いいけどイヴァンは他に誰も一緒に来てないの?」

「うん。姉さんとナターリヤは家でお留守番なんだ」

「そっか。それじゃあ皆で一緒に行こうか。だけどアルフレッド君とイヴァン、また喧嘩したら今度は本当に怒るからね」

「分かったよ、もう…」


四人を引き連れて帰ると、顔を引きつらせた亜細亜メンバーとギル。
そんなに苦手かなぁ、イヴァンの事。
当の本人はデンさんと一緒に楽しそうにお酒を飲んでいる。
一応未成年もいるからほどほどにしてほしいんだけどなぁ…。


「あ、次アイス君の競技だ!」

「この”嫁さん運び”って競技何だろう…」

「あぁ、これは男子限定の競技なんだぞ!!それぞれお題の書かれた紙を拾って、その内容に沿った物を見つけて抱えてゴールしなきゃいけないんだ。まぁいわゆる借り物競争ってやつなんだけどさ、そのお題が人間限定で女の子を抱っこして走ったりする事が多いから”嫁さん運び”って呼ばれるようになったんだぞ!!」

「さっすがアルフレッド君!!卒業生は違うね〜」

「俺もこの競技で色んな子を運んだなぁ。ちなみに毎年一位だったぞ!!」

「あはは。かっこいいね。ヒーローみたい」

「あそこに名前が居たら君を抱っこしてゴールできたのになぁ…本当に残念だよ」

「うん、本当に居なくて良かったよ」


どうやらヨンス君も参加するみたいだね。
どんなお題を引くのかわくわくするなぁ…


「よっしゃーアイス!!突っ走って一位になれぇええ!!」

「負けるんじゃねーあるよヨンス!!負けたら今日の夕食はキムチ抜きのキムチ鍋ある!!」

「つーかそれただの鍋的な?」

「俺アイスにビール2本な」

「じゃあ僕はヨンス君にウォッカ3杯ー」

「お前らなぁ…しょうがない、俺はアイスにワイン1本賭けてやるよ」

「そこの汚い男性陣、頼むから純情な生徒の邪魔だけはしないでくださいね」


グラウンドにピストルの音が鳴ってそれぞれがお題を書かれた紙を拾った。
うんうん、ピーター君のときもこうやって借り物がかかれた紙を拾って真っ先に私の所に来たんだよねぇ…
いやぁ、あれは恥ずかしかった。


「ん?あの二人こっちに向かってきてないかい?」

「え?」


遠くから足並みを揃えるようにしてやってくるアイス君とヨンス君の姿が見えた。


「アイス!!お前真似するんじゃないんだぜ!!」

「わけわかんない。お前こそ真似すんな」

「こらこら、二人とも喧嘩しないで…。誰を借りに来たの?」

「名前」

「……はい?」

「あー!!さき越されたんだぜ…!!それじゃあ俺は兄貴で我慢するんだぜ!!」

「なに言ってるあるか!!ちょっ、ぎゃぁあああ!!」

「耀さーん!?」

「兄貴の尻の起源は俺ーっ!!!マンセェエエエ!!!」


おもむろに耀さんを肩にかついだヨンス君はゴールへと向かって走り出した。


「チッ、先こされた…。名前、ごめんね」

「えええ、嘘でしょ、マジですか!?ダメダメ重いから絶対無理だってアイス君!!潰れる、アイス君が潰れるぅううう!!」

「よっしゃーアイス!!男を見せてやれぇえええ!!」

「うるさい酔っ払い…」


この細い腕のどこにそんな力があるのか、私をひょいと持ち上げたアイス君はそのままヨンス君の後を追って一目散にグラウンドを駆け抜けた。
うわぁー…皆が遠くなっていくよ…
あれ、なんだろうこのデジャヴ…。
結局一位はヨンス君でアイス君は二位という結果に終わり、担がれた私と耀さんは走ってもいないのにゼェゼェと息を乱した。


「ごめんね、名前…」

「いや、うん、大丈夫、だから…」

「ごめん…」

「えーっと、アイス君のお題はなんだったの…?」

「内緒」

「えぇええー…そりゃないよ…」

「俺のお題は”頼りになる人”だったんだぜ!!」

「うっ…いきなり運ばれたのは気にくわねーあるがそのお題で我を選んだとは流石我の弟ある。褒めてやるあるよ」


二人と別れて耀さんと一緒に皆の元へ戻るとお酒が入ってテンションの高い奴らに冷やかしの言葉を受けたので無言の制圧をかけ黙らせた。
アルフレッド君が「ずるいぞずるいぞ!!」と数分間私の体を揺らし続けた為重なって疲れが溜ってしまった。

そんなこんなでお昼のお弁当の時間がやってきた。
アイス君は友達と一緒に教室で食べたりするのかな…?
一応アイス君の分は別の容器に分けて在るんだけどなぁ…


「兄貴ー!!弁当食わせてくださいなんだぜ!!」

「まぁ待てある。今開けてやるあるよ」

「名前、お腹すいた」

「あ、うん。アイス君頑張ったもんねー。はいこれアイス君の分。別の場所で友達と食べるかもしれないと思って別のお弁当箱に入れておいたんだけど」

「ううん。ここで名前と一緒に食べる」

「そっか」


皆の分を用意するより先にアイス君の分のお弁当を取り出しお箸とお茶を用意してあげる。
あの酔っ払い共はどうせお弁当なんて酒のつまみ程度にしかしないんだから後でも構わないだろう。


「なんだい名前、さっきからそいつの事ばっか構って…」

「アルフレッド君…。もうすぐ準備するから待っててよ。アルフレッド君も先輩ならちょっとぐらい我慢しなきゃダメでしょ?」

「あ、アルフレッドさん!!俺のキムチおすそ分けなんだぜ!!」

「誰だい、君」


アイス君の分の次にアルフレッド君にお皿とお箸を渡し、他の皆の分の容器も用意した。
っていうかこれぐらい自分でやってほしいよね…
上司二人がいるから強くは言えないんだけどさぁ


「うわぁ、美味しそうなお弁当ですね!!僕たちまでいただいちゃっていいんですか…?」

「うん!もちろんだよ。エドァルト君もライヴィス君も頑張ってたもんねー。フェリクス君も遠慮せず沢山食べてね」

「名前のお弁当可愛いしー!あ、こっちウサギさんりんご!!」

「えへへー。時間が無かったからあんまり凝ったものはできなかったけどね」

「あ、ありがとうございます…!!いつも家ではボルシチかピロシキか色々ぶち込んだロシア料理しか食べられないのでこんな美味しそうなお弁当が食べられるなんて僕、幸せです」

「うふふふー。そっか、ライヴィスはロシア料理が嫌だったんだねー」

「え、ちがっ、ひゃぁあああ!!」

「「ライヴィスゥウウウウウ!!!」」


この子達もまだ若いのに色々苦労してるなぁ…。


「おぉ、うめぇ。やっぱおめぇいい嫁さなんなぁ!!」

「これも酒のあてに丁度えがっぺ」

「おい名前、芋料理肉じゃがだけかよ!?」

「ヒック。俺の料理不味いっていうらよばかぁ〜!!」


もうこの連中どこかに行ってくれないかな。
若干酔っ払い始めているアーサーの頬を叩いて目覚めさせながらも自分の作った弁当に舌鼓を打った。
うん、なかなかの味だ。


「あいやぁー。名前の弁当も美味そうあるね」

「うわー…耀さんに褒められるの恥ずかしいですね…」

「それ一個くれあるよ。にーにが味見してやるある」

「にーにじゃないですけど一つでも二つでもどうぞ」


私のお皿に乗ったおかずを食べた耀さんは「なかなかうめーあるよ。にーに感激ある」と嬉しそうに笑ってくれた。
だからなんで私ににーにと呼ばせたがるの耀さんは…!!
まぁ褒めてもらえてすっごく嬉しいんだけどさぁ…。


「名前、ご馳走様」

「あ、うん。アイス君お腹一杯になれた?」

「うん。すっごく美味しかった。わざわざ作ってくれてありがとう。あとあそこの酔っ払い、ごめん」

「うっ…アイス君は本当にいい子だねぇ…。その純情なまま大人になってね…!!間違ってもあんなオッサンたちみたいにはなっちゃだめだよ!?」

「名前が居るなら大丈夫」

「アイスくぅうううん!!!」


歓喜余ってアイス君を抱きしめようとするとアルフレッド君に首根っこを掴まれて止められた。
危ない危ない、公然の面前で恥を晒すところだったよ…。
不機嫌そうなアルフレッド君に「ありがとう」と告げると「別に…」と返ってきた。
いつもは一番年下で甘やかせてもらってるけど今はアイス君が居るもんなぁ…。
気に食わないのは分かるよ、うん。

そんなこんなでお弁当の時間も過ぎ、午後の競技に差し掛かる時間となった。


「午後の競技は父兄や一般の参加競技が多いんだぞ!!」

「え、父兄以外にも出られるの?本当に地域との交流盛んなんだねー」

「あぁ。うちの学校って進学率も凄いけど就職の合格率も凄いんだ。ほら、こうやって地域との交流を大事にしてるだろ?有名な学校だし企業側もこの学校の生徒ならって一目置いてくれてる事も多いのさ」

「へぇ。凄い学校だなぁ…」





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