「あー体痛い…。私も歳だよなぁ…」 「普段から足腰を鍛えていないからですよ、お馬鹿さん」 「ふふふ。だけど運動会だなんて大変だったわね。ご苦労様」 「名前さん頑張ってらっしゃいましたからね」 「まぁほとんどトニーさんの活躍で勝てたようなものだったんだけどねー」 「へぇ〜。お兄さんも見に行きたかったなぁ〜トニーの活躍」 「そんな事あらへんて。せやけどほんま幸せだったなぁ…。本物の親子になれた気ぃしたわ〜」 「はっ。ぬかすな野蛮人。俺の弟をお前の妄想に組み込むんじゃねーよ」 「エリザ!!コーヒーのおかわりくれよ!!」 「あれ、今何か幻聴が…。大嫌いな不憫の声が聞こえた気がするけど気のせいだよね」 「…グスッ」 アンダンテに集まったお馴染みのメンバーによるお茶会。 昼下がりという事もあってかお客の入りもまちまちでローデさんとエリザも休憩をもらって皆と一緒に会話に花を咲かせていた。 「名前さん、先程から時間を気にしてらっしゃるようですけど何か御用でもあられるのですか?」 「あー、はい。そろそろ来る時間かなぁーって」 「誰が来んだよ」 「お楽しみだよ。そろそろ約束の時間のはずなんだけどなー…」 ―カランカラン 「いらっしゃいま…あら!!ルートヴィッヒじゃない!!」 「なっ…え、エリザベータ!?どうしてお前がこんな所に…!!」 「ルートもこっちに来てたんだ…!!私も色々あって日本で暮らしてるのよ!!久しぶりね」 「あぁ、久しぶりだな…」 「ヴぇ〜!!ルートォ〜このすっごく綺麗な女の人誰ー!?うっひょー!すっごい美人!!」 「どけよ馬鹿弟!!ブォンジョールノお嬢さん。今から俺と一緒にジェラートでも食べに行きませんか」 「ふふふ。可愛い子達ね。お友達?」 「あ、あぁ…すまない…」 お店の入り口付近で会話を済ませ遠慮がちにやってきた三人の姿にその場に居た皆が歓喜の声を上げた。 「フェリシアーノちゃぁああん!!今日も可愛すぎるぜぇえええ!!」 「ロヴィーノぉおおお!!なんやお前も名前ちゃんに呼ばれたんかいな〜!!親分の膝の上座る?なぁ座る〜?」 「もう俺はガキじゃねーぞちくしょう!!」 「ボンジュール!フェリにロヴィに…こっちのゴツいやつが噂のギルの弟か?うーん、すっごいムキムキだよなぁ…はぁはぁ」 「兄貴に似ないでわりと頭良さそうだよな」 「でしょ。ルート君こっち座って座って!!エリザー、三人にコーヒー頼めるかな?」 「えぇ!とびっきり美味しいのを淹れてくるわね!」 それぞれが席につき、皆楽しそうに笑っていた。 「えーっと、初めましての人も居ると思うから一応紹介しておくね。このムキムキでかっこいい男の子がギルの弟のルートヴィッヒ君!!頼りがいがあって優しくて思いやりのあるすっごくいい子なんだよ〜!!」 「私は以前一度お会いさせていただきましたね。直接お話はできませんでしたが…。本田菊です。名前さんのマンションの近所に住んでいて一応漫画家をやっています」 「うっひょー菊って漫画家だったんだ〜!!ヴぇ〜後で漫画描いて〜!!」 「落ち着けフェリシアーノ!!この間は挨拶もなしにいきなりすまなかったな…。しかしその若さで漫画家とは…」 「あ、ちなみにこう見えても本田さんはこの中でも最年長です」 「は…?」 「皆さんよりうんと爺さんですが仲良くしてくださいね」 「い、いったい幾つなんだ…?」 「禁則事項です」 「「「自重自重」」」 「おっと失礼!」 フランシスさんとトニーさんと私によるツッコミが鮮やかに入ったところで続いてローデリヒさんのご紹介だ。 相変わらずの貴族っぷりを見せてくれたローデリヒさんは「ヴぇー。オーストラリア出身なんですねー」と言ったフェリシアーノ君に「このお馬鹿さんが!!!」と目を見開いた。 「フランシスさんはフェリ君とロヴィ君と顔見知りなんですか?」 「あぁ、トニーのつてでね」 各自自己紹介も終わったところで、エリザが淹れてくれたコーヒーを飲んだルート君は「美味いな」と微笑んでくれたので私もなんだか安心した。 こうやって皆で集まるのもいいよねー 「おいこら名前!!じゃが芋野郎とばっかり仲良くしてんじゃねーぞこのやろー!」 「ちょっ、痛いよロヴィーノ君…」 「なっ、ロヴィお前何名前ちゃんの腕引っ張ってんねん!!お前はほんまにあかん奴やな〜!!女の子なら誰でもええんとちゃうんか!?」 「んなわけねーだろアホトーニョが!!バーカバーカ!!いつも子供扱いしやがって!!こいつは俺が目ぇつけてんだよお前は引っ込め!!」 「な、なんやてー!?そんなの親分は許しません!!名前ちゃんが嫌がっとるさかい手ぇ離せ!!」 「お前だって掴んでるじゃねーかこのやろー!!」 「いだっ、ちょっ、痛い痛い!!」 「何をやっているんですかお馬鹿…」 「まったく…世話の焼けるやつだな」 ルート君の助けによりなんとか二人から解放された。 やっぱり頼りがいがあるよなぁ、ルート君は。 「ふふふ。名前ってば人気者よね!」 「人気者というか厄介なのに好かれやすいと言いますか…」 「お兄さんも名前ちゃん大好きだよ〜。んーチュッ」 「フランシス死ね」 「肥溜めに埋もれろよワイン野郎」 「いっぺんここに穴あけて脳みそチューチューしたろかー」 「きもいぞオッサンこのやろー」 「ヴぇー…フランシス兄ちゃんキモいよー」 「なんなんだこの変態は…」 「あら、こんな所にフライパンが…ちょっとこれでフランシスさんを殴ってもいいかしら」 「おやりなさいエリザベータ」 「ちょっ、なんで俺だけこういう扱いなわけ!?皆もっとお兄さんを愛してよ!!俺はこんなにも皆を愛してるって言うのに酷いわっ!!」 「まぁまぁ皆…もう少しフランシスさんに優しくしてあげてもいいんじゃないかな…」 「優しくすると付け上がるんだよその髭は!!」 フランシスさんがお店の隅っこで膝を抱えて蹲った。 不憫、フランシスさん。今度何か奢ります。 「それにしてもルートは本当に逞しくなったわよねぇ…。昔はこんなにちっちゃくてギルベルトの後ろをヒヨコみたいにピョコピョコついてまわってたのよ?」 「なっ、いらん事を言うなエリザ!!」 「ヴぇー!ルートにもそんな頃があったんだー。ヒヨコルートかーわーいいー!」 「ガキの成長は早いぜ…」 「そうそう。ロヴィも小さい頃は生意気やけどめっちゃ可愛かったわー。おねしょしてもてトマトみたいに顔真っ赤にして”り、リスがやったんだぞちくしょう!”って誤魔化してなぁ」 「ばばばばばば、馬鹿野郎!!名前の前でかっこ悪いことバラしてんじゃねーぞちくしょぉおお!!」 「それだったらうちのアルフレッドとマシューだって…!!」 「皆小さい頃は可愛かったんだねー」 うんうん。今はまだ小さいあのピーター君もそのうち私の身長を追い越して大人になっていくのかなぁ… うーん、なんだか寂しいような…。 「あ、それはそうとローデリヒさん。いい引越し先は見つかりましたか?」 「なになに、ローデ引越しするんー?」 「えぇ。今住んでいる場所に少々問題がありましてね…。やはりいい物件はなかなか見つからないので頭を悩ませている所です」 「そうですか…。どこかにいい場所あると良いんですけどねぇ…」 「なら俺のアパート来るか〜?けっこう部屋空いてんで」 「あんなボロアパートにピアノを置いたら床が抜けますよお馬鹿さんが!!」 「ヴぇー。ならさ、俺達のマンションはどうかなー」 ぴょこっと手を上げたフェリシアーノ君は「ねールッツ!」とルート君に視線を送った。 「あぁ。俺達のマンションはなかなか広くてな…。2LDKで防音設備も整っているし広々と使えるはずだ」 「ちょうどルートの部屋一つあまってるしルームシェアなんてどうかな!!俺も兄ちゃんと一緒にシェアしてるんだよ〜」 「ルームシェア、ですか…」 「あ、それいいと思う!!勿論お互いの意見を尊重しないといけないと思いますけど…」 「初対面の相手だが…名前やエリザベータの知り合いという事なら俺も安心だ。こちらとしては構わない」 「そうですね…。貴方のご迷惑でなければ是非お言葉に甘えさせていただきたいです」 「そうか。なら住所を教えておくから近々見にくるといい。ここからそう離れていないし通勤にも困らないだろうしな」 「うっわー!!良かったですねローでさん!!」 「おいおいルッツ、こんな坊ちゃんと一緒に住む気かよ!?やめておいた方がいいぜー口煩いし我がままだし面倒くせーし」 「お黙りなさい!!!」 「あんたちょっとその口繕ってあげましょうか?確か店の奥に裁縫箱が…」 「ぎゃぁあああ!!お前が言うと冗談に聞えねーんだよ!!」 「あら。だって冗談じゃないもの」 「…グスッ」 そんなこんなで話は進み、なんとルート君とローデリヒさんがルームシェアをするという素敵な展開となってしまった。 この二人が一緒に暮らすのかぁー… お互い初対面だけど真面目なとことかなんとなく似てるしきっと仲良くしていけると思うんだよね。 隣でエリザが「な、なんて素敵な展開に!?あぁっ、ローデリヒさんがルームシェアなんて!!あんな事やこんな素敵な展開に…!?」と黄色い歓声をあげていた。 頼むからエリザの独り言という名の発病に乗っかるのはやめてください本田さん。 なんともカオスとなってしまった場の空気にため息が漏れつつも、皆で楽しい時間を過ごせて本当に良かった。 また時間があればこうやって皆でわいわい集まりたいなぁ… . ←|→ |