本日晴天なり! 重いお弁当をギルに持たせ、日焼け止めもばっちり塗って準備万端!! スーさんとティノ君と駅で待ち合わせをして早速ピーター君の通う小学校へとやってきた。 「アーサー!!場所取りご苦労様〜」 「あぁ。皆もわざわざ来てくれて悪いな…」 「悪いと思うなら俺様の肩を揉め。すっげぇ弁当重かったぜー…」 「ああん?テメェはあっちの砂場で埋もれてろ」 「なんか僕たちまできちゃってすみません…。だけど運動会なんて始めて見るからすっごく楽しみで昨日はあんまり寝られませんでしたよ〜!!」 「んだな」 「私もカメラの用意はバッチリですよ。アーサーさんのビデオカメラに加えて私の一眼レフ、これで装備は抜群です」 「本田さんは自重してくださいね。色々と」 朝早くアーサーが陣取ってくれ場所にそれぞれ腰を降ろして本田さんはカメラの用意を始める。 ピーター君はどこにいるんだろう…。 まだはじまるまで少し時間があるし応援の言葉を伝えておきたいなぁ 「名前〜!!来てくれたのですねー!!」 「ピーター君!!おはよう〜!!良かった、始まる前に会えて。今日は頑張ってね!!」 「当たり前なのですよ!!全部のリレーで一位になってやるのですよ!!」 「うん!頑張ってね!あ、そうそう。この二人が私の働いてる会社のお友達のスーさんとティノ君。前に伝えた通りトニーさんが来られなかったらスーさんがお父さん役やってくれるんだよ」 「うわぁ〜!可愛い子ですね。僕はティノって言います。よろしくね!」 「ベールヴァルドだ。スーとかベールとか好きに呼んでくんない」 「はいなのですよ!!」 あれ、ピーター君スーさんの事怖くないのかな…。 了解と言わんばかりに親指を立てたピーター君の頭をスーさんが優しく撫でるとキラキラとした目でスーさんを見上げた。 あれ、なんだか仲良し…? 「大きくて優しくて本当のパパみたいなのですよ…!!」 「う、うわぁ…スーさんが小さい子に好かれるなんて…!!良かったですね、スーさん!!」 「…」 「うわぁあ!!すごいのですよ!!高いのですよぉおー!!」 ピーター君の脇に手を入れて持ち上げたスーさんは相変わらずの無表情のままピーター君を地上高く上げた。 す、スーさん…嬉しかったんだね!! いつも小さい子供は逃げて行くもんね!! もうお父さん的な位置についてしまったスーさんはピーター君に「パパ」と呼ばれていた。 うん、スーさんが嬉しそうだし何も言うまい。 「ん。そろそろ競技が始まるな…」 「ピーター君が出るのはこれとこれと…あとこっちのとこれだよね。今時の運動会ってダンスってないのかな?私の通ってた小学校では色々踊らされてさー」 「へぇ、楽しそうだな。何踊ったんだ?」 「ソーラン節」 「そ、ソーラン節…!?」 「あぁ、定番ですよねソーラン節。そんな少女時代の名前さんを映像に残しておきたかった…!!」 「ソーラン節って何だよ。カツオ節の仲間か?」 「あ、僕知ってますよ!!手になにか持って踊るやつですよね?すごいなぁ、日本の行事って楽しい事が沢山でわくわくしますよね!!」 「ティノ君やスーさんのとこの祭りには負けるよ…」 なんだかんだとうだうだ話をしていると運動会も始まり子供達による選手宣誓が行われた。 ピーター君は赤組だったよね…。 しっかり応援しないと!! 宣言通りに玉入れに綱引き、リレーと数々の種目で一位をとり続けるピーター君はさすがアーサーの弟というか…。 隣に座ってるアーサーのテンションが尋常じゃない。 頼むから「すごいだろ!?すごいよな!?」と私の肩を揺らすのはやめろよこのブラコン。 そんなこんなで午前の部最後の種目、借り物競争へと差し掛かった。 これ小さい頃大好きだったなぁ…。 ”気持ち悪い人”と書かれた紙を拾い担任の先生の手を引っ張ってゴールのテープをきった思い出は一生忘れることはできない。 「あ、次ピーター君の番だよね。なにを借りに来るのかなぁ…」 「イケメンだったらまず俺様だよな」 「うん、その場合はスーさんかティノ君が行けばいいよね。カメラとかだったら無難でいいんだけどなぁ…」 「わ、私のカメラはダメですよ!?これは超高性能なカメラで名前さんの姿を一度たりとも逃さぬよう大金をはたいてやっとの想いで買った私のワイフゥウウウ!!!」 「誰かこの人捕まえて」 ピストルの音と共に走り出したピーター君は借り物の書かれた紙を拾うなりこちらへ一直線へ走ってきた。 「名前!!名前!!一緒に来るのですよ!!」 「え、私!?」 「いいから早くぅう!!」 ピーター君に腕を引かれ言われるままゴールテープを目指して走る。 なんとか1位にはなれたものの…ピーター君の借り物ってなんだったんだろう。 「ねぇピーター君、借り物ってなんだったの?お姉さんとか?」 「これですよ!!」 差し出された紙を開いてみると”可愛い女の子”の文字が。 うん…なんか色々間違ってないかな。 中を確認した先生が苦笑いを浮かべた。 すみません、子供の発想は恐ろしいです。許してあげてください。 羞恥心となんとも居た堪れない気分のまま皆の元に戻ると「借り物の内容って何だったんだ?」と聞かれたけど答えることができなかった。 そんなこんなでお昼の時間がやってきた。 まだトニーさんは来ないのかな…。 携帯の方にも連絡は入って来てないし… 親子リレーは午後の部一番最初の種目だからそろそろ来ておかないと間に合わない可能性が… 「お弁当!!お弁当食べるのですよ!!」 「お前ちゃんと手ぇ洗ったのか?」 「ちゃんとおしぼりもありますよ」 「うわぁ〜!!凄いお弁当ですね!!名前さん一人で作ったんですか!?」 「ううん、本田さんにも手伝ってもらってね〜。上手くできてるかわかんないけど本田さんの作った煮物はすっごく美味しいと思うよ」 「このおにぎりは俺様が握ったんだぜ!!」 「すっごく大きいのですよ!!」 「アホな性格が滲み出てるな」 「それではさっそくいただきましょうか」 「いっただきますなのですよー!!」 もぐもぐと卵焼きを口の中に入れたピーター君は「すっごく美味しいですよ!!」と満面の笑顔で言ってくれた。 良かった〜喜んでくれて!! ティノ君やスーさんも美味しそうに食べてくれたし頑張って作った甲斐があったなぁ。 刻一刻と時間が過ぎてゆく中、そろそろ親子リレーに参加する保護者はリレーの列に並ばなくてはいけない時間となってしまった。 「やっぱりカリエドのやつこないじゃねーか…」 「うーん…間に合わなかったのかなぁ、トニーさん」 「んじゃ、俺が行ぐから」 「ごめんね、スーさん」 「気にするでね」 「うん。それじゃあ行ってくるね」 「頑張ってくださいね、二人とも!」 「一位とってこいよ!!」 「あ、あんまり無理しなくてもいいからな!!」 「はいはーい了解でーす」 皆からのエールを受け取ってスーさんと一緒に運動場の端にできた保護者の列へと向かった。 → ←|→ |