「本田さん、卵焼きって甘い方がいいですかね?」

「そうですね。そちらの方が子供も喜ぶと思いますし」

「分かりました。ギルー、おにぎりちゃんと握れてる?」

「あぁ。俺様器用すぎるから素晴らしくアートなおにぎりが生産されてるぜ!!」

「うん。ただの丸の形したおにぎりだよね。しかも大きすぎるし」

「でかい方がいいんじゃねぇ?」

「もうこいつダメだ」


手の平の上でゴロゴロおにぎりを転がすギルを横目に卵を巻く事に集中した。
明日はピーター君の運動会!!
本田さんにも手伝ってもらって明日の為のお弁当を作っているわけですが…。
明日のメンバーは私とアーサーとギルと本田さん、トニーさんにスーさんにティノ君という大人数だ。
お弁当も沢山作っていかないといけない。
よって猫の手…否、ギルの手も借りたい忙しさなのである。


「しかし本当に私までご一緒させていただいてもよろしいのでしょうか…」

「ピーター君がいいって言ってるんですし大丈夫ですよ!ピーター君本田さんに懐いてるみたいだし」

「この間レンジャーのなりきりセットをプレゼントしたのが効果があったのでしょうか…。どちらにせよ小学校の運動会に堂々と入れるなんて幸せ者ですよ私は」

「…本田さん」

「え、ちょっ、勘違いしないでくださいよ!?そんないかがわしい目的なんてありませんからね!!そりゃあ私はロリコンですがそれはあくまで二次元世界の事であって断じて三次元の少女の体操服姿に欲情するような男ではありません!!」

「そうである事を願っています」

「名前さんんんん!!」


本田さんは何しでかすか分からないな。
よく注意しておかないと…。


「うわっ、すごい事になってるな…」

「あ、お帰りアーサー」

「悪い、邪魔しちゃ悪いかと思って勝手に上がらせてもらった。これ、頼まれてたフルーツ類な」

「ありがと〜!!あ、晩ご飯はお弁当のおかずの余りね。こっちもそろそろ終わるから待ってて」

「お、俺もなんか作るの手伝おうか?あいつの運動会なんだし兄貴である俺が何もしないわけには…」

「お前は何もしない事が一番ありがてぇ」

「ばっ、なんて事言うんだよバカァ!!これでも一応料理の練習してんだからなバカァアア!!」

「あーはいはい、いいからそっち座ってて。邪魔邪魔」

「うっ…」


眉毛がしゅんと垂れ下がったアーサーはソファーの上で膝を抱えて丸くなった。
いや、そこまで落ち込まなくても…
なんとかお弁当の準備も終わり、本田さん持参の立派な重箱に素晴らしいできのおかずが敷き詰められた。


「よーし終了!!本田さん、手伝ってもらって本当にありがとうございました!!」

「いえいえ、私は特に何もしていませんよ。ほとんど名前さんが作られたものですし」

「いやいや、私煮物とか苦手なんで本当に助かりました」

「俺様も頑張ったぜ!!」

「そうだね。皮むきとおにぎり頑張ったねー」

「だろだろ」


ギルの頭を撫でてやると嬉しそうに笑って「もっと褒め称えろー!!」と調子に乗った発言をしやがったのでデコピンをくらわせてやった。


「これで明日の準備は大丈夫だよね。レジャーシートも用意したし水筒も大丈夫だし…。場所とりはアーサーがやってくれるの?」

「あぁ。朝早くから保護者が場所取りの為に集まってくるからな。俺も早く言ってベストポジションを陣取ってくる」

「我が子の為に皆必死だよねー…。ちなみにアーサービデオカメラ新しいの買ったんだって?」

「ちがっ、たまたま前のやつが使いにくかったから買いなおしただけであって…!!あいつの姿を鮮明に残しておきたかったとかそんなんじゃないからなバカァアア!!!」

「大丈夫ですよアーサーさん。あのカメラならしっかり弟さんの成長記録を残せるはずです」

「ほんとブラコンだよな」

「ちげぇっての!!」


夕食も食べ終わり本田さんに「明日はよろしくお願いします」と挨拶を交わして明日の支度のチェックも完了した。
あとは明日トニーさんが午後の部に間に合うかどうかだよね…
最悪スーさんが出てくれるって言ってたけど…正直ピーター君がスーさんの事怖がらないか心配なんだよねぇ…
ほら、スーさんはあれだし。その、見ためは怖いから。中はすっごくピュアだけど。
そんな事を考えながら寝る支度をしていると枕元に置いた携帯鳴り、開いて確認してみると画面には”トニーさん”の文字が。


「もしもし」

『あ、名前ちゃん?』

「こんばんはートニーさん」

『夜遅ぉにごめんな〜!!今バイト中でちょっと抜けてきてんねん』

「えっ、大丈夫なの!?っていうかこんな時間もバイトやってるんだー…。やっぱり偉いなぁ。トニーさんは」

『そんな事あらへんよ。あ、そうそう!!明日の運動会やけどな、俺絶対間に合うように行くから!!仕事はよ終わらせて駆けつけるから待っててや!!』

「うん!あ、でも一応トニーさんが間に合わなかった時は私の同僚のスーさんが出てくれるって言ってるし無理しなくても大丈夫だよ?バイトの方が大切なんだし…」

『あかん!!これだけは誰にも譲れん!!ぜったいに、絶対に間に合わせるからな!!だから他の誰にも旦那役はやらせたらあかんで!?』


旦那じゃなくてお父さん役なのですがというツッコミは敢えて無視にして「分かった」と返事をすると安堵する声が返ってきた。
だけどトニーさん無理しないでくれるといいけどなぁ…。
今も遅い時間なのにバイト中だって言うし、トニーさんの体が心配だよ。
頑張らないで、なんて言えないけど無理しないでほしいなぁ…。

電話を終了し部屋の電気を消して寝床に着いた。
明日はいつもより早起きしないとね。
運動会なんて久しぶりだからわくわくするなぁ…。
おもいっきりピーター君を応援しよう!!
あとピーター君に恥をかかせないように私も頑張らないとね…!


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