「え、ローデリヒさん今のアパート出ちゃうんですか!?」

「えぇ…少し問題がありましてね。今新しい場所を探しているところなんです」

「そうですか…。確かローデリヒさんもこの近くに住んでるんですよね?いい物件探そうと思ったらやっぱり少し遠い場所になっちゃうのかなぁ」

「そうですね。不動産屋さんなどに聞いてみる限り少し離れた場所になってしまいますし…。まったく、不便な物です」


そう小さくため息をついてコーヒーカップを口元に運ぶローデリヒさんはどこかの貴族かと思うような上品さで最後の一口を飲み干した。


「それで、あなたの方はどうなのですか?」

「私?別に大して変わった事はありませんけど…」

「そうですか…。貴方は危なっかしくて鈍感なのですからもっとしっかりとしなさい。顔見知りだからと言って男にほいほいと着いていってはいけませんよ」

「はーい…っていうか前々から気になってたんですけど、ローデさんって何かと私の事気にかけてくれますよね」

「貴方は見てて危なっかしいんですよ。少しはエリザベータを見習って上品でしっかりとした女性におなりなさい」

「なんかローデリヒさんってお母さんみたいですよね」

「こんな大きな子を産んだ覚えはありませんよ。それに私は男です!」


口うるさいけどいつも気にかけてくれてるんだもんね。感謝しなきゃなぁ…
ふとエリザの方を向くと、カメラを構えてハァハァと息を荒らしながらこちらの様子をカメラにおさめていた。
私の視線に気付いたのか、「あ、私の事は気にしないで!!そのまま続けて!!あぁもう、本当に絵になるわ!!可愛い!!流石私の名前!!もっと近づいてぇええ!!」と呟いた。
……エリザはそれでいいのか。
というかアレがお上品な女性なんですか、ローデリヒさん。
視線でそう問いかけるようにすると「私は何も見なかったことにしていますので」と小さく呟いた。
あ、自分だけ逃げたな。



―――




「ねぇギルー。私ってそんなに危なっかしいかな」

「はぁ?危なっかしいっつーか…」

「じゃあ鈍感?」

「ああ」

「即答かよ。自分としては冴えてる方だと思うんだけどなぁ。ていうかギルに言われるとなんかむかつく」


いつものようにギルの頬をつねってやろうかと手を伸ばすと腕の上にピヨちゃんが降り立った。
それを見たギルがにやりと笑う。
ちくしょう、ピヨちゃんを使うとは卑怯な…!!


「今日ローデリヒさんにも言われちゃったんだけどさぁ…。あ、そういえばローデリヒさんお引っ越しするらしいよ」

「へー。べつに興味ねぇ」

「ギルはなんなの、ローデさんが嫌いなわけ?」

「ああいう気取ったお坊ちゃんみたいなやつが嫌いなんだよ。むかつく」

「そうかなぁ。優しくてしっかりしてていい人だと思うけど。色々気にかけてくれるし。お母さんみたい」

「バカだろ。バーカ」


腕に乗ったピヨちゃんが飛び立ったと同時に指先をギルの頬へと伸ばす。
白い頬を強くつねり横に引っ張ると餅のようにびろんと伸びた。


「やふぇふぉ!!」

「えーなに、何言ってんのかわかんない」

「ふぉぉおおおおお!!!!」

「いたっ!!叩くなバカ!!」

「テメェ黙ってりゃ調子に乗りやがって!!」

「はぁ?なに、やるの?文句があるならかかってこいよ。DVされたってルート君に告げ口してやるんだからな」

「あいつは俺様の手下だから通用しないぜ!!なんてったって弟だから俺様の事信用してるし尊敬してるし…」

「でもこの間兄さんはどうしようもない奴だって言ってたよルート君」

「え、いやそれは…まぁあれだ。反抗期?」


首を傾けたギルの額にデコピンを入れると涙目になった。
夕食を食べに来たアーサーが「お前らなんかあったのか?」と不安そうな顔をしたけど気にしない。

明日は運動会の為にお弁当を作らないといけないから沢山買い物しないとなぁ…
大変だろうけどピーター君のためだもんね。
喜んでくれるといいけどなぁ。
本田さんにも手伝ってもらって頑張っちゃおう!!


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