「はぁ!?今日中に企画書提出しろって言うんですか!?」

「んだ」

「無理ですよそんな急に!!」

「上からの命令だししょうがなかんべ」

「そうは言いますけど…」


時刻は午後3時。
今から取り掛かっても出来上がるのは夜遅くになるだろう。


「そういう事でいっちょ気張れ!!」

「気張れってコラァ!!この腐れ上司ぃいいい!!!」

「まぁまぁ落ち着いてください名前さん!僕も手伝いますから一緒に頑張りましょうよ!!ね?」

「俺もやんべ」

「ティノ君…スーさん…!!!」


なんていい友達をもったんだろう私は…!!
歓喜あまって二人を抱きしめると「しょうがないなぁ」なんて表情で頭を撫でられた。

よし、やってやろうじゃないか!!
企画書ぐらい直ぐに終わらせてやるんだからなー!!!
これぐらいちょちょいとすれば…


PM8:00


「お、終わらない…」

「僕晩御飯買ってきますね!」

「ごめんーティノ君…」

「あどぢょごっとだ。踏ん張れ」

「スーさんも…付き合ってもらってゴメンね」

「気にするでね」


大きな掌で頭を撫でられた。
スーさんはよく頭を撫でてくる人だ。
一応男性であるティノ君さえもスーさんに撫でられてしまう。
ティノ君はいつもヒーヒー泣いてるけど、私は悪い気はしない。


「よし、もうひとふんばり!!!」

「元気さなっだな」

「スーさんに頭撫でられたら元気まで貰えちゃった」

「そか」


さっさと終わらせて家に帰ろう!!
ギルも待ってるしね!!


PM8:30


「おわったぁああーー!!!!」

「おつかれさまです名前さん」

「二人ともお疲れ様〜!!ほんとごめんね、こんな時間まで手伝ってもらっちゃって」

「何言ってるんですか〜!!友達なら助け合うのが当たり前ですよ!ね、スーさん」

「ん。無事終わってえがった」

「帰りは僕が近くまで送っていきますね!」

「え!?ティノ君が!?」

「あ、あはははー…僕じゃ不安ですよね…」

「いや、そんな事は無いけど…」


むしろ私とティノ君だったら、夜道に気を付けなくてはいけないのはティノ君の方だ。
ティノ君可愛いし。


「俺もいぐ」

「え!?スーさんもですか!?」

「ん」

「ちょっと二人とも〜過保護すぎじゃない?一人で帰れるよ私。それにこの間の変態事件は解決したから大丈夫!」

「え?」

「知り合いの知り合いが犯人だった」

「そ、それはそれで…」

「まぁそういうわけだから。心配しないでだいじょ、」

「いいから。黙って送らせ」


スーさん、男前です。



―――



「ありがとう二人とも!手伝ってもらった上に送ってくれるなんて本当に感謝してます」

「気にしないでください。それじゃあおやすみなさい」

「まだあすた」

「おやすみー!」


ほんとに二人には感謝だなぁ。今度何か奢らせてもらおう。

携帯の時計を見れば時刻は9時過ぎ。
ギルお腹すかせてるだろうな…
おせーんだよ!なーんて怒られそうだ


「ただいまー」


しーん


「あれ?ギルー?居ないの?」


って言ってもどこにも行く場所もないだろうに…。本田さんの所かな?


「ギルー…って、あ…」


ベッドの上に丸まっている動物一匹発見。

いやいや、何で私のベッドで丸まってんの?しかも寝てるし…
もしかして私が帰ってこないから寂しかったとか?

…それはないか。絶対ありえない。


「ちょっとギル…なんでこんなとこで寝てんの」

「んー…?んー」

「んーじゃねぇよ。ったく…」


薄っすら目を開けてその赤い目を覗かせる。
なんか犬か猫みたいだなぁ、こいつ。


「ただいま、ギル。遅くなってゴメンね」

「…おそすぎんだよ、ばーか」

「起きてんじゃん。狸かテメー」

「いでっ!!髪引っ張るな!!」

「ほら、遅くなったけどご飯にしよう?まだ食べてないよね?」

「カップラーメン食ったからもういい」

「そう、じゃあお風呂入っちゃお」

「お湯わいてるぞ」

「へ…?」


今、なんと…


「何まぬけなかおしてんだよ」

「だ、だってギルがお風呂の準備してくれてるなんて…ってゆーかできたんだ…」

「馬鹿にすんなよこれぐらい!!お湯はりゃあいいだけの事でいちいち驚きやがって…」


もしかして、遅く帰ってきて疲れてる私の為にやっててくれたのかな?
気まぐれだったとしても、こんなに嬉しいことはない。
あのギルが自らの意思で動いてくれるだなんて


「なっ、なににやにやしてんだよ!!!」

「え?なんでもないよ〜プーちゃん」

「プーって呼ぶなって言ってんだろ!!ったく気色悪い!!」

「ふふふー。幸せだなぁ〜私」

「はぁ?何がなんだかわかんねー…」

「ね、ギル」

「なんだよ」

「一緒にお風呂入る?」

「ぶふぉっ!!おおおおお、おまっ、お前 何言って…!!!」

「冗談だよバーカ」

「ふぁ…?」

「可愛いとこあるんだねー顔真っ赤にしちゃって」

「う、うるせーな馬鹿女!!誰がお前みたいなペチャパイ女!!!!」

「なんとでも言いやがれ。プー太郎に何言われたってどうってことないもんねー」

「ペチャパイ童顔ガキ腹黒暴力女。あといい加減だし毒舌だし色気がねぇ。エリザみたいにどーんと、ぼいーんとなれねぇのかよお前は。それでも女かよ。男と間違われるぜその胸の無さは」

「…」


今夜再び寝耳にビールの刑に処す事を心に決めたのは言うまでもないだろう。


(ちょっとでも見直した自分が馬鹿だって、分かってるんです)






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