「あ、ルート君!!」

「や、やあ…。偶然だな」

「前にもこの駅で会ったよねー。ルート君はまだ夏休みだよね?どこかにおでかけ?」

「え、あ…いや…。ちょっとな…」


頬を赤く染めてゴホンと咳払いしたルート君はその広い背中の影から何かをもぞもぞと取り出し、遠慮がちに私に差し出した。


「これは、だな…この間の花のお礼というか…。その、女性からあんなものを貰ったのは初めてで何をお返しすればいいのか分からなくて…フェリシアーノに聞いたらお前は甘い物が好きだと聞いてな…」

「何なに、お菓子!?」

「あぁ。好みが分からないから甘さは控えめにしてみたんだが…」

「もしかしてルート君の手作り!?うっわぁああ!!嬉しい!!別に気を使ってくれなくても良かったのに〜。でもありがとう!!すっごく嬉しいよ!!」


お菓子を受け取ってルート君の体を抱きしめるようにして肩に手を置くと「あぁ」と頬を赤く染めた。


「ルート君今から暇?良ければどこかで話でもしない?」

「悪いが今日は食事の当番なんだ…」

「そっか。あ、そういえば連絡先教えてなかったよね?携帯番号とメルアドを交換しよう」

「そうだな。俺も聞きたいと思っていたところだ」

「良かった〜。いつでも連絡してね!!ルート君ってコーヒー好きかな?美味しいコーヒーのお店があるんだけど今度一緒にどう?」

「あぁ、いいな。是非一緒に行かせてくれ」

「うん!!」


やっぱりルート君はかっこいいなぁ。
本当にギルの弟かって疑いたくなっちゃうよ…。
ルート君と連絡先を交換して次の約束をしてから別れた。
ルート君のくれたお菓子、家に帰って食後にでも食べようかなぁ…。
帰宅して机の上にお菓子の入った紙袋を置くとソファーに横になっていたギルが起き上がって「ルッツのクーヘンの匂い…」と寝ぼけ眼で近づいてきた。
私の肩に顎を乗せて肩越しにお菓子の中身を覗いたギルは嬉しそうに笑って、「相変わらずプロ並の出来栄えだぜ」と幸せそうに微笑んだ。
昔もよく作ってたのかなぁ、ルート君。
その味も素晴らしい物で、アーサーの淹れてくれた紅茶と一緒に食べると絶品だった。
ギルがほとんど全部一人で食べちゃって私とアーサーはほんの少ししか食べられなかった。
ちくしょう、食べ物の恨みは怖いぞギルベルトよ…。
だけどあんな弟君がいるなんてギルは幸せだよね。私もルート君みたいな弟がいれば…。
私の事姉さんって呼んでくれないかなぁ、ルート君…。
なんて考えてによによ笑っている私を「あいつエロい事考えてんだぜ」とケセセとバカにするギルの脳天に肘を落とすと隣に座っていたアーサーが「お前…容赦ないよな…」と顔を青くした。





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