「ちょっ、本田さん!?大丈夫ですか!?」

「返事が無いまるで屍のようだ」

「自分でいう台詞じゃないですよね、それ。心配かけさせないでくださいよーこのジジイが」

「黙りなさい小娘」


本田さんの背に手を回してゆっくり体を起こしてあげると大きく深呼吸をして「助かりました」と呟いた。


「連絡しても繋がらなかったからまたあの飴食ってぶっ倒れてんのかと思ったぜ」

「いえ、今回は違います。締め切りに追われて…メール便で原稿を送った所でぶっ倒れました」

「本田さん…もう歳なんですから無理しなで仕事の量減らしてください」

「そうですね…このままでは私の最大の至福である名前さんウォッチングができなくなってしまいます…。少し仕事量を減らしていただけないか編集社の方にも掛け合ってみましょうか」

「本田ってマジで神扱いの漫画家だからそんな我侭ぐらい通るんじゃねぇ?」

「おい芋、私ウォッチング発言はスルーか。ツッコミ入れろや馬鹿野郎」


よろよろと歩く本田さんの後に続いて居間に入ると、いつもは綺麗にしてある部屋がゴミだらけになっていた。
溢れるお菓子のゴミとジュースの空き缶。
え、まさかこれを全部本田さんが…!?


「違いますよ。アルフレッドさんです」

「アルフレッド君…?」

「ふぁ〜。よく寝たんだぞー!!あぁ名前!!おっはよーう!!」

「おはようって…もう昼前なんですけど…。っていうかなんでアルフレッド君が本田さん家でゴミに埋もれて寝てるの!?」

「いやぁーついDVDボックスを見始めたら止まらなくてさー。ガンダムシリーズの大半は制覇したんだぞ!!」

「お菓子を食べながら見ていたと…。ちょっとアルフレッド君太ったんじゃない?」

「そ、そんな事ないんだぞ!!いつもケーキ食べてる名前に言われたくないよ!!」

「んだとこのガキャァアアア!!!」

「おおお落ち着けぇええ!!相手は子供だ!!」

「OH…怖いぞ名前…」

「きっとあれなんですよ…ホラ、女の子二日目?」

「本当にしばいていいよねこいつら」


ブツブツ文句を言う二人にゲンコツを落とすと更にブーブーと文句を言われた。
アルフレッド君はともかく本田さん…いい歳してブーブーはないと思いますよブーブーは。


「けどお前冗談抜きで太ったんじゃね?」

「そ、そんな事ないよ!!今はたまたま休みだけどいつもは映画の撮影で走り回ってるし…」

「でもその分食べてるよね」

「うっ…」

「なんかこう、お腹周りが…」


ぶよっ


「うわぁあああ!!な、なにするんだいくすぐったいよ名前!!」

「あー…うん。これはあれだね…お気の毒に」

「なんだいその明後日を見る目は!!」

「アメリカ人は太りやすいっつーか…ジャンクフードと甘いもん食ってたらそうなるのは当たり前だぜ」

「私の隠していたおやつが全部食べられています…2か月分はあったのに…」

「うん。アルフレッド君、ちょっとダイエットした方がいいんじゃないの?」


アルフレッド君のお腹をぶにぶにと触りながら彼を見上げると「うっ」と小さく唸って俯いた。


「名前は…太ってるやつは嫌かい?」

「んー?別になんとも思わないけど」

「じゃ、じゃあべつにこのままでも…!!」

「ではお聞きしますが名前さん、太っている方と痩せてムキムキな方どっちが好みですか?」

「ムキムキ」

「即答だなこいつ」

「正確に言えば色々好みはあるんだけど…。まぁ体つきが男らしい人は好きだよね。サディクさんみたいな?」

「またサディクかよ!!このサディマニア!!!」

「語呂わりーよ」


私の言葉に涙目になったアルフレッド君。
やばっ、傷つけちゃったかな…


「よーし!!俺ダイエットするよ!!かっこいいボディーを手に入れて名前を惚れ直させてやるんだぞ!!」

「立ち直り早っ!!!」

「それじゃあ早速始めようか〜!!名前、ダイエットをするのに一番いい方法ってなんだい?」

「何で私に聞くの…。まぁ適度な運動じゃない?」

「運動かぁ…。だけど動いてる間もお腹がすくんだぞ」

「それを我慢しなきゃダイエットにならないよ」

「だけど口が寂しいっていうかさぁー…」

「禁煙中のオッサンみたいだなお前」

「オッサンは君だろう。俺まだ若いぞ」

「ともかくさ、甘い物を控えてバランスの取れた食事をとれば自然に痩せるんじゃない?あとは筋トレとかさ」

「よーし!!それじゃあ菊が箪笥の肥やしにしてるエクササイズをして更にジムにでも通うよ!!そしたら俺も憧れのムッキムキさーっ!!」

「ちょっ、なんで知ってるんですか私の秘密ーっ!!!」


酷いですと顔を両手で覆った本田さんの肩をギルがポンポンと叩いた。
アルフレッド君を家の中で野放しにしたのがいけなかったよね…。
エクササイズのDVDに合わせて体を動かすアルフレッド君に、それをやっている暇がアルのなら自分のちらかしたゴミを片付けろと言いたいのをぐっと我慢してゴミ袋の中にゴミを詰めてゆく。
それにしても本田さんもこういうの買ってるんだなぁ…。ムキムキになりたかったのか、本田さん。
チラリと本田さんに視線を向けると目が合って、「目と目とがあった瞬間に何かが始まるフラグですね、分かります」と手を握られたのでゴミ袋でを脳天に振り下ろすことにした。





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