「お前なぁ前々から思ってたけど本当に危機感無さすぎなんだよただでさえ自分と全く無関係な男を一緒に住まわせてるだけでこっちは冷や冷やしてんのにその上知り合いだからって男にホイホイついて行きやがって何で男ばっかなんだよもっと女友達と遊べよバカァ!!」


一息で言い切るものの、キョトンとした顔をした名前は「すごい今の。もう一回言ってみてよ」と平然とした顔で言いのけた。


「お前なぁ…」

「ごめんごめん。そうだ、今日上司に美味しいお菓子貰ったんだー。アーサーも食べる?ギルもお風呂に入ってるし今のうちに食べちゃおうよ」


風呂上りで髪を乾かしながら首を傾げる名前。
べ、べつに可愛いとか思ってないからな。
薄着だから白い肌とか見えてて色っぽいだなんて事も思ってねぇからな。


「いいからここ座れ」


ソファーの横の空いたスペースを指差すと渋々腰を下ろした名前。


「お前さ、この先どうするつもりなんだ?」

「どうするって?」

「仕事とか結婚とか…色々あんだろ」

「あー。別に特に考えてないよ。なるようになるって。それ今の現状がすっごく幸せだからさ、私」


それぐらい、知ってるよバカ。
そしてその幸せを与えてやってるやつが、あのプー太郎だって事も。


「そういうアーサーは何か考えてんの?」

「…だ、誰にも言った事ないんだけどな…」

「うんうん」

「き、聞いても笑うなよ!!絶対に笑うなよ!?」

「笑わないってー。そんな事で笑ってたらアーサーの行動目にするたびに腹抱えて笑ってるから」

「どういう意味だ」

「気にしないで。で、何?」

「俺、な…一つ夢があってだな…」

「へぇ。そういえば会社は継がないでイギリスに帰って平凡に暮らしたいとか言ってたよね。その事?」

「まぁ、そなんだけどな…。イギリスに帰ってそれなりの職に就いて…。愛する人と家族と一緒に暮らすのが俺の夢なんだよ」

「へぇ」

「だ、だからその…お前と一緒にイギリスに…」

「私?イギリスかぁ。景色は綺麗だよね。これでご飯が美味しいなら行っても良かったんだけど」

「ってそこかよ!!ああもうお前最悪!!空気読めよバカァ!!」

「善処します」

「おーい、風呂あがったぜー」

「くぉらギル…ちゃんと体拭いて出て来いつってんだろうが…その辺り水浸しにしやがってテメェ。お前のそのキューティクルな髪で床を吹いてやろうか」

「ぎゃー!!何言ってんだよ恐ろしい!!」

「おいこら!!まだこっちの話の途中だろ!!」

「眉毛と何話してたんだよ」

「ん?夢の話とか」

「キャンプの日の夜のテンションだなお前ら。プップクプー」

「テメェプー太郎…今日と言う今日はいっぺんしごいてやんねぇとわかんねーみたいだな…。ちょっといい場所つれてってやるから一緒に来いよ。ただし朝日は拝めないと思え」

「誰が行くかそんな場所!!」

「え、何キャバクラにでも行くの?頑張ってー二人とも。くれぐれも年端もいかないキャバ嬢にのめりこんだりすんなよー。相手が迷惑だから」

「「いかねーよ!!」」

「つまんないの」


ああもう!!折角二人っきりで話せると思ったのにこれかよ!!
しかもこいつ俺が勇気だして言ってんのにあっさりスルーしやがって…
…さすがの俺もけっこうへこむぞ、これは…


「どうしたのアーサー。暗い顔して」

「眉毛が太すぎるから顔に影ができてんだぜそいつ」

「お前そろそろ黙ろうな。湯上りのまま外に干すよ?」

「髪乾かしてきマース」

「ああもう…なんでお前は…はぁああー…」

「え、何、私のせい!?私なにもしてないんですけど!!」

「してるんだよバカァァア!!バカバカバカバカ名前のバカァアア!!!」

「あっ、アーサー!?」


玄関を飛び出して自分の家に戻ってベッドの中で丸くなった。
ちくしょう…なんであいつあんなに鈍感でバカなんだよ…!!
そしてそんな女を好きになった俺がバカだ…。
鈍感でバカで無防備でどうしようもない奴だけど…好きなんだよちくしょう。
あとさっき俺を心配そうに見てた表情すんげぇ可愛かった。
あぁ、明日の朝顔を合わすの気まずいよな…。
……名前のバカ…。


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