「あれ、トーリス君…?」

「わっ…名前さん…びっくりしたぁ〜!!」

「ごめんごめん。お花屋さんで何してるの?」

「あの、えっと…あはははー…」


帰り道にある花屋の前で真剣な面持ちをして花を見つめていたトーリス君。
肩をたたいて名前を呼ぶビクりと体を揺らした。


「もしかして、ナターリヤちゃんにプレゼント?」

「そ、そうなんです。今日は久しぶりにお休みがとれたから出かけてて…。すっごく可愛い花が咲いてるからナターリヤちゃんにプレゼントしようかなぁ、なんて…。いきなり花を贈るなんてちょっとくさすぎますよね!!喜んでくれるかも分からないし…」

「大丈夫だよ。私もこの間両手に抱えきれないほど花もらったよー。しかも薔薇」

「えぇ!?だ、誰にですか!?」

「アーサー。ほら、眉毛の太いイギリス人」

「あぁ、アーサーさん…。あの人だったら自然にプレゼントしていそうだなぁ…。俺なんてなにやっても格好つかないからいつもナターリヤちゃんに無視されちゃって…」

「そんな事ない。トーリス君はすっごく優しくて思いやりのあるいい子だもん」

「あっ、ありがとうございます」


頬をほんのり赤くして笑うトーリス君はとっても素敵な人だと思う。
人が誰かを好きになって悩む姿ってすっごく輝いて見えるもんなぁ。


「良かったら今からお茶でもどう?」

「いいんですか?俺も久しぶりに名前さんに話聞いてほしいなぁ、なんて…」

「うん!それじゃあお姉さんがケーキを奢ってあげよう!!」

「ありがとうございます!あっ、それじゃあ俺この花包んでもらいに行ってきますね!」


ふふふ、可愛いなぁトーリス君は。
イヴァンの所で頑張って働いていつも忙しそうにしてるけど、トーリス君ってアルフレッド君達と同じ年頃なんだよね。
まだまだ遊んで恋も楽しみたいだろうに…。
本当に偉いなぁ。


「お待たせしました!」

「うん!じゃあ行こうか!いつものアンダンテでいいかな?」

「はい!!名前さんとお話ができるならどこでも構いませんよ!」


その笑顔が眩しいぜ、トーリス君…!


―――




―カランカラン


「いらっしゃいま…あら、名前!」

「やっほーエリザ」

「こ、こんばんは〜」

「今日は二人で来てくれたのね。ちょうどもう少しでローデリヒさんのケーキができあがるの。サービスするから良かったら食べてね」

「やったー!ローデさんのケーキ久しぶりだなぁ」

「ありがとうございます!」

「ふふふ…。あ、そうだ。今アルフレッドも来てるわよ?」

「ほんと!?どこどこ?」

「いつもの窓側の席よ」

「本当だー」


アルフレッド君もここのコーヒー大好きだもんね。


「やっほーアルフレッド君!」

「名前!!やぁ、偶然じゃないか!!」

「ほんと偶然。学校帰り?お疲れ様」

「今日も映画の撮影でさぁー。…ん?そっちの彼は…誰だい?」

「トーリス君。イヴァンのところで働いてるんだよ」

「こ、こんばんは!トーリスって言います」

「へぇー…あのイヴァンの手下かい。まぁ害はなさそうだから別にいいけど。だけど名前、あんまりイヴァンには近づかない方がいいぞ!!なんだか怪しいぞ、あいつ」

「もー。そんな事ないよねぇ?トーリス君」

「アハハハー…」


その後はアルフレッド君を交えた三人で他愛のない話をしたり、トーリス君の恋の悩みを聞いたアルフレッド君がとんでもないアドバイスをしたりと楽しい時間をすごした。
途中で「休憩ですので入れてください」と態度も大きく仲間に加わったローデリヒさんによる恋のお悩み相談室。
エリザ曰くほとんどマニュアル本によるものらしいけど…。
ローデリヒさんから恋愛の話が出てくるなんて思わなかった。
エリザがやたらと血眼で聞き耳をたてていたのが恐ろしい。
でもまぁ、トーリス君も喜んでくれたし良かった。
家に帰る頃にはすっかり遅くなってしまい、いつもの仁王立ちしているギルに加え今日はアーサーも一緒に玄関で待ち構えていた。
声を合わせて「どこでどいつと何してたんだ!!」と大声をあげる二人がうざったくてたまんない。
次には本田さんまで出てきそうで怖いな。





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