「ギルさんギルさん、大丈夫ですかー?」

「大丈夫じゃねぇ」


痛ぇ。体中がいてぇ。
昨日は散々な目にあった。エリザにおもいっきり殴られて、気がつけば今度はトニーとフランシスの馬鹿、エリザにあの気にくわない隣人にまたもや殴られ蹴られの連続袋叩きだ。

俺が何したって言うんだよ…!

しかも名前の奴がやたらと優しくしてくるもんだから調子が狂う。
さっきから「痛い?」だの「何か食べたい物とかあったらあったら何でも言って」だとか普段なら絶対に言わないような言葉を俺に投げかけやがる。

まったくわけわかんねー…


「今日は休みだし晩御飯はギルの好きな芋料理いっぱい作ってあげるね」

「おぉ…」

「デザートは何がいい?スィートポテト?」

「なんで芋ばっかなんだよ!」

「だって芋好きじゃん、ギル」


好きだからと言ってもそれほど芋料理を食わされれば嫌いにもなるぞ…!!


「怪我、痛い?」

「いてぇって言ってんだろ」

「昼ご飯食べられる?」

「腕いてぇ」

「そっか」


名前は机の上に置かれている鶏チャーハンをじっと見つめて、何か思いついたように笑みを浮かべた。
どうせろくでもない事に違いない


「じゃあ私が食べさせてあげるよ」

「は…?」

「ほい、あーんして」


あれか!?あのテレビとかでバカップルがよくやってる、あれをやれと言うのかこの女は!!


「するかよ気色悪い!!」

「何が気色悪いだ。食べないと栄養足りなくて怪我治らないだろーが」

「だからって…!!」

「いいから口開けろ。無理矢理こじ開けられたいか?」


そ、それはそれで嫌だけど…!!
ってゆーか近いんだよ距離が!!


「きっきっき気色悪いからやめろ!!」

「口 開 け ろ。こじ開けんぞ?」

「はい…」


さ、逆らえねぇ…!!


「はい、あーん」

「あ、あーん…」


ぱくり


「おいしい?」


首かしげるな、首。


「そ、そこはかとなく美味いぜ」

「おぉー。はい次、あーん」

「あー…」


何やってんだろ、俺…。
こんなとこトニーにでも見られたら大変な事になるだろうな…


カシャッカシャッカシャッ


小さく響く、カメラのシャッター音…


「ハァハァハァ…」

「本田さん…」

「すみませんドアが開いていたので勝手に上がらせていただいたのですがとても素晴しいシーンだったので静かに撮らせていただきましたってゆーか名前さん萌えぇえええええ!!!!!」


拳を振り上げて唸る本田。
名前が白い目で見ている。まぁ当たり前だろうけど


「不法侵入の上盗撮なんて捕まっても文句言えませんよ」

「大丈夫ですよ。捕まらないようにしますから」

「そういう問題?ったく今日は何の用ですかアンタ」

「最近名前さん私の扱い悪くないですか?」

「気のせいです」

「気のせいですか。今日はこれをお持ちしたんですよ」


どこからか取り出した紙袋を微笑みながら差し出す本田。
こっこれは…!!!


「そっそれはあずきちゃんDVDBOX…!?」

「ふははは!!やっと手に入れたんですよこのプレミアDVDBOXを!!!オークションでん十万円で取引されている商品ですからね。新品で買うのは困難な業でした!!!」

「ちょっ本田様!!すげぇ!!どんだけ金持ってんだよお前!?」

「アニメの為にはお金を惜しまないのがオタク魂ってものですよギルベルトさん!!」

「お前は神か!?」


あ…やばい…。名前が蔑むような目で俺を見ている


「本田さん…ギルをオタクに仕立て上げようとしたってダメですからね。私は許しませんよ」

「まぁまぁ許してあげてくださいよお母さん」

「誰がお母さんだ」


名前のチョップが本田の脳天に突き刺さる。
あれ結構痛いんだよな…


「いたた…これを一緒に見ようと思って来たのですがお邪魔みたいですね」

「構いませんがご飯食べ終わってからにしてくださいね。片付かないので」

「分かりました。では私はここでシャッターをきりながら素敵なハプニングが起こらないか今か今かとお待ちしておりますね」

「帰れ」



―――



夕方。ずいぶん日も落ちてきた。
そろそろ晩御飯の用意しなきゃなぁ


「本田さん、食べていきますよね?」

「ええ。ありがとうございます」

「ついでにアーサーも誘ってみようかな」

「うげ…あいつも誘うのかよ。俺あいつにこんな怪我させられたんだぜ?」

「え!?ギルベルトさんアーサーさんと喧嘩でもしたんですか!?一人の女をかけてのガチンコバトルですか!?」

「いえ、袋叩きです」


あながち間違っていないような気もするけど…。

しかし今日の所はギルも悲惨な目にあった事だし、アーサーは誘わないでおこうか。
悪いな、アーサー。


「芋料理三昧できましたよ〜!」

「これはまた…」

「なかなか上手そうじゃねーか」

「作りすぎちゃったんだよなぁ…。頑張って食べきりましょうね」

「はい」

「それではいただきま…」


ピンポーン


なんとも絶妙なタイミングで鳴った玄関のチャイム。


「はいはーい今行きますよー」

「先食ってんぞ」

「はいはい」


そんなに待ちきれないのかギルベルト。


「どちら様?」

「よぉ」

「あらアーサー」


噂をすればなんとやら。
そこには何かを両手に変えているアーサーの姿があった。


「何それ?」

「ビール」

「ビール?なんでビールなんですかイギリス人さん」

「その…昨日はちょっとあいつに色々やりすぎたから…。なんと言うか…」


なるほど。せめてものお詫びって事ですね。流石一応紳士だけの事はある。


「入れてあげたいんだけどギルがねー…。ギルー!アーサーが来てるけどどうする?」

「はぁ?叩き返せそんな奴!!!」


近くにいないからって強気だなぁ


「アーサーはアーサーでも両手にビールいっぱい持ってるアーサーですよー?」

「よーし立ち入りを許可してやる!!」

「安いなお前」


ビールで許せちゃうんだ。
安いというか優しいというか…
まぁアーサーもほっとしてるみたいだし良かった。


「こんばんはアーサーさん」

「本田か。って、何だよこれ!!芋料理ばっかじゃねーか!!」

「今日はギルの好物ばかり取り揃えてみました。不憫な目にあったし一応今日だけは優しくしてあげようと思ってね」

「てめっ!!だから今日あんなに気色悪いことしたのか!?」

「気色悪いって何したんだよお前」

「ふふふ。アーサーさん写真見ます?」

「うわ!!やめろ馬鹿!!!」

「いったいなんなんだお前…」

「ほら、アーサーもご飯食べてー」

「芋料理しかねーんだろ?他にも俺が料理して…」

「「それはやめろ!!!」」

「この二人を震わせるアーサーさんの料理…。実に興味深いです!!!」


あぁ、なんかこうやって四人で騒ぐのって楽しいな。
ギルが来るまではアーサーと二人だったり一人で食べてたし。
こんな時間がいつまでも、ずっと続くといいな。


「あっ!!ちょっとアーサービール飲みすぎ!!酔っ払うからやめて!」

「いいだろ俺が持ってきたんだから!!」

「そうだそうだ男には飲み明かしたい夜だってあんだぞ!女は黙ってろ!」

「いよーぅギルベルトさんかっこいいですよぉおおお!!男ですねーぃ!!」

「ガハハハハ!!いつも従ってると思ったら大間違いだぜー!!」

「調子に乗るなよお前ら下半身一生使い物にできなくすんぞ」

「「すみませんでした」」

「ドSな名前さん萌えぇぇえええええええ!!!!!!!!」






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -