「ギル、私買い物行ってくるから。部屋の掃除しておいてね」

「はぁ!?何でお前だけ外に出て俺様は家で掃除しなきゃなんねーんだよ!!」

「昨日約束しただろーが。それじゃあ行ってきまーす」

「ちくしょー…!!」


悔しそうに唇をかみ締めるギルを後に玄関の扉を閉めた。


「ん。準備できたか?」

「うん。ギルは掃除させなきゃないんないから置いてきたよ」

「なっ…じゃあ二人っきりかよ!!」

「別にいいじゃん。さぁー今日は宜しく頼むよ荷物運びのアーサー君!」

「うっ…」


アーサーの背中を思いっきり叩いて気合を入れた。
今日は色々と買いたいものがあるからアーサーに荷物運びやってもらわないとね!!
新しいベッドシーツとか歯ブラシとか衣類関係だとか、買っておきたいものが山のようにある。
さっそくアーサーに車を出してもらい少し離れた場所にある最近できたばかりのショッピングセンターにやって来ました。


「えーっと、まずはベッドカバーと鍋つかみとー…生活雑貨のお店に行けば揃うかな」

「ちょっ、俺を置いていくなバカァ!!休日で人が多いから迷いそうなんだよ…!!」

「もし逸れちゃったら携帯に電話してね。気付かない場合もあるから最終手段は迷子センターに行って年齢と名前と私の名前を言えば呼び出してもらえるから!!」

「親指立てんな!!お前俺に恥かかせてーのかよ!?」

「うん」

「即答!?」


人ごみにもまれて早くも足取りの重いアーサーの腕を掴んで子供連れの家族の傍を横切った。
子供とお母さんが「あのお姉ちゃんお兄ちゃんの腕引っ張ってるよー」「あらぁ、尻にしかれちゃってるのかしらねぇ」なんて言っていた気がするけどこの際気にしないでおこう。


「うーん、今から肌寒くなってくると思うしベッドカバーは厚めのほうがいいかなぁ…。アーサーはどう思う?」

「まだ暑いだろ。どうせすぐに冬物にしなきゃなんなくなるんだったら自分の好きなデザインで選んだ方がいいんじゃないか」

「そっか。流石アーサー!!じゃあこの花柄のやつにしようかなぁ…。うーん、こっちのチェック柄も可愛いよね。でも私の部屋ならこの花柄の方が合ってるような…」

「ん。俺もそっちがいいと思う」

「じゃあこっちにしよう。あーもう、本当にアーサーに一緒に来てもらってよかった!!ギルだったらどれでもいいだろで済まされちゃうもんね。熟年夫婦の妻になった気分になるんだよ」

「じゅくね…っ!!ま、まぁ俺はセンスいいしな!!それに紳士だからそんなバカみたいな事言うわけ無いだろ!」

「だよね。あ!あっちのカーテン可愛い〜!!アーサー次あそこあそこ!!」

「ひっ引っ張るなよバカァ!!」


その後もアーサーの腕を引きあらゆる場所を転々としたおかげでほしかった物の大半を購入する事ができた。
予想以上に早く買い物が終わったので少し足を運んで普段行かない場所にも足を伸ばした。
とっても可愛い海外の輸入雑貨屋さんや美味しそうなパン屋さんを見つけられてラッキーだったなぁ。
また今度行ってみよう。


「ただいまー」

「重っ…!!ちょっ、そこ空けてろよ!!荷物降ろすからな!!」

「はいはーい。腰やっちゃわないでよ〜?だから私が持つって言ってんのに」

「ばぁか。お前にもてるはずねーだろ。いいから降ろすぞ」

「へーい」


玄関の空いたスペースに抱えていた荷物を降ろしたアーサーは大きく新鮮な空気を吸い込み「あー…」と唸りながら背中を伸ばした。


「ただいまーギル。お土産買ってきたよー」

「…いらねぇ…」

「拗ねちゃってるよこの子…。荷物片付けるんだから手伝ってよー」

「……嫌だ」


クッションにしがみつくようにして丸くなっているギルの頭の上に乗ったピヨちゃんが心配するように「ピィ」と鳴く。
ったく…置いていかれたから拗ねてんだろうなぁ。
昨日掃除してなかった自分が悪いんだろ。
アーサーに荷物を片付けるのを手伝ってもらい、今日買ってきた食材で夕飯の準備を済ませる。
夕食を食べ終わっても唇を尖がらせているギルにお土産のかぼちゃプリンを差し出すとチラチラと私とプリンに視線を送った後に傍にあったスプーンを手に取った。
プリンを半分まで食べたかと思うと動きを止め、じっと私を見つめた後にプリンをすくったスプーンを私の前に突き出した。


「何これ」

「食えよ」

「いや、今私も食ってるし」

「いいから食えアホ女!!お前どうせ一個ぐらいじゃ足りねーだろ!!」

「なにそれ。私どんだけ大食いだと思われてんの」

「食わないなら俺様が食うぞ!?」

「あーはいはい」


頬を赤く染めて手を震わせているギルの手首を掴んで固定し、スプーンの先を口に含む。
うん、美味しいけど今私が食べてるのと同じ味だよね。
満足気に笑顔になったギルはまたプリンを私の前に突き出す。
容器ごと渡してくれると嬉しいんだけどなー…なんて、さっきまで機嫌の悪かったギルが笑顔になってるんだしそんな事言えないよねぇ…。
その後も夜更かしをしながら映画を見ている私の手を掴んで指を絡めたりぷらぷらと揺らしたりと意味のわからない行動に出たギルはとても上機嫌だった。
まぁ、ギルがいいならそれでいいんだけどね…。


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