「ロヴィーノ君とフェリシアーノ君遅いなぁ…」 「マジでそいつら来んのかよ?」 「来る、と思うよ。もしかして道に迷ってるのかなぁ…」 今日はロヴィーノ君とフェリシアーノ君が私の家に遊びに来る日だ。 昨日メールで”10時に行く”なんて行ってたのに時刻はもう11時。 どこかで迷ってなければいいけど… 「おい、携帯鳴ってんぜ」 「はいはーい」 携帯を開いてみれば案の定そこには”ロヴィーノ君”の文字が… 「もしもし?」 『ま、迷ったぞちくしょぉおおお!!』 「あーはいはい。迎えに行ってあげるから今どこか教えて?」 『なんか住宅街で…やたら古そうな和風な家がある』 「どこだろう…名刹にはなんて書いてある?」 『あー…本田』 「って本田さん家かい。分かった。すぐ行くから待っててね」 『早く来いよちくしょー…バカ弟は泣き喚くし最悪なんだよこんちくしょー!!グスッ』 「はいはい分かったから。そこ動かないでね?」 携帯をポケットに入れて玄関を出る。 ったくもう、世話のやける子だなぁあの子達は! 「ロヴィーノくーん!フェリシアーノくーん!」 「ヴぇえええ!!名前だぁ〜!!」 「お前の家分かりづらいんだよちくしょぉおお!!」 案の定本田さん家の前に立っていた二人。 「おはようございます名前さん」 「あれ、本田さん?どうして…」 「表で泣き声が聞こえたものですから…。まさか名前さんのお知り合いの方だとは思いませんでしたよ」 「ヴぇー!お菓子貰ったんだよ〜!!ありがとう菊ー」 「どういたしまして」 まるで孫とお爺ちゃんみたいだよなぁ…。 本田さんに軽く頭を下げてお礼を言うと「いえいえ」とやんわりとした笑顔が返ってきた。 「そうだ、今わらび餅を作っているのですが後でそちらに届けに行ってもよろしいですか?」 「俺わらび餅大好き〜!!」 「いいんですか?」 「えぇ。沢山出来上がっていると思いますので皆さんで是非。ついでに次のネタを徴収しに行きますので宜しくお願いします」 「そっちが目当てか」 まぁ本田さんのわらび餅美味しいから今回は大目に見ておこう。 「それじゃあまた後で」と本田さんに頭を下げ、二人を引き連れてマンションに戻った。 「ここが私のお家です」 「うわーい!!女の子の部屋!女の子の部屋!!」 「騒ぐなよバカ弟」 「兄ちゃんだって来る時すっごいわくわくしてたくせにー。あだっ!!足踏むのやだよ兄ちゃぁあん!!」 「あーもう喧嘩しない!!ほら、さっさと入った入ったー」 「お邪魔しまーす」 「お邪魔します…」 ったくこの子達は…割って間にでも入ってないとすぐ喧嘩するんだもんなぁ…。 ぐちゃぐちゃに脱がれた二人の靴を綺麗に並べてリビングに戻ると、目を見開いたギルがわなわなと震えていた。 「どーしたのギル」 「ちょっ、ま、うおおおおお!!可愛い!!なんだよこれ、すんげぇええええ!!すんげぇ可愛いすぎるぜぇええええええ!!!」 「うヴぇええええええ!!??」 「フェリシアーノ!!テメェ俺の弟に何すんだよ!!」 「ちょっとギルさーん!?なにフェリ君抱きしめてんのぉおお!?」 「なんだよこの生き物可愛すぎるぜキャッホォオオ!!!」 逃げまとうフェリシアーノ君を後ろから捕まえて抱きしめたギルはすりすりとフェリ君に頬擦りをした。 どうやら彼はギルの好みのタイプのドストライクだったらしい。 「ヴぇヴぇヴぇヴぇええ!!助けて名前ーーっ!!」 「ギル、フェリシアーノ君嫌がってるから離してあげてよ」 「嫌だ!なんだよお前こんな可愛い子もっと早く紹介しろよな!!」 「おい名前…こいつ誰だよちくしょー…」 「あー…前に話してた同居人」 「こいつが…?」 ギルからフェリシアーノ君を無理矢理引き離してギルの手の届かない場所にフェリシアーノ君を座らせた。 それでも目を輝かせてフェリシアーノ君を見つめるギルをロヴィーノ君が怪しむような目つきで睨んでいた。 「おい名前。なんでこんなのと一緒に暮らしてんだよ!?」 「まぁ成り行き」 「成り行きって…!!付き合ってねーんだろ!?」 「勿論やましい事なんてこれっぽっちもございませんよー」 「じゃあなんで…!!」 「だから成り行きだってー。あ、お菓子食べる?」 「わーい!食べる食べる〜!!」 「くーっ!!可愛すぎるぜフェリちゃん!!」 お茶を淹れてお菓子を用意しているとタイミング良く本田さんがわらび餅を持って来てくれた。 皆で本田さんの絶品わらび餅に舌鼓をうちつつ会話に花を咲かせ、最初は余所余所しかったロヴィーノ君もギルと仲良く話していてとても楽しそうだった。 「そろそろ夕飯の支度しなくっちゃね。二人とも夕食食べていくでしょ?」 「ううんー。今日は俺が食事当番なんだ!帰ってご飯作らないと怒られちゃうよー」 「へぇ〜。そういえば友達と一緒に暮らしてるんだっけ…?」 「性格には同じマンションに暮らしてるだけなんだけどね。三人で一緒にご飯食べたりして協力し合ってるんだよ〜」 「おいフェリシアーノ。お前帰り道とか分かるのか?」 「ヴぇ…そういえば道に迷いながら来たから全然覚えてないよぉ〜…」 「じゃあどうやって帰るんだよちくしょう!!」 「わかんないよぉお〜!!トニー兄ちゃんに迎えに来てもらうとか…」 「私が送って行って差し上げますよ。駅まで行けばよろしいのですよね?」 「うん!!うわーいありがとう菊〜!!」 「ちょっ、抱きつかないでくださいよぉおお!!私に抱きついていいのは名前さんか年齢17歳以下の制服姿の女性だけなんですからねっ!!!」 「マジで自重してください本田さん」 「ちくしょぉおお羨ましすぎるぜ本田ァアア!!!」 「お前も自重しろな」 名残惜しそうにフェリシアーノ君の腕を掴んだギルに内心飽きれつつため息をついた。 この子はまったく… 二人が帰り仕度をしていると、玄関のチャイムがリビングにに鳴り響いた。 「お客様、ですか?」 「みたいですね。ちょっと行ってきます」 「フェリちゃん帰らないでくれ一生俺様と一緒に暮らそうぜ!!」 「ヴェー。だめだよ〜」 ギルの頭を殴って「いっでぇええ!!」という声をバックに玄関に向かった。 アーサーでも遊びに来たのかな。 「はいはい、いらっしゃ…」 「すまない、ここにフェリシアーノとロヴィーノという兄弟は来ていないか?」 予想に反して現れた人物に視線が合わず視界に飛び込んできたがたいのいい体に思わず目を瞬いた。 「えっーと…」 「い、いきなりすまない。二人の友人なんだが、俺の部屋にここへの地図を忘れていて…。あいつらの事だから道に迷いながら来たのではないかと思ってだな…」 「わざわざお迎えに?」 「あぁ」 優しい友達だなぁ。この子がフェリシアーノ君の言ってたお友達だよね。 体つきが良くて身長も高くて… あれ…なんだか…、 「二人はここに来ているか?」 「へ!?あ、はい!居ますよ〜。今リビングでちょっと…ともかく中に入ってやってください」 「あ、いや…ゴホン。女性の家に上がり込むのは失礼だろう…」 「いいですよーもう男しかいないぐらいの場所なんで。気にせず入ってください」 「すまないな…。お邪魔する」 硬派な人だなぁ。 やっぱり勘違いだろうか この人、なんとなく… 「フェリ君ロヴィーノ君〜!お友達が迎えに来たよー」 「ヴェールートォ〜!!すっげぇ〜なんでここが分かったのさ!」 「お前俺の部屋にこの地図を忘れていただろう…」 「ほんとだ〜!ありがとうルート、わざわざ来てくれたんだね〜」 微笑ましいなぁ。 いきなり現れた彼に驚いた表情を浮かべたフェリシアーノ君だったが、すぐに彼に飛びついてそのぴょこんと生えた髪をゆらゆら揺らした。 ガタン、と何かが低く揺れる音が響き反射的に音がする方へ視線を向けた。 「…ギル?」 その深く真紅に輝く瞳が、見開いた 「ルート、ヴィヒ…」 . ←|→ |