「えー…皆さん落ち着かれましたか」 『はーい…』 「それじゃあ一つずつ整理いたしましょうか。コラそこ、威嚇し合わない」 「だってこいつが…」 「むかつくねんこいつ」 「はいは〜い。そこでぶっ倒れてるギルはどうすればいいのかな、お嬢さん」 「生きてるみたいなので放置しておいても大丈夫ですよ変態髭オヤジ」 「えええ!?ちょっ、酷いその呼び方!!」 「ざまぁ見ろ。こいつ敵とみなした奴はとことん叩きのめす奴だからな。酷い手使って立ち直れない程までにぶっ潰すSのスペシャリストだぜ」 「アーサー、この瞬間に君も敵とみなされた事を忘れないようにね」 えー…先程の騒ぎは一先ず落ち着いて、幸い休憩時間でお客さんの居ない店内の椅子に全員座らせ、一から頭を整理する事にしました。 「ではエリザ、ギルベルトとの関係は?」 「認めたくないけど幼馴染よ。昔っから私にちょっかいかけてくるし胸しか見てない最低の男なのよ…!!」 「うん、気持ちは痛いほど分かるから今は落ち着こうか。それじゃあローデリヒさん。トニーさんとの関係は?」 「同じく幼馴染という奴です。彼に会ったのは数年ぶりですがね」 「成る程。それじゃあトニーさん、アーサーとその変態髭面オヤジとの関係は?」 「カークランドは…なんと言うか、喧嘩相手みたいなもんや…。変態髭面痴漢野郎はここ来る時に話してたもう一人の連れや」 「と言う事はギルベルトの友達…」 「そうそう!!だからあの事は許してよ名前ちゃ〜ん。俺可愛い子見掛けたら声かけずには居られないだけなの」 「死ねよ。こちとら夜道追い掛け回されてどんだけ怖かったと思ってんだ、あ゛?調子乗ってっとブタ箱に一生放り込むぞ」 「…ほんとすみませんでした」 「名前、言葉遣いがお下品ですよ!」 「あ…やばいやばい、つい出ちゃった」 「名前かっこいいわ…!」 「名前ちゃんの為ならMになれるで、俺」 エリザとトニーさんがポッと頬を染めて熱い視線を送ってきが今は気にしないでおこう。 「話は戻って、、次アーサーね。この髭変態痴漢セクハラオヤジとはどういうう関係?」 「この変態髭面痴漢セクハラオヤジデラックスは幼馴染というか、昔馴染みと言うか…」 「デラックスって何!?」 「とにかく俺はこいつの事心の底から嫌ってるんだからな。勘違いするなよ」 「それはいつものツンデレなの?」 「ちげーよばかぁ!」 成る程…。これで頭がスッキリしたぞ!! それにしても知り合い同士が一度に集まるなんて偶然ありえるのだろうか… まぁ、実際起こってしまったものはしょうがなんだけどね 「名前、まだ問題は解決してないわよ」 「へ?」 バンッと音をたてて机を叩いたエリザは、床に放置されたままのギルベルトを指差した 顔がものすごく怖いです、エリザ様… 「名前とこの男は一体どういう関係なの!?それが一番の問題じゃない!!!」 「エリザ、はしたないですよ」 「すみませんローデリヒさん…」 しゅんとなって椅子に座るエリザだったが、納得できないと言った顔でギルベルトを睨みつけている。 「それ俺も知りたいわ〜。一緒に住んでるって事は知ってるけどそれ以上の事は聞いてないし」 「一緒に住んでるですってぇえええ!?」 あぁ、頭が痛くなってきた。 般若のような顔をしたエリザは、気を失っているギルベルトに近づいて胸倉を掴んだ 「あんた私の名前にあーんな事やこんな事したんじゃないでしょうね!?そんな素敵な事私は許さないわよぉおおお!!!」 「エリザストップ!!首!首は止めてあげて!!!」 「やっちゃえエリザちゃーん。お兄さんは女性の味方だよー」 「お下品な人ですね」 「うわ、何この坊ちゃん。顔は好みなのにいけ好かねー」 「そんな不憫野郎そのままどっかに埋めたれぇえええ!!!」 「いっそもうこの世に戻って来れないようにするか?魔術で」 「魔術!?ちょっと落ち着いて皆!!!エリザ首絞めちゃダメだってぇええー!!!」 ああもう嫌!!何この状況!? とにかく一から説明するしかない…!! 「そいつは一ヶ月前にゴミ置き場で倒れてる所を拾っただけ!!怪我してたし帰る場所も無いって言うから私のとこに居るだけだから!!皆が考えているようなやましい事は全くありません!!!以上!!」 はぁはぁと息を荒らして一思いに言い切った 騒がしかったさっきまでの状況が一気に静まり返る 「なぁ名前ちゃん…」 「…なんすか」 「名前ちゃんは分からんかもしれんけど、男って皆狼やねんで?羊の顔していても心の中は狼が牙を剥く、そういうものよ〜なんや」 「ピンクレディーですか」 「ギルの場合見た目は狼で中は羊って感じだけどねー。お兄さんはいつだって狼!」 「テメェは黙ってろ。俺は今まで名前とあいつの状況を見守ってきたつもりだ。こいつの言うとおりやましい関係どころかそんな雰囲気にもなりゃしないぜ」 「それは貴方が傍に居るからじゃないの?二人っきりの夜は何が起こってるか分からないじゃない」 「いや、大丈夫だと思う。俺はこいつの事信じてるし…」 少し渋い顔をしたアーサーは私の目を見た。 いつもすぐ傍で私とギルの生活をなんだかんだと文句を言いながら見守ってくれたのは他の誰でもない、アーサーだ。 憎まれ口を叩きながらも私の事を心配して様子を見に来てくれる。 あぁ、自分の事をこんなに大切に思ってくれていた人が近くに居る事を忘れかけていたよ、私。 「ありがとう、眉毛。信じてくれて」 「この場面で眉毛って呼ぶか普通!!!?ま、まぁ2年も隣同士だしな…」 「いい隣人さんを持って幸せです」 「そ、そうかよ」 「ちょっ、何ええムードになってんねん。ってゆーかカークランドがお隣さんなんて初めて聞いたで。俺もあのマンション引っ越そかなー…」 「もう部屋は満室だ。他をあたれ」 「名前ちゃんおらんかったら意味ないわ」 「ねぇ名前。信じていいのね?こいつに何もされてないって」 「大丈夫だって!何かあれば再起不能にすることだってできるんだしね」 「それじゃあこの問題は解決って事でいいのかなー?」 「そういう事やな」 良かった〜皆納得してくれたみたいで!! これで一件落着。さぁーギル連れてさっさと帰ろー 「でもそれとこれとは別よね」 「え…?」 「あぁ。そやね。名前ちゃんと一緒に暮らすなんか羨ましすぎんねん。何もないにしろ一発殴らんと気がすまんわ〜」 「ん。初めて意見が合ったなカリエド」 「今日のところは一時休戦や。ターゲットはあのプー太郎のみ」 「お兄さんも羨ましいから参加ちゃおうかな〜」 「まったく、お下品な人ばかりですね…」 ぞろぞろとギルベルトの周りを囲んでいく4人を見て胃がキリキリと痛むのを感じた。 「んぁ…?いってぇ〜…エリザの奴思いっきり殴りやがって…。って、あれ?なっなんでお前ら俺を取り囲んで…」 そっとローデリヒさんが立ち上がって店内に置いてあるピアノの前に座った。 慣れた手付きで蓋を開け、鍵盤に指を置く。 その音楽が流れるのを合図にしたかのように、ギルベルトの雄叫びが響き渡った 「ベートーヴェンのピアノソナタ、”悲愴”です」 ギルの雄叫びと綺麗なピアノの音とのシンフォニー。 「逃げるんじゃないわよギルベルトー!!!」 「俺の音速の右足が血を欲しがっとるんじゃぁああい!!!」 「何それお兄さん初めてきいたよ!?」 「出でよ大魔王サタン!!!」 「ぎゃぁああ何出してんのアーサー!!ちょっこいつマジで魔術使ってやがるぅうう!!!何か俺泣いちゃいそう!!」 「誰か…胃薬をください…」 「そんなものありませんよお馬鹿さんが」 . ←|→ |