「なにやってんだテメェェエ!!!!」


頭に響くギルの怒声に無理矢理目を覚まされた。


「んー…なにー…うるさ、ぎゃおおおお!?」

「テメェアルフレッドォォオオ!!!!」


はっきりとしない頭で現状を確かめようとすると、腕をおもいっきり引かれて体がベッドから浮き出た。


「なに!?なんなの!?」

「むー…なんだい…」


頭を起こして今自分の身におこっている現状を確認すると自分の体がギルの体に預けられているような形になっていた。
今腕引っ張ったのはこいつか…


「なんですかギルベルトさん…朝っぱらから」

「おまっ、なんで寝てる間に気付かねーんだよ!?」

「何が」

「だからこれ!!お前のベッドに見てみろアホ!!」

「はぁ?」


そういえばさっきアルフレッドがどうのこうのって…
嫌な予感がしつつ恐る恐る自分のベッドの布団を捲った。


「あ、アルフレッド君…?」

「なんだよさっきから…煩いなぁ…」

「テメェはなんでここで寝てんだよ!?」

「昨日リビングで寝ちゃったからベッドに移っただけじゃないか。硬い床の上じゃ眠れないんだぞ」

「じゃあソファーで寝ろよ!?なんでわざわざこっちくんだよ!!」

「だって名前と一緒に寝たいじゃないか」

「もうやめて…朝から頭痛くなる…」


ギャーギャーとわめくギルとアルフレッド君をそのまま放置してリビングへ向かった。
まだ起きるには早すぎる時間だよ…。
もう一眠りするべきか…ちょっと早いけどお弁当作るつもりだったしちょうどいいかな。
寝室から聞こえてくる二人の馬鹿でかい声をバックサウンドにキッチンで朝ご飯とお弁当の準備にとりかかった。
ったく、朝から騒がしいったらありゃしない…


「ったくあいつは…」

「もう終わったのー?」

「まだ眠いから寝るだとよ。マジでむかつくぜあいつ!」

「今日はやけに早起きだったんだね」

「あぁ。たまたま目が覚めたときあいつが居なかったからもしかしてと思って…」

「そっか。まぁアルフレッド君もあんな子だし悪意はないんだろうねぇ。まだ19の子なんだし可愛いもんだよ」

「…まずあいつが男だって事理解してくれ…」


大きく溜息をついたギルはそのままフラフラとした足取りで私の所までやってきて後ろから私の肩に顎を乗せた。
なんだ、甘えっ子モードか。


「重い」

「ねみぃー…」

「じゃあ寝てればいいだろうが。アルフレッド君と一緒にベッドで寝る?」

「気色悪い事言うなよ…。っていうかお前…寝てる間とか…」

「何」

「あいつに何もされなかったか…?」

「別にー。居るの気付かないぐらいだったし何もないよ。っていうかマジで重いんで退いてくれませんか」

「んー……嫌っプー」

「うわぁ…殴り飛ばしてぇ…」


背中に体重をかけるギルに殺意が芽生えつつ朝ご飯とお弁当の準備を済ませた。
会社に行く支度も済ませ、アルフレッド君とマシュー君とついでにアーサーにもお弁当を持たせてあげるととても喜んでもらえた。
アーサーがやたら嬉しそうに満面の笑みを見せてくれたものだから、たまにならお弁当を作ってあげてもいいかなぁなんて思ってしまったり。
なんだかんだ言って私はこいつの笑顔に弱いの笑顔に弱いのだ。

その日のお昼はアルフレッド君とマシュー君とアーサーから同時刻にメールが入ってきて、それぞれがお弁当が美味しかったとお礼の言葉を送ってくれた。
ふふふ、なんだか嬉しいなぁ。
ギルのお昼も同じお弁当だったんだけど…まぁあいつがわざわざ「美味しかった」なんて感想を言ってくるはずもないしな。期待するだけ損だ。



「あ、名前ちゃんやー!」

「こんばんはートニーさん」

「夕飯の買い物?そういや明日ロヴィーノが名前ちゃん家行くらしいなぁ。あいつわざわざ電話よこしてきよって自慢されてもたわー」

「そうなんだよね〜。前々から遊びに来たいって行ってたから」

「なぁ名前ちゃん…あいつへタレやけどめっちゃナンパしぃやねん…。変な事されそうになったら頭に生えてるくるんおもいっきり引っ張れば助かる思うからな、充分気ぃつけてや?」

「そんな…まぁ確かにロヴィーノ君はあんんなだけど素直で可愛い子じゃん」


イタリア土産はとっても際どい下着だったけど。


「あかんねん、名前ちゃんは分かってへんわぁ〜…。男は皆羊の顔した狼やねん!!この人だけは大丈夫ってうっかり信じたらダメダメダメあーダメダメよなんやで!?」

「うん、ネタが古いよね!!」


その線で行くと一番危ないのはギルという事になるのか…。
いや、あいつだけはまず無いな。
ただの芋の皮を被った不憫だ。
トニーさんと別れて買い物を済まし、家に帰っていつものように夕食の準備をしていると今朝と同じようにギルが纏わり付いてきた。
無理矢理引き剥がすと頬を膨らませたので両手で頬を押さえつけてやると「ぷー」と口を尖がらせて拗ねていた。
可愛いなぁちくしょう。
夕食後、ピヨちゃんと遊んでいるギルの髪を撫でてやると満更でもないような表情で「俺様の髪はシルクのように美しいぜ!」と笑った。
なんだかなぁ。幸せだ。


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