目が覚めたら、既に日が沈み始めていました。 「って、うおおおおお!?」 「んだようるせーな…ねみぃ…」 「ちょっとギルさん!?もう夕方なんですけど!?私達どんだけ寝てるのこれーっ!!」 「昨日はしゃぎすぎたんだからしょうがねーだろ…。俺様まだ眠いぜ…」 欠伸をしながら目を擦るギル。 っておいおい、もう5時だよ…。 一日損しちゃったなぁ…。 「腹減ったー…」 「ご飯作る気力ないよー…出前でいいや。何食べたい?」 「ピザ」 「オッケー。アーサーも一緒に食べるかなぁ…。ちょっとアーサーのとこ行ってくるよ」 「2分以内に戻ってこいよ」 「へいへーい」 着替えを済ませて重い体を引き摺りながら隣の家のチャイムを鳴らすと、これまた眠そうな顔をしたアーサーが出てきた。 「ういーっす。昨日はお疲れさん」 「…ん…あぁ」 「もしかして今まで寝てた?」 「さっき目ぇ覚めた」 「私も私もー。今から電話でピザ頼むけどアーサーも一緒にどう?」 「頼む。体が痛くて作る体力もないしな…」 「じゃあ適当に頼んでおくね」 「サンキュ」 ボサボサになった髪を抑えながら笑ったアーサー。 相当お疲れのご様子ですなぁ…。 アーサーは昨日一日運転手やってくれたんだもんね。 労わってあげないとなぁ 「ギルー、ピザ注文してくれた?」 「おう。多分もうすぐ来ると思うぜ」 「そっか」 ―ピンポーン 「来た来た!!」 お財布を片手に玄関に小走りでかけつけ扉を開くと、そこにはピザ屋の制服姿のトニーさんが居た。 「とっ、トニーさんんんん!?」 「ブエナース、お嬢さん!!ピザをお届けにきましたー」 「え、うそぉお!!トニーさんもしかしてこれバイト!?」 「せやでー。長い間休みもらってたから今日から頑張らんとなぁ」 「と、トニーさん…凄いよ!!昨日の今日で…本当にトニーさんって凄いよね!!私尊敬するよ!!」 「ん?そ、そうかなぁ〜。名前ちゃんが褒めてくれるなんて親分照れてまうわぁ」 頬を赤く染めてへにゃりと笑うトニーさんに胸がキュンと高鳴った。 この人ってば本当に凄いよ…疲れてるのは皆同じなのに…私なんて今さっき起きたばかりなのに… 「あ、トニーさんこれ良かったら飲んで。栄養ドリンク」 「おぉー!助かるわぁ〜!!これから朝までバイト入ってるさかい立ってられるか不安やってん〜!名前ちゃんのくれたやつ飲んだら頑張れるわぁ」 「トニーさぁああああん!!他に、他に私にできる事はぁああ!?」 「えっ!?なに!?ほなら親分大好きって言ってほしいなぁーなんて…」 「もうトニーさん大好きぃいいいい!!!」 「おひゃぁあああああ!!ぶほっ、ほやっ、名前ちゃっ、ぎょえぇえええええ!!!!あかん、やっぱあかんてぇええ!!うひょぉおおお!!!!俺もめっちゃ大好きやぁあああ!!」 「玄関先で何告白合戦してんだよ…アホだなお前ら」 「ちょっ、ギル!!俺めっちゃ今幸せぇええ!!もうこのまま死んでもえぇええ!!あ、やっぱ今の無し。せめてチューするまで死ねん」 「ギルもトニーさんを一緒に労おうよ。今日もバイトやってんだよ!?凄すぎるっしょ!?」 「テンション高ぇのがうぜー!!」 バイト中のトニーさんに心からエールを送りピザを受け取った。 本当にすげぇや、トニーさん… 「ピザ届いたのか?っていうかさっき玄関の方が騒がしかったんだが…」 「あ、うん。とっても働き者の素敵な青年が居てね…お姉さんちょっと感動しちゃったよ」 「なんだよそのテンションは…」 「いいからいいから。ピザ食べよう〜」 テレビを見ながらダラダラとピザを頬張る。 ピザも美味しいけどやっぱり手作り料理が食べたくなっちゃうよなぁー。 なんだかんだ言って自分の作った料理が一番だよね。 まぁお婆ちゃんの味には到底敵わないとおもうけど。 この二人は私の料理どう思ってんだろ… やっぱり二人のお母さんの料理には敵わないんだろうなぁ。 「ねぇ、二人は私の料理って好き?」 「なんだよ急に」 「いやぁ、やっぱり皆自分のお母さんの料理が一番美味しいとか思うんじゃない?アーサーのお母さんって料理上手だったの?」 「俺の母親はあんまり料理をする人じゃなかったからな…」 「あぁ、だからお前あんな料理しか作れねーんだな」 「んだよ、喧嘩売ってんのか?でも母親の作ってくれたローストビーフすっごく美味しかったな。昔から忙しくて家に居ない母親だったからたまにしか作ってくんなかったけど」 「へぇ〜。アーサーのお母さんも実業家だもんねぇ。ギルは?」 「俺は別に。まぁお前の料理も食えねー事ねぇし別にいいんじゃね?」 「なんすかそれは。素直に美味しいって言いなさい」 「あーこのピザ美味すぎるぜー」 「うわぁ、こいつおもいっきり殴り飛ばしてぇ」 ピザを食べ終えお腹も満腹。 うわー、あんなに寝たはずなのに眠くなってきたよ… このまま寝ちゃおうかなぁ…。 「おい、寝るならベッド行けよ」 「アーサー眠くないの?」 「体が痛くて今日は眠れそうにないな」 「マジすか。ちょっと私がマッサージしてやろう。ここ座りなさい」 「い、いいのかよ…?」 「いいのいいの。ほら、ここ来てー」 地べたをポンポンと叩いて指示するとおずおずと私に背を向けたアーサー。 かちこちにの肩を揉みほぐしてあげると「うあー」となんとも言えない気持ち良さそうな声を出した。 「痛くないですかー?」 「んー…ちょうどいい…」 「肩の他には?」 「後は腰と背中かな…ずっと運転してたから痛くてしかたないんだよな」 「よーし、そこに寝そべって重いと思うけど我慢してね?」 ごろんと寝転んでうつ伏せになるアーサーの腰の上に跨り背中を揉みほぐす。 「どうですかお客さん」 「…なんか色々とイイ」 「おいこら眉毛…テメェいい加減にしろよマジで…さっさと帰って寝ろよ」 「うるせーな。今いいとこなんだから邪魔すんなよ」 「あぁん?」 「喧嘩すんなよ」 その後もアーサーの足やら腕やらをマッサージしてあげると、本当に幸せそうな顔で笑っていた。 眉毛が垂れ下がってるぞ。 しまいにゃ気持ちよさで眠りにおちてしまったので今夜はうちに泊めてあげる事にした。 気持ち良さそうに寝てるのに起こすのかわいそうだしね。 「お前やけにこいつに甘いな」と怪しむような目をしたギルを適当にあしらってアーサーの体の上にタオルケットをかけてあげた。 まぁ、アーサーには…お世話になったわけだし。色々と。 少しぐらい労わってやっても罰は当たるまい。 お休みも明日で終わりだもんなぁ…。 私も明日で体の疲れを取って明後日からは頑張って仕事ができるようにしなくっちゃ!! . ←|→ |