ぞろぞろと海に入っていく奴らの背中を見送り相変わらず沈んでいるアーサーの頭をよしよしと撫でてやった。 しばらくこのまま休んでいようっと 「なんだよお前…あっち行ってあいつらと遊んでこればいいだろ…」 「いや…楽しく遊んでるとこ君に泣かれてちゃあ雰囲気ぶち壊しだからね…」 「くそ…あいつら俺の事馬鹿にしやがって…。なんだよなんだよ、小さい頃はあんんなに俺に懐いてたくせに…」 「アルフレッド君とマシュー君?まぁマシュー君はともかくアルフレッド君は相当アーサーの事邪険にしてるよねぇ…。ちょっと構いすぎなんじゃない?もう19歳って言ってもまだまだ子供なんだし…大人に構われたくないってのが本音だと思うよ」 「だからってあんな酷い言い方ねーだろ…」 「まぁ、そうだけど…」 面倒くさいやつめ…弟が可愛いのは分かるがそろそろ弟離れした方がいいと思いますよ。 「…」 「なんだギル、名前ちゃんの事気になるわけ〜?」 「なっ…んなわけねーだろアホ!!」 「まぁ確かにアーサーに女の子独り占めされるってのは癪だよなぁ…。お兄さんもその辺りのナイスバディーなお姉さんをナンパしようかなぁ。ギルも一緒にする?」 「するかよ。んな女よりエリザの胸見てる方が有意義だぜー!」 「まぁ確かにエリザちゃんのおっぱいは超Sランクの素晴らしさだけど肝心な物はでかさじゃないと思うんだよなぁ。そう、一番重要なのはその形!!」 「分かりますよフランシスさん。私も美乳派です」 「流石菊!!なぁなぁ、あの名前ちゃんが水着の上に羽織ってる上着、剥いでみたくなーい?」 「なになに、何の話〜?」 「名前さんの着ている上着を剥いてしまおうという企画です」 「どんな企画やね〜ん」 「はっ!なに言ってんだよあんなペチャパイの水着姿なんて見たくもないぜ!!ケセセセ!!」 「とか言いつつ見たいんだろ。どんだけ中二なんだよお前」 「いえいえ、ナイスですよギルベルトさん」 「誰が中二病だコラァアア!!」 アーサーの愚痴を聞いてそうこうしているあいだに太陽が真上に差し掛かる時間がやってきた。 朝ごはんもちゃんと食べてこなかったからお腹空いちゃったなぁ〜 「皆ーお昼ご飯食べる〜?」 「食べるぞ!!もうお腹ぺこぺこさっ!!」 「シー君はもっと泳いでるですよー」 「あ、じゃあ僕ピーターと一緒に遊んでおきます」 「そこの変態男部はどうすんの?」 「俺もご飯食べるー」 「お兄さんも〜」 「私も頂きます」 「あれ。ギルはどうしたの?」 「ギルはエリザちゃんにボコられて砂浜に埋まってんでー」 「ギルゥゥウウウーーーっ!!!!」 トニーさんが指差す方向に駆けつけると頭を砂浜に突っ込んでお尻を突き出している状態のギルらしきものが居た。 足を引っ張って引っこ抜くと、「死ぬかと思ったぜー!!」とギルが復活した。 …なんでもアリのギャグ漫画か、これは。 近くの海の家に入って安っぽい味のやきそばを食べる。 これも海ならではの特権だよねぇ〜。 「名前、これ食べ終わったら一緒に泳ごうよ。アーサーの相手ばっかじゃつまんないんだぞ」 「そうだね。私も浮き輪でも膨らませて遊ぼうかな」 「ローデリヒさん、私達は砂浜で砂のお城でも作りましょうか」 「いいですね」 「名前ちゃん俺とも遊んでや〜。親分も一緒に浮き輪でプカプカランデブーしたいでー」 「じゃあ皆さんご一緒に」 「お兄さんはビーチの素敵な女の子をナンパしに行っちゃおうかなぁ…」 「やめてくださいよ。砂浜に変態が出るなんて文句言われたらどうするんですか」 「…酷い…」 「ざまぁみろ髭。お前は砂浜に埋もれてろよ」 「泣き虫アーサーに言われたくない」 「んだとコラ」 「おい元ヤン。喧嘩するなら他所でやってよ」 「チッ…」 お昼ごはんを食べ終えて海へ繰り出すとピーター君とマシュー君がボートに乗って遊んでいた。 いいなぁボート。 「あれ〜?名前じゃない。ふふふ、こんなとこで会うなんてすっごく偶然だよねぇ」 「ん…?い、イヴァン…!?えっ、ちょっ、嘘ぉおお!?なんでここに!?」 「なんていうか、家族旅行?」 「って事は…」 「どきなさいメスブタ!!兄さんの裸体を見てもいいのは私だけよ!!」 「うええ〜!!おいてかないでよイヴァンちゃんナタちゃ〜ん!」 イヴァンさんご兄弟ご一行だ〜…。 こんなとこで会うなんて本当に偶然だよね…。 っていうかライナさん…それは犯則です…その胸は犯則です…。 「名前ちゃん!わぁ〜すっごい偶然だねぇ〜!!ふふふ、こんなとこで会えるなんてすっごく嬉しいな」 「私もとっても嬉しいです。あとその胸少しわけてください」 「えっ?わけてあげたいけどいったいどうすれば…」 「本気にしなくていいよ姉さん…」 癒されるよなぁここの兄弟は…。 私と話をしているイヴァン達の姿に気付いたのかこっちにわらわらとやってきた皆。 その視線はライナさんの胸へと釘付けにされた事も言うまでもない。 「胸…!!」 「ギル、見すぎ。自重しろお前」 「これはこれは…素敵なお胸をお持ちですね…。いやしかし私は名前さんのような貧乳派ですからね!!ムチムチもいいですが幼児体系萌えですからね!」 「聞いてませんよ」 「ライナちゃん久しぶりやんなぁ〜」 「うーん、やっぱり大きいなぁお姉さん…ハァハァ」 「気持ち悪いんだよお前…息遣いがここまで届くからやめろ!!」 「なんだよまた君かい…。まだ名前に付き纏ってるのかい?」 「相変わらずだねー皆。ところで名前はどうしてそんな暑そうな上着着てるの?」 「海パンにマフラー巻いてるイヴァンに言われちゃったよ!!これはその、貧相なものを皆様の目に入らないようにと…」 「そうなんだ。それじゃあ脱がしちゃっていいよね」 「はいいいいい!?」 「ナターリヤやっちゃえー」 「兄さんのためならなんなりと。ええい!!こんな邪魔な服剥ぎ取ってくれるわぁああああ!!」 「ぎゃぁあああ!!ちょっ、ナタちゃんやめっ、そんな引っ張ったら水着も取れるから!!ぎょえぇえええええ!!」 「ハンッ!!知ったこっちゃないわ!!兄さんの命令は絶対よ。兄さんに歯向かう奴は許さない…!!兄さんは絶対絶対絶対絶対…!!!」 「目がマジだよこの子!?」 ナターリヤちゃんの手により引き裂かれるかのように剥ぎ取られた上着は無残にもその威力で生地が伸びきってしまい砂浜に投げ捨てられた。 砂浜で可愛い女の子に馬乗りされて服を剥ぎ取られる私ってなんなんだろう… あぁ、視線が痛い… こんなことなら最初から潔く脱いでおくべきだった 「うん。水着可愛いね。すっごく似合ってると思うなぁ」 「ありがとうございますイヴァン様…」 「そんなに恥ずかしいなら僕のマフラー貸してあげようか?」 「いや、もうなんかいいっす…」 「ふふふ。遠慮しなくてもいいのにー」 人前で服を脱がされた恥ずかしさと周りの視線に居た堪れなくなった私はそっとギルの背中に隠れた。 いっそ泣きたい。 「イヴァンさんナターリヤさんグッジョブです。神ですかあなた方は。あと色々つっこませて頂きたいのですが、鼻血出てますよアーサーさんとアントーニョさん。それからフランシスさん露骨に前かがみなるのやめてくれません?」 「いやぁ、女の子同士が絡んでるの見てたらつい」 「お気持ちはよく分かります」 「あー、俺のこれトマトジュースやから気にせんといてー」 「余計気になりますよそれ!?」 「馬鹿、俺のはアレだよ…赤ワインだ」 「言い訳パターンが同じですね。いいからティッシュ使ってください」 何をのぼせているんだあの連中は…。 ギルの肩をポンポンと叩いて声をかけてみると、返事が返ってこなかった。 って、無視ですか。っていうかこいつなんか固まってないか…? 不思議に思いギルの顔を覗いているとほんのり頬を赤く染めたアルフレッド君が私の腕を引っ張って「ほら、海行くぞ海!!とにかくこんなとこに居ちゃいけないんだぞ!!」と海に連れ出した。 まぁあそこに居るよりは良いか… → ←|→ |