暑い。暑い夏が来た。

夏の休暇を利用してやってきた海水浴。
本田さんが知り合いから借りてくれたというこのボックスカー。
車体に初音ミ●というキャラクターの絵がぎっしり描かれたこの車を見たときは軽く眩暈がしたが車内に居ればあまり気になる事も無い。
他の車からの視線は痛いけど。


「名前ー!!トイレ!俺トイレ我慢できないんだぞぉおおお!!」

「我慢しようよアル…それに名前さんに言っても仕方ないだろう?」

「暑いわ〜。カークランドもっとクーラーきつくせぇやボケ」

「あぁん?テメェだけ外に放り出すぞカリエド死ね」

「むさ苦しい…。ちょっとアルフレッド、お兄さんに名前ちゃんの隣譲りなさい」

「やだよ!エリザベータに変わってもらえばいいじゃないか」

「嫌よ。さっきから名前の太ももが当たってて気持ちがいいんですもの」

「むしろエリザちゃんと名前ちゃんの間に挟まれたいなぁお兄さん」

「このお馬鹿さんが…」

「あ、次を左折みたいですよアーサーさん」

「ん。おいピーター、菊の膝の上にお菓子のカス落とすんじゃねーぞ」

「分かってますよいちいちうるさいオッサンですねぇ」

「おっさ…!」


大きな車とは言え、この人数は少し厳しいです…


「名前ー!シー君喉が渇いたですよ!」

「はいはーい。ギル、ジュース取ってあげて?」

「おぉ」

「あぁギルベルトさん、私にも何か飲み物を」

「ほらよ」

「ギルー俺もジュースちょうだいや〜」

「って、お前ら俺に頼むなよ!?自分でとれ!!」

「だってギルが一番クーラーボックスに近いんだもん」

「そうよ。連れてきてもらってるだけありがたいと思いなさいよねエロベルト」

「ぶふっ!!不憫だなぁギルベルトは!!」

「ちくしょぉおおお!!!」


そんなこんなで到着した海水浴場!!
荷物を持って車から下り、近くの海の家に入って各自水着に着替える事にしました。


「ふふふ、実は私もう服の下に水着着ちゃってるの」

「マジですか姐さん!!私も早く着替えないと…」

「ねぇ名前、私が手伝ってあげましょうか?」

「いいの?ありがとう。じゃあ後でビキニの紐結んでくれる?自分でやるとどうも解けそうで怖いんだよね〜」

「えぇ!ふふふ、女の子同士の特権よねぇ…」

「…何が?」


着ていた服を脱いでそのナイスなバディーをさらけ出したエリザに少々クラクラとしつつ私も水着に着替えた。
ちくしょう…やっぱり胸が…寂しいぜ…
まぁいいや。上着でも羽織っておけば目立たないだろう。


「じゃあパラソルでもレンタルしてその辺の浜辺を陣取っちゃおうか」

「えぇ。日焼け止めも塗らなきゃね」

「あぁ、すっかり忘れてた!!」

「紫外線はお肌の敵よ!!私達もあと数年すれば今の日焼けがシミになって…」

「ひゃぁあああ!!怖い!!怖いこと言わないでエリザ!!あと数年ってとこがリアルで怖い!!」

「ふふふ。冗談よ!ちゃんとケアしてれば大丈夫よね」


…エリザは私をからかうの好きだよね…。

海の家で日よけのパラソルと浮き輪やビーチボールなどを適当にレンタルして砂浜へと繰り出した。
男性陣はまだ来てないよね…
男の癖に何着替えに手間取ってんだか。


「これで良し!!風で倒れたりしないかな?

「大丈夫よ。じゃあ男性陣が来るまで日焼け止めでも塗っておきましょうか。塗りあいっこしましょ!」

「うん。じゃあエリザの背中塗ってあげるねー」

「ありがとう!」


エリザの白くて滑らかな肌に日焼け止めを…
って、うわああ…エリザの肌綺麗!!
いいなぁ、色も白いし柔らかくて滑らかだし…。
なんというか、今更劣等感感じちゃいます。


「塗れたよー」

「じゃあ次は私が名前の背中を塗ってあげるわ。後向いてー」

「ほいさー」

「うふふふ…名前の背中って小さくて可愛いわね」

「エリザの背中は白くてスベスベだったよ〜。いいなぁ、羨ましい」

「あら。名前の肌だってとっても綺麗よ?思わず抱きしめたくなっちゃうもん!」

「エリザ…冗談でも今の言葉男共の前で言っちゃダメだよ…」

「どうして?」

「私が睨まれる」

「あら」


エリザに背中に抱きつかれたりしたらそのダイナマイトなあれがムニッっと…。
うん、ギルあたりが「俺と代われぇええ!!」って発狂しそうだよねー。


「おーい名前ーっ!!」

「アルフレッド君!こっちだよー」

「うっわぁああ!!その水着すっごく可愛いじゃないかっ!!うわー!!うわぁああ!!」

「いや、びっくりしすぎだからね!!恥ずかしいからあんまこっち見るな!!」

「何言ってるんだい!!すっごく可愛いから素直に言ってるだけさ!うん、本当に可愛いぞ!」

「えーっと…ありがとう。あと眼鏡変えた方がいいと思うよ」

「あ、これ度入ってないから」

「えええ!?今更カミングアウト!?伊達なのそれ!?」

「レンズにはなんも仕掛けはないよ〜♪」

「…何その歌」

「ねぇアルフレッド。他の皆さんはまだ着替えているの?」

「多分もうすぐ来るよ。エリザベータもすっごい水着似合ってるぞ!!あと胸でかっ!!」

「もう少し八つ橋に包もうかアルフレッド君」


本当に直球だよなぁこの子は…。
そうこうしている内にやってきた男性メンバー。
あらまぁ皆顔赤くしちゃって純情だよねぇ…。
視線は言わずもがなエリザのダイナマイトなそれだ。
いや、気持ちはよく分かるよ。


「えっ、エリザベータ!!まっ、前を隠しなさい!!」

「え?なんですかローデリヒさん」

「ひゃぁああ!!何か着なさいと言っているのです!!お下品ですよ!!」

「そ、そうですか?分かりました」

「おいコラ坊ちゃん!!何余計な事してんだよ!?」

「ほんとほんと。せっかくのエリザちゃんのセクシーな姿を…。お兄さんさっきから下半身センサーびんびんなんだよ〜?」

「お馬鹿!!どうしてあなた達はそんなにお下品なんですかまったく!!」

「うひゃぁあ!!ぼふっちょっ、ひゃぁああ!!名前ちゃん水着かわええなぁ〜かわええな〜親分ハァハァしてまうわ〜ハァハァ」

「トニーさんんんんん!?誰かーっ!!トニーさんがフランシスさんに汚染されたーっ!!!」

「よし、俺が砂浜に埋めてきてやるよ。数時間もすれば潮が満ちる場所に」

「いや、うん。そんな爽やかな笑顔でグロテスクな事言うのやめてね」

「そ、そんな事より…お前その水着…その、似合ってる、よな?」

「なんで疑問系?」

「ハァハァかわええわぁ〜名前ちゃん…」


なんなんだろうこのカオスっぷりは。
マシュー君とピーター君は仲良く浮き輪膨らませてるし…。
あれ?そういえば本田さんの姿が見えないような…
どこに行ったんだろう。


「ねぇマシュー君。本田さんどこ行ったの?」

「え?さっきからそこに居ますよ〜。ほら」


マシュー君が指差した先。
砂浜に寝そべってビデオカメラをこちらに向けている本田さんの姿がそこにあった。


「何してんだじじい」

「いやぁ、やはり水着はローアングルに限ります」

「鼻血止めろ。カメラ海水にぶちこみますよ」

「これは失敬…。私はただ純粋に名前さんのきゃわゆい水着姿をカメラにおさめたいだけなんですからね!!っていうかなんですかその上着は!!出し惜しみですか!?焦らすなんてそんな究極のプレイどこで覚えてきたんですか貴方は!!そんな事でこの私が喜ぶと思ったら大間違いですからねぇええ!!ハァハァ…」

「さーてピーター君、お姉さんと一緒に海で泳ごうかー!!」

「はいですよーっ!!!」

「ふふふ。放置プレイktkr。コミケの初日を蹴ってまで来た甲斐がありました」


鼻にティッシュを詰めながら笑っている本田さんを無視してピーター君の手をとり海へと入る。
うわぁ、冷たいなぁー!!


「名前って泳げるですか?」

「うーん、あんまり得意じゃないけど一応泳げるよ」

「じゃあ名前が溺れたらシー君が助けてやるですよ!こう見えてもシー君は学校で一番泳ぎが上手いんですよ!エッヘン!」

「凄いねぇ〜。じゃあ私が溺れた時は助けてね」

「ふふふー。しょうがねーですね!」

「ありがとう」


ふふふ…ピーター君は可愛いなぁ…。
お姉さん癒されるわぁー…


「名前ー!!俺と泳ぎの競争しないかい!?」

「ダメですよ!!名前はシー君と一緒に遊ぶんです!!アーサーの弟は引っ込めですよ!」

「なんだと!!君だって弟じゃないかーっ!!それに俺は元弟なんだぞ!!」

「元弟でも弟には変わりないのですよ。嫉妬深いとこなんてアーサーそっくりなのですよ。プププッ」

「なんだとこのーっ!!君なんて眉毛がアーサーそっくりじゃないか!!」

「アーサーの野郎がシー君の真似っ子したんですよ!!」

「お前ら…そんなに俺に似るのは嫌なのか…」

「「うん」」

「そ、そうか…」

「ふ、二人とも〜!アーサーさんに失礼じゃないか!どんなに似るのが嫌でもアーサーさんは僕たちのお兄さんなんだよ?嫌でも一応お兄さんなんだからそんな事言っちゃダメだよ、どれほど嫌でも仕方が無いんだから!」

「…マシュー君…あんまりフォローになってないよ、それ…」

「え…?」

「俺…パラソルの下で引き篭もってくる…グスッ」

「アーサァアア!!」


この兄弟はまったくもぉおおお!!
直接血ぃつながってないのに似てるよこの弟達!!!
アーサー苛め楽しんでるとことかソックリじゃん!!


「はぁー…ったくもう…」


炎天下の中一人日陰で砂浜に”の”の字を書き始めているアーサーの隣に腰を降ろして肩をポンポンと叩いてあげると鼻を啜りながら膝の間に顔を埋めた。
居るよねぇ…皆が楽しんでる中一人泣いてる子って…


「名前ちゃん、そんなんほっといて海入ろうや〜」

「そんな眉毛放っておけってーの」

「ほんとにアーサーは昔っから泣き虫だよなぁ…。泣き虫アーティー」

「んだとコラァア!!ぐすっ、泣き虫なんかじゃねーよバカァ!!」

「涙拭きなって…。三人とも遊んできていいよ。私ここでアーサーと荷物見てるから」

「ほなら後でこっち来てな〜」

「了解でーす」

「本田もんなとこで這いつくばってねーで泳ごうぜ」

「そうですね、それでは私もご一緒に…」

「おいお坊ちゃんとエリザちゃん見ろよ。イチャついちゃってさぁ…。ちょっと邪魔しに行っちゃおうよ」

「じゃあ俺海に潜ってローデリヒの足引っ張ってやるぜ」

「じゃあお兄さんは水中であいつの海パン脱がしてやろうかなぁ」

「んじゃ俺はその海パンを浜辺に埋めたるわー」

「最悪だなこの悪友達」





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