「それじゃあお婆ちゃん、あんまり無理しないように元気で過ごしてね」

「お前も元気にやるんだよ。その4人の中なら誰を選んでも大丈夫だからね。報告待ってるよ〜」

「なんの報告だよ」

「皆も元気でね。またお婆ちゃんに元気な顔見せにきておくれよ」

「お世話になりました」

「美味しい煮物の作り方教えてくれておおきに〜」

「また絶対に遊びに来るんだぞ!!」


今日は実家からいつものマンションに帰る日。
名残惜しいさもあってなんとなく悲しい気分になってしまうのは毎度の事だけれど、今回は少し清々しい気分だ。


「プーちゃん、名前の事頼んだよ。お婆ちゃん応援してるからねぇ」

「うぇ!?なななな、何言って…!!」

「あの子押しに弱いタイプだからね。どんどん押して押して押し倒しちゃえばいいよ」

「お、押した…」

「何吹き込んでるのかなぁお婆様」


油断の隙も無い…。
皆でお婆ちゃんに別れを告げてタクシーに乗り込む。


「そういえばお爺ちゃんは?」

「さぁねぇ。畑じゃないかしら。相変わらずマイペースな爺さんだよ。今日の晩酌はお預けだね」

「じゃあお爺ちゃんにもよろしく言っておいてね。また休みの日に帰ってくるからって」

「えぇ。それじゃあ皆、元気でね」


男ばかりでむさ苦しいタクシーのドアが閉められ、手を振っているお婆ちゃんの姿がだんだんと遠くなっていった。
やっぱりちょっと寂しいなぁ…

来た時と同じ電車に乗り込みカタンコトンとそのリズミカルな揺れを体に感じていると、疲れもあってか皆はき側正しい寝息をたてて眠いっていた。


「ギルは眠くないの?」

「まぁな」

「皆はちょっと疲れちゃったのかなぁ。初めて来る場所だったしね」

「まぁ確かにあのキャラの濃い爺さん婆さんの相手は色々と疲れるよな」

「アーサー不憫だったよねぇ。近所のおばちゃん達のとこに連れて行かれちゃって。おばちゃん達の間でアーサーのファンクラブができたらしいよ」

「マジかよ!?」

「マジだよ」

「ありえねー…」


人の少ない車両の中。
窓の外を通り過ぎていく風景をぼーっと眺めていると、その懐かしい景色になんだか胸が切なくなった。


「はぁー…ダメだなぁ。たまに実家に帰るとホームシックになるっていうか…」

「ホームシック?」

「うん。たまに考えるんだよね。今はおじいちゃんもお婆ちゃんもまだまだ元気だからいいんだけど、もう二人も歳だし病気になったり怪我をしちゃう事だってあるじゃない?そんな時家に年老いた二人しか居なくて誰が助けて上げられるんだろうって。心配してたらだんだん不安になってくるんだよね…」


もし誰も助ける事ができなかったら、なんて考えるだけでも涙が出そうになる。


「大丈夫だろ、あの二人なら。お前が心配するほど柔じゃねーって。それにあんだけ近所のやつらが居んだから何かあったときは助けてくれんだろ」

「そうかなぁ…」

「お前がそんなに心配だっつーんなら田舎に戻って働くのもいいんじゃねぇ?」

「…その時は、ギルも一緒に来てくれる?」

「あぁ。爺さんに習ってでっけぇ芋畑作ってやるぜ」

「芋畑って…!!ぷふっ!!


そのなんともギルらしいその返答に、なんだかおかしくって声をあげて笑ってしまった。
笑うなとプスプス湯気を立てながら怒って私の頬を摘んだギルもなんだか楽しそうだった。
ギルが居てくれればどこに行っても楽しいはずだよね、きっと。

駅について疲れた体を引きずりながらマンションに帰った。
明日は海に行く日だよなぁ…。
朝早いしちゃんと起きられるか心配だ。
大人数だからってわざわざ本田さんが大型のワンボックスカーレンタルしてくれてんだよね。
感謝します、本田さん。


「さてと。明日も早いことだし今日はもう寝ますか!!」

「何時に起きればいいんだよ?」

「5時」

「はぁああ!?5時ぃいいい!?」

「移動に2時間はかかるからね。6時に出発して駅で皆を拾って行くんだよ。ちなみに運転はアーサーさんが担当してくれまーす」

「マジかよ!?あいつの運転不安すぎるぜ…」

「つべこべ言わず早く寝る!!」

「うぇ〜い」


海に行く支度は前々から準備していたから大丈夫!!
浮き輪なんかは現地で買えばいいよね。
そういえばピーター君も一緒に来るって言ってたけど、朝早いのに起きられるのかなぁ…。
ギルとアーサーと本田さんとトニーさんにフランシスさん、エリザとローデさんとアルフレッド君とマシュー君とピーター君。とっても大人数だけどこのメンバーならきっとすごく楽しくなるよね。
人前で水着を着るのはアレだけど…
うーん…まぁ、なんとかなるでしょう。
折角のお盆休み。
フルに遊んで楽しい思い出を作ろうじゃないか。


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