「名前、あんたそろそろお墓参り行った方がいいんじゃないの?」

「そうだね。今から準備して行ってくるよ」

「じゃあお父さんの好きなお饅頭出しておくね〜」

「ありがとう」


里帰り四日目。
庭先で水浴びをしている四人を眺めながらアイスを食べていると頭の上から祖母の声が降ってきた。


「皆ー。私お墓参りに行ってくるけど一緒に行く?」

「ちょっ、ちょっと待て!!着替えてくるから!!」

「アーサー、そんなに慌てるとまた転ぶよー」

「俺も行くわー。名前ちゃんのお父さんに挨拶せんとなぁ」

「俺も行くんだぞ!!」

「じゃあ皆で行こうか。タオル持ってきてあげるからそこの床の上濡らすんじゃねーぞー」

「「「はーい」」」


一度に四人の子供ができたみたいな気分だ。
一人に一枚ずつタオルを渡し、びしょ濡れの体で抱きつこうとするアルフレッド君の大きな体を拭いてあげるのにとても手間取った。

皆で一緒にお墓まで歩いていく。
今回もまたお父さんの大好きだったというお饅頭を持って行くと「そんなに好物だったんだな、その饅頭」とギルが笑った。
線香をたてて蝋燭に火をつけ、両手を合わせて目を閉じる。
お父さん、今回はこんなに沢山の友達を一緒に連れて帰って来ました。
って、お父さんは知ってたのかな。アーサーがお父さんと喋ったとかほざいてたんだけど嘘だよね?嘘だよね?
まぁとにかくこんな感じに毎日楽しくやってます。
ギルとも仲良くやってます。相変わらずのプー太郎だけど。
だからお父さんも安心してくださいな。


「よし、終わり!!」

「早いなお前…」

「うん。現状報告はしておいたから。ギルは今回やけに短いじゃん。前に来た時はブツブツ喋ってたのに」

「俺は一度挨拶に来てるし…。それに言わなくても霊とかって俺らの事分かってるもんじゃねーの?」

「さぁね。死んで見ないと分からないよ」

「そりゃそうだ」


前回のギルのようにブツブツ長々と手を合わせている三人を眺めながらお供え物に余った饅頭をギルと一緒に頬張った。
三人とも長いなぁ…。


「なぁ」

「何?」

「お前の母親ってさ」

「おっ。その話題ですか。言っとくけど私あんまりお母さんの事知らないよー」

「いや、そんなんじゃなくて…。お前の母親って生きてんだよな?」

「生きてると思うよ。多分」

「会ってみたいとか思わねーの?」


口元に饅頭のカスをつけたギルは少し言い辛そうに話した。


「まぁ小さい頃は思ってたよね。前にも言ったとおり今はどっちでもいいと思ってる」

「そんなもんかよ」

「そんなものだよ」


ギルがどうして急にお母さんの話を振ってきたのかはしらないけど、おそらくギルなりに何か考えている事があったのだろう。
私の父の墓を目前にして奴も色々と私の事を考えていてくれたんだろうなぁ。
気遣いとかそういうものは出来ない奴だけど、ちゃんと私の事も考えてくれてるんだよね。
なんだか嬉しくなってギルの頭をうりうり撫でてやると「暑苦しい!」と手を弾かれた。

その夜、里帰り時の恒例となりつつギルとお爺ちゃんの飲み比べが行われ、それに加えて今夜はアーサーやトニーさんまで酔っ払っていた。


「名前ー。一緒に二階でゲームしようよ。人生ゲーム」

「うーん、でもこいつらを放置するのもなぁ…」

「お、お義父さん…娘さんを俺に…」

「何柱に話しかけてんだいアーサー。気持ち悪いんだぞ」

「見えない友達見えない友達。放っておこうよ」

「お婆ちゃん〜。俺をこの家で一生面倒みたってください〜!!名前ちゃんの婿になりたいねん〜」

「あらぁ〜!!お婆ちゃんはいつだって大歓迎よぉ!トニーちゃんの作る料理すっごく美味しいし、こんなイケメンが孫婿なんて自慢できちゃうわー!」

「ほんまに〜?やったでー名前ちゃんー!!結婚ー!」

「うん、やっぱり二人で二階に上がってようか」

「あぁ!」


酔っ払いの相手ほど体力と労力を使うものは無い。
その日は結局アルフレッド君と人生ゲームをやっているうちにいつの間にか寝てしまっていた。
実家に居られるのも明日だけかぁ…。
明後日の昼には帰る予定だもんね。
お父さんのお墓参りにも行けたし…明日は地元の神社でお祭りと打ち上げ花火か…。
実家で過ごす最後の日、思いっきり堪能できるといいなぁ…。

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