太陽の光の眩しさに、薄っすらと目を開けると古びた茶色い天井が目に入った。

そうだ…私実家に帰ってきたんだっけ…。
昨日も初日にして随分疲労が溜まっちゃったもんなぁ。
一つ襖を挟んだ向こう側でむさ苦しく雑魚寝をしているであろう男共の方を覗きに行くと、案の定四人とも気持ち良さそうに寝息を立てていた。
って、ギル他の三人の下敷きにされてるし。

さてと。着替えて朝ごはんの用意でもするか…



「おはよーお婆ちゃん」

「あら〜もう起きてきたの?皆はまだ寝てるんでしょ?」

「うん。ぐっすりと」

「昨日はしゃいでたから疲れたのねぇ。朝ごはんの準備やっちゃうからあんたはテレビでも見てなさい」

「ういー」


ではお言葉に甘えてくつろがせていただこう。
畳に寝転がってテレビをつけると前に本田さんの言っていた美少女アニメがやっていた。
美少女達もセー○ームーンの時代から随分変わったものだ。


「おはようございます」

「あらアーサー君もう起きてきたの?顔洗って名前と一緒にテレビでも見てなさいな」

「ありがとうございます」


台所の方からまだ眠そうなアーサーの声が聞こえた。
まだ寝てればいいのに…。


「おはよう」

「おはよーアーサー。眠そうだね」

「あぁ、まぁ…な」

「目が虚ろなんですけど。朝ご飯できたら起こしてあげるからここに横になって寝てなさい」

「いや、それはダメだ。世話になってるのに働きもしないで寝てるなんて…」

「どちらにせよ今アーサーがお手伝いできるような事はないと思うよ」

「そうか…。じゃあ、お前の親父さんの仏壇…」

「あ。そっか。まだお父さんにアーサー達の事紹介してなったね。こっちに仏間があるからついてきてー」

「あぁ」


二日酔いなのか覚束ない足取りで私の後をついてくるアーサー。
大丈夫か、こいつ…。


「ここだよー。あの仏壇にお父さんも居るわけよ」

「そうか…。やっとちゃんとご挨拶できるな」


ぎこちなく両手を合わせたアーサーはそっと目を閉じてしばらく動かなくなった。
長いなぁ。神社じゃないんだからそんなに沢山喋っても何も願いは叶えてくれないぞ。
「先に戻ってるね」と一声かけて来た道を戻ってゆくと、庭先で蹲っているアルフレッド君をみつけた。


「何してるの?」

「お爺ちゃんと一緒に干からびた蛇の観察してるんだぞ!!」

「ぎゃああああ!!何やってんの!?」

「太郎、尻尾持て。山に捨てに行くぞ」

「えー気持ち悪いよ!!お爺ちゃんが持って行けばいいと思うぞ」

「ワシだって気持ち悪いもん」

「じゃあ名前、お願いするよ!!」

「山に行ってそのまま戻ってくるな馬鹿共」


っていうかいつの間に仲良くなってんのこの二人。
まぁアルフレッド君は人懐っこいからなぁ…。
そういえばトニーさんとギルはまだ寝てるのかな?
そろそろ起こしてあげないと朝ご飯の準備できちゃうよ。


「あ、名前ちゃんおはようさん!」

「トニーさん!もう起きてたんだね」

「今起きてきて朝ご飯運ぶん手伝ってんねん〜」

「偉いなぁトニーさんは…。ギルはまだ寝てるの?」

「あぁ。鼾かいて寝とったわ〜」

「しょうがないなぁあの子は…。私叩き起こしてくるよ」

「もう朝ご飯で来てるさかい早くなぁ〜」

「イエッサー」


ったく、世話のやけるやつだよあいつは。


「ギルー起きなさいー。朝ごはん食っちまうぞコラー」

「うっせぇな…頭いてぇんだよー…」

「アホだ。昨日あんだけ飲めば二日酔いにもなるよ。いいから降りてきて朝ごはん食べなさい」

「うえー…」


ぴょんぴょん跳ねるギルの寝癖を手櫛で整えてあげると、まだ眠いのか座ったまま前のめりになって布団に頭を突っ伏した。
ダメだこいつ。
もう放っておこう。


「ギルの分の朝ごはんいらないってさー」

「あら、プーちゃん体調不良?」

「ただの二日酔い。寝てれば直るでしょ」

「冷たい子だねぇアンタは…」

「それよりアーサーは?」

「姿が見えないけど…」

「まさかまだ仏壇の部屋に…」

「悪い、朝食に遅れたか?」

「アーサー…。今まで仏壇の部屋にいたの?」

「あぁ。お前の親父さんに色々挨拶したかったしな。親父さんって真面目だけど茶目っ気あってすっごい良い人なんだよな!お、お前の事よろしく頼むって頼まれたしさ…」

「……妄想?」

「ちげーよバカァ!!本当にお前の親父さんがっ…!!」

「はいはいいつもの幻覚の類ね。朝ごはん食べるよー」

「少しは信じろよ!!」


ったく、アーサーの幻覚にはいつも困っちゃうよなあ。

朝ご飯を済ませるなり網と虫かごを持ったアルフレッド君はお爺ちゃんと二人で「虫捕りに行ってくるんだぞ!!」と家を飛び出して、しっかり田舎の夏を満喫しているようだった。
さぁて、私は何をしよう。





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