「お婆ちゃんただいまーっ!!」

「あらぁ〜もう帰ってきたの!?てっきり夕方ぐらいだと思ってたよ〜」

「早く帰りたかったしねぇ。あ、これ電話で話してたギルベルトと愉快な仲間達」

「纏めんなよ!?」

「あらあらいらっしゃい。あら〜プーちゃん相変わらず男前だねぇ〜。」

「ったりめぇだろ!」

「他の子達も男前ねぇ〜。おばぁちゃんたぎっちゃうわぁ〜。あら、本田さんは来なかったの?」

「締め切りが近いんだってさ」


あらそうと微笑んだお婆ちゃんはとにかく中に入りなさいと私達の背中を押した。
ギル以外の3人は少し緊張しているのか、物珍しそうに周りを見渡している。


「何か飲むかい?」

「あ、ちょっと待って。先にこの三人紹介しておくね。この眉毛が太いのがアーサーでこっちの爽やか青年がアントーニョさん。私はトニーさんって呼んでる。で、こっちの金髪眼鏡君が普段から力有り余ってる元気な青年のアルフレッド君」

「大人数でおしかけてしまって申し訳ございません。これ、つまらないものですが…」

「あらあら〜。アーサー君は紳士なのねぇ」

「ぶふっ!!ちょっ、お前そのキャラウケる!!」

「笑っちゃあかんてギル〜。いや、でもほんまキモいなぁ。ププッ!」

「お前ら…後でぶっ殺す…!!!」


うん、確かにさっきのアーサーは面白かった。
でもアーサーと始めて会った時はあんな感じのキャラだったよなぁ…。
今思えば気持ち悪いぐらいの紳士っぷりだった気がする。ふふふ。


「じゃあ俺からはこのケーキのお土産なんだぞ!!赤くて綺麗で甘くてすっごく美味しいからこれ食べて糖分とってハッスルしてくれよなっ!!」

「ちょっ、先越すなやメタボ!!お婆ちゃん、これ俺からのお土産ですさかい〜。つまらんもんやけど受け取ったってください」

「あらあら、元気がいい上に優しい子達ねぇ。ちょっとあんた、いったいどの子が本命なの?選り取り見取りじゃないかい!!」

「本命ってお婆ちゃん…」

「イイ人連れてくるって言ったじゃないの〜。ねね、誰が本命?お婆ちゃんにだけ内緒で教えてよー」


耳元に手を当てて聞き入ってくる祖母に呆れてため息を吐きつつ祖母と同じように耳元に手を当てて真剣な顔をして聞き耳を立てている男4人に冷たい視線を送った。


「つまんない孫だねぇ」

「ほんとつまんないんだぞ!!俺のガールフレンドになってくれれば楽させてあげるのにー!プール付きの家に住まわせてあげるんだぞ!」

「あら、こちの坊やどこかのお金持ち?玉の輿だねぇ〜」

「そ、それだったら俺だって!!い、一応世界的にも名の高い会社でポスト社長として働いてるんだからな!」

「あっらぁあ〜!!」

「その社長は俺のダディーだけどね」

「あら、そうなの〜?」

「ハハハ…ごめんなぁ名前ちゃん…俺甲斐性無くて…アルバイト掛け持ちのただのフリーターやん…ごめんなぁ、名前ちゃん…」

「大丈夫だよトニーさん…。働かない・動かない・ただ飯ぐらいな上に我が侭し放題な奴に比べたらトニーさんは毎日バイト頑張ってるし偉いと思うよ。殆ど休みも無しに頑張ってるトニーさんかっこいいよ」

「名前ちゃんっ…!!」

「あー言葉の暴力痛すぎるぜー!!」

「面白い子達だねぇ本当に。まぁゆっくり休んでなさいな。お茶出しておくから好きに飲んでいいからね」

「ありがとうございます」

「サンキューお婆ちゃん!」

「おおきに〜」

「ふふふ。それじゃあ私は近所のトメさん家で長話でもしてくるわねぇ」

「うん。おばちゃんによろしく」


良かった。お婆ちゃんも皆の事気に入ってくれたみたいで。
そういえばお爺ちゃんはどこ行ったのかなぁ…。
まぁ夕方になれば戻ってくるか。


「なぁ名前〜。名前はこの家で育ったんだよな?」

「そうだよー。お婆ちゃんとお爺ちゃんの私の三人で」

「そっか!この家名前と同じ匂いがしてすっごく居心地いいんだぞ!」

「そっか。気に入ってもらえてよかった」

「って、なんでお前あいつの匂いとか知ってんだよ!?」

「トップシークレットさ!」

「ほんまお前ら兄弟むかつくなぁ。顔中を蚊に刺されればええのに〜」

「地味にこえーよそれ」

「この家で喧嘩したら問答無用で追い出されるからね。言っとくけどお婆ちゃんは私みたいに甘くないよ」

「お、お前見たく甘くないって…」

「名前ちゃんも充分怒ったら怖い思うんやけどなぁ…ハハハ」


なんてったってうちの祖母はあの本田さんでさえ黙らせてしまう人だ。
ある意味私の周りで一番最強な人物かもしれない。

その後、家の中を案内したり庭の畑に出てトマトの立派な成長ぶりを見たトニーさんが大はしゃぎしたり…。
土から這い出るミミズを見たアーサーが甲高い悲鳴をあげてその場に居る全員が爆笑したりととても楽しい時間を過ごした。


「ぷっはー!!すっごく楽しいなぁ田舎って!!俺ずっとここに居たいんだぞ!!」

「じゃあこの家の養子になる?婆ちゃん男の孫が欲しかったから喜ぶよ〜」

「えー。だったら名前の旦那さんとしてお婆ちゃんの孫になりたいんだぞ!!」

「何ほざいてるんやろなぁ〜このメタボは」

「お前ここで暮らしてずっと野菜くってりゃいいんじゃねぇ?スリムになれるぜ」

「ったく皮肉屋だなぁー君達は」

「アハハ。そろそろ夕方だね。お爺ちゃんも戻ってくると思うんだけど…」

「名前ちゃんのお爺ちゃんってどんな人なん?」

「すっげぇ酒強いぜ。この俺様と引き分けたぐらいだからな!」

「へぇ〜。お前結構酒強いもんなぁ。俺も一杯注がせていただきたいわぁ」

「喜ぶよ。きっと」


お爺ちゃん…ちゃんと皆の名前覚えてくれるといいけどなぁ…。
ギルはポチだったから…。次はタマとか太郎とかコロスケあたりかな。


「それじゃあ私夕飯の準備してくるから。テレビでも見ながらくつろいでてね」

「よしギルベルト!!一緒にメジャーを見るんだぞ!!吾郎吾郎!!」

「俺は寿也派だぜ」

「あ、俺夕飯の準備俺手伝うわ〜」

「ありがとートニーさん!」

「名前…お、俺も…」

「アーサーは来るな。お前は台所に入ってくんじゃねぇええええ!!」

「な、なんでだよバカァ!!」

「うちの爺ちゃん婆ちゃん殺す気か!?最低でもあと10年は生きて欲しいよ私は!!」

「誰があと10年の命じゃぁああ!!ワシやぁ100歳まで生きる男じゃぁああ!!」

「って…お爺ちゃん…。まだ生きて、じゃなくてもう帰ってきたんだ」

「今何を言おうとした孫よ。まだ生きて、の次を言ってみろ」

「やだなぁ。耳遠くなっちゃったの?」

「よし貴様、表へ出ろ。久しぶりにその皮肉れた根性叩きなおしてくれるわぁあああ!!」

「じーさんやれ!!男を見せてやれ!!」

「そこの野次飛ばしてる赤目のやつ、後で倉庫裏来い」

「HAHAHA!!死亡フラグだなギルベルト!!」


お爺ちゃんってば相変わらずだよなぁ…。
あと何年生きるつもりかは知らないけど元気すぎるのもどうかと思うよ。


「で、その黄色い頭の奴らはなんじゃ?」

「電話で話したでしょ。私の友達。皆都会育ちのもやしっこで田舎に来たいって言うから一緒に来たの」

「ほぉほぉ」

「始めまして。大人数でおしかけて申し訳ございません。アーサーカークランドと言います」

「タマ!!」

「タマ!?」

「俺はアルフレッド・F・ジョーンズなんだぞ!!」

「太郎!!」

「太郎!?」

「俺はアントーニョって言います〜。気軽にトニーって呼んだってください〜」

「大阪!!」

「大阪!?」

「うん、それぞれの呼び方が決まったみたいだね。大阪って代名詞はどうかと思うけど」

「ちなみに俺はポチだぜ」

「お、お前の爺さん…アレなのか?」

「ボケてないよ。昔からあんな感じ」

「誰がボケの禿げちゃびんじゃぁあああ!!」

「んな事言ってないでしょーが。てがどんだけ耳良いの爺ちゃん」

「大阪って呼び方なんや嬉しい気持ちになるんはなんでやろなぁ」

「まぁ皆ゆっくりしていけ。ポチ、一杯やるぞい」

「うっしゃ!!」


どこからか一升瓶を持って来たお爺ちゃんに目を輝かせるギル。
って、もう飲むのかよこいつらは…。
インパクトのあるお爺ちゃんにアーサーは少したじたじだ。
アルフレッド君とトニーさんは楽しんでるみたいだけど…。


「あらまぁ。もう始めてるのぉ?」

「お帰りーお婆ちゃん」

「あらあら、トニーちゃんも夕食の準備手伝ってくれてるの?」

「料理の事なら任せたってください!」

「トニーさんの作るご飯すっごく美味しいんだよ!!」

「あらそう!料理が上手なんてポイント高いわねぇ」

「…お婆ちゃん何メモ帳に書いてんの…?」

「せっかくだから皆が居る間どの子が一番孫婿として相応しいか見てみようと思ってねぇ。ちなみに私はプーちゃんが一番だと予想してんだけど、トメさんはアーサー君が一番なんだって。だけど今のところダントツトップはトニーちゃんねぇ。料理上手はポイント高いわよ〜」

「ほ、ほんまでっか!?よっしゃー!」

「喜ばなくていいからね!?てか孫とその友人使って賭けなんてしないでよ!?」

「今から隣の川平さん家に回覧板届けてくるから川平のおばさんにも聞いてくるよ」

「もうこんな人の孫なんて嫌だ…」

「子供は親を選べないのが定めってもんだよ〜。分かったなら私がが死ぬまで楽しませてちょうだいよ!ホホホ」

「ぜってー墓石に落書きしてやっからな」


あの爺ならこの婆さんだよ。
よくぞこんな家庭の中まともに育ったよなぁ私って…。
なんて呟くと「ちゃんと血受け継いでると思うけどなぁ」なんてトニーさんに呟かれた。
どういう意味だ。

夕食の用意を済ませ、居間に戻ってみるとそこはとってもカオスな空間でした。
酒に酔ったアーサーが服を脱ぎはじめ、そんなアーサーに冷ややかな目線を送りながら「こんなのが元兄だなんて考えたくもないよ」とブツブツ呟くアルフレッド君。
大量の空き瓶の転がる中一升瓶を片手に酒を飲み干す祖父とプー太郎。
このメンバーを一つの空間に居させた私が馬鹿だった。


「名前だ〜!!ヒック!!うへへへへ〜」

「酒くさっ!!ちょっ、アーサー…酒弱いんだから沢山飲むなってあれほど言ってるじゃん…」

「らってお前のじいさんが…。な、なんらよ…料理もできない上に酒も弱い俺は嫌らってのか?これでも頑張ってんだからな俺だってぇええ!!」


うざい。なにこのすっごくうざったい紳士。
てかどんだけ飲んでるの。泣き始めちゃったよこの子。なんかもう、こっちが泣きたいよ。


「うわぁ…めっちゃうざいなぁこいつ…」

「本当にこんなのが元兄貴だなんて考えたくも無いよ」

「お前も結構苦労してんねやなぁ…同情するわ」

「名前、これどこかに放り出してくれよ」

「はいはい。ほらアーサー、二階に布団敷いてあげるからこっちおいで。っていうか面倒くさいからお前寝てろ」

「馬鹿…二人で布団になだれ込むなんて…まだその時間には早ぇよ…」

「なに頬染めてうっとりしてんのこいつ。気持ち悪いんですけど…」

「ははは。庭に埋めてきたろか?」

「できれば二階まで運んでそのまま明日まで目覚めないようにしてあげて」

「よっしゃー来いカークランド。親分が寝かしつけたるさかいなぁ。永遠の眠りに」


トニーさんの目が怖い。
その後も酔ってどんちゃん騒ぎを始めるお爺ちゃんとギルの頭をスリッパで殴って黙らせた。
始終を眺めていたアルフレッド君が「やっぱり名前を怒らせる事だけはしたくないんだぞ…」と少し震えながら呟いていた気がするが気にしないでおく事にしよう。
里帰り一日目。
早くもこのメンバーを一緒に連れて帰ってきたことを後悔する羽目になってしまうとは…。
明日からの生活が憂鬱だ…。



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