「お、終わったー!!」

「ん。お疲れ」

「お疲れ様です名前さん!」


ばらばらになった書類をトントンと机に叩きつけてファイルに閉じる。
本日の仕事はこれにて終了!
明日からはお盆休みで一週間も仕事が休みになるんだよね。
休みの日の分の仕事をここ数日で終わらせないといけなかったもんだから相当頑張ったよ私。
外を見ればもう真っ暗で、時計を確認すると短針が9の少し手前を指していた。
一応ギルには遅くなるって言っておいたから大丈夫だよね…。


「あ、名前さん。マンションまで送っていきますから」

「大丈夫だって。まだ九時前だよ?平気平気」

「よかこどねぇ」

「スーさん…そんな怖い顔しなくても…。だけど二人とも明日朝早いんだよね?寝坊して飛行機に乗り遅れたりしたら大変じゃない」

「そんな事より名前さんが心配で夜眠れなくなっちゃいますよ!夏の夜って危ない人達も多いですし…。ね?スーさん」

「んだない」

「そういうわけですから。ちゃんと送らせてください」

「うーん…」


すっごく申し訳ないです…。
こんな時自分も男だったら良かったのになぁなんて思っちゃうよね。
帰り支度を済ませ、まだ残っている人達に声をかける。
ちなみにデンさんとノルさんの姿は無い。
明日からノルさんと一緒に別荘に行くらしいです。ノルさんはすっごく嫌そうな顔してたけど。


「ん…?あそこに停まってる車は…」

「どうしたんですか?」


会社の正面脇に停められた高級車。
私も何度も助手席に乗った事のあるその輝かしいボディー。そしてもじもじとしながらこちらを見ている眉毛。
おいアーサー、それじゃあ不審者だぞ。


「アーサー…何してんの」

「なっ…!お前の帰りが遅いから迎えに来てやったんだよ馬鹿!!」

「マジですか。わざわざすまないねぇ…」

「別に…。余計なオマケも一緒について来ちまったんだけどな…」

「おーい名前!!明日里帰りするんだって〜!?俺も一緒に行きたいんだぞ!!一度で良いから田舎で川遊びをしてみたかったんだよ!!」

「アルフレッド君…」

「げ、元気な方ですね…。どなたですか?」

「アーサーの弟」

「そっが」

「アーサーさんが迎えに来てくださったのなら安心ですね。僕たちも帰りましょうか、スーさん」

「んだな」

「それじゃあ名前さん、次に合えるのは17日ですからそれまで元気に過ごしてくださいね!」


そうか…。次に会えるのは10日後になっちゃうんだよねぇ。
二人にしばらく会えなくなるのはやっぱり寂しいな。


「スーさんティノ君、故郷に帰ってはしゃいで怪我とかしないでね!!あとスーさん、もし飛行機がハイジャックされても犯人と目合わせないでね!!なに睨んでんじゃいそこの兄ちゃんって目ぇつけられちゃうからね!!」

「どんな心配してんだよお前…」

「ハハハ…大丈夫ですよ名前さん」

「心配すっでね。おめぇこそ元気でなぃ」

「スーさぁああん!」


二人纏めて抱きしめるように飛びつくと、少し驚いた顔をされたが頬を緩ませて頭を撫でてくれた。
あーもう、少し会えなくなるだけなのになんなのこの辛さは!
二人に大きく手を振って別れ、アーサーの助手席に乗り込むと後部座席に居るふて腐れた表情を浮かべる小動物が目に入った。


「あれ、ギルもて来てたの?」

「アルフレッドに無理矢理連れてこられたんだっつーの」

「だってアーサーと二人で車に乗るなんて嫌じゃないかー。まぁ男三人でドライブもなかなか厳しい物があったけどな!だから早く君に会いたくてたまらなかったよー」

「あらそうですかー。それで、アルフレッド君も一緒に来るの?明日」

「あぁ!!いいだろう?」

「いいけど…マシュー君は?」

「マシューは今あのクマのぬいぐるみと一緒にカナダに行ってるんだぞ!なんでもメイプルシロップがなんとかって言ってたような…。色々説明されたけど覚えてないや」

「お前なぁ…。名前、迷惑だったら断ってもいいんだからな!!お前の祖父母にも迷惑になるし…」

「今更一人増えたぐらいで変わらないよ。若い子居た方がお婆ちゃんも喜ぶしね」

「やったー!!流石名前!!」

「ぶわっ!!おまっ、車の中狭いんだから暴れんじゃねーよデブ!!」

「なんだとギルベルト!!俺はデブじゃないんだぞ!!」

「喧嘩すんなよお前ら!」


はぁ…明日からこいつらと一緒に過ごさなきゃいけないのか…。
まぁ本田さんとフランシスさんが居ないだけまだましかなぁ。
あの変態二人が居ると本当に厄介だからね。
明日からお盆休み。里帰りに海へ行ったりと予定はぎっしりだもんなぁ…。
ちゃんと休めるのだろうか…。
でもまぁ、ギルと過ごす初めての夏だもんね。
きっと楽しいことが沢山待ち受けていてるに違いない。
今日は早く寝て明日に備えなくちゃね!




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