「はぁああ!?カリエドもお前の実家に行くだって!?」

「うん」

「いいじゃん。大勢の方が楽しいし」

「じゃ、じゃあ俺も…。ま、前々からお前の家族に挨拶したいと思ってたしな!」

「でもアーサー私のとこみたいに休み長くないよね?」

「そ、それは…権力を使えば何とかなるさ」

「そこまでして行きたいか、田舎に」


「ダメなのかよ?」としょんぼり俯くアーサーの頭に垂れたウサギの耳が見えた。
まぁ別にいいけど、と答えた時にピンと耳が立った気がする。
ちくしょう、可愛いやつめ。

久しぶりに仕事が早く終わったアーサーと駅で偶然出会って、近くの美味しいプリンのお店でお茶しないか言うからホイホイついてきたわけなんだけど、周りはOLや女子高生ばかりでいささか彼女達からの視線が視線が痛い。
これがギルと一緒ならなんとも思わないだろうけど、アーサーが相手だとなんとなく照れ臭い気分になるのは何故だろう。


「そうだ…海に行く約束してたよな?その、もし良ければでいいんだけどさ…ピーターも一緒に連れて行ってやってもいいか?」

「ピーター君?いいよ〜!ピーター君が居てくれた方がきっと楽しいと思うし!」

「そ、そうか!良かった。あいつ俺がお前らと海に行くって言ったら自分も行くって聞かなくてさぁ…。悪いけどエリザベータ達に伝えておいてくれないか」

「了解ー。それじゃあそろそろ帰ろうか」

「もう帰るのかよ」

「うん。そろそろ視線に耐えられなくなってきた」

「視線?」


アーサーって変なとこで鈍感だったりするよね。
そんなアーサーに帰り道、思い出したかのように「そういえばトニーさんとフランシスさんも一緒に海に行くってさ」と伝えると数秒固まった後ににっこり笑って「ならその前に俺が抹殺しておいてやるから安心しろよ」と清々しい笑顔で言われた。
月の光をバックに微笑むアーサーはとても恐ろしかった。


「ただいまー。ギルー、お土産にプリン買ってきたよー」

「プリン!!よこせよこせー!!」

「はいはい。ご飯が先ねー」

「ケチくさい事言うなよ。めちゃくちゃ腹減ってんだぜ!」

「空気でも食ってろよ」

「…ひでぇ」

キャンキャンと喚くギルは子犬のようだった。
どうしてこんなにも私の回りは小動物みたいな奴ばかりなんだ…!!
ティノ君も小さくて可愛いしなぁ…。
スーさんは…ありえない程でかいけど。


「そうだ、アーサーも一緒実家に帰る事になったから」

「…お・ま・えなぁああああ!!」

「何発狂してんのギルベルト氏。うざーい!」

「なんでお前はそうなんだよ!!昨日説教したとこだろーが!?」

「最近ギルって説教親父みたいになってるよねぇ。娘に嫌われるタイプだよ」

「んな事ねーぜ?俺は子供には優しい…って、そうじゃねぇえええ!!」

「もうすぐご飯できるから待っててねー」

「…ちくしょう!」


うん、なんとか誤魔化せた。
ギルがアーサーを嫌ってるのは火を見るより分かりやすい事だもんね。
だけど私にとってアーサーは大事な友達だし、お爺ちゃんとお婆ちゃんに紹介したいって前々から思ってたんだし。
それにあんな耳が垂れ下がったようなアーサーに断れというは無理があるってもんだぜ。
まぁ晩ご飯にビールを与えてプリンもあげればギルの機嫌も直るだろう。
単純な子で本当によかった。
案の定夕飯の席でビールとプリンを与えると上機嫌になったギルは「まぁ約束しちまったのは仕方がねーよなぁ〜!!」とゲラゲラ笑った。
なんと調子のいい奴なんだ。
ギルの鼻先をつまんで「バーカ」と言ってやると顔を赤く染めて「馬鹿って言うやつが馬鹿なんだよ」とそっぽをむいて言葉を返された。
お前は小学生か!


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