「いよいよ今週末からお盆休みですね〜!!やっと実家に帰る機会ができたんで僕すっごく嬉しいですよ〜」

「良かったね〜。花たまご君は一緒に連れて帰るの?」

「はい!!せっかくだから花たまごにも北欧の地を見てもらおうと思ってて…。今頃あっちは過ごしやすい季節ですしねぇ〜」

「んだな」


いつもは無表情なスーさんも今日は心なしか嬉しそうに口角をあげた。
うんうん、実家に帰られるのが嬉しいってのはどこの国の子も同じなんだよねぇ。
私もそろそろギルに里帰りの準備するように言っておかないとなぁ。
この間お婆ちゃんと電話で話した時に「プーちゃんの分のパジャマや歯ブラシこっちで用意してあるからねぇ〜。そうだ、プーちゃんの好物ってお芋さんで良かったのかい?帰ってきたときは沢山美味しいご飯食べさせてやらないとねぇ」なんて言われたんだけど…。
…なんかお婆ちゃん私よりギルのが帰ってくる方を楽しみにしていないか?




「だたいま〜」

「名前ちゃんお帰りーっ!!」

「トニーさん!?わぁ、来てたんだね。いらっしゃい」

「今日は休みやったから久しぶりに名前ちゃん家行こうと思っててなぁ〜。ついでにフランシスも一緒につれてきてん」

「おっかえり〜名前ちゃん。名前ちゃんの大好きなお兄さんが遊びに来てるよ〜」

「別に大好きとか思ってませんが。むしろ髭面の変態はこの世から居なくなればいいと常々思っています」

「…名前ちゃん怖い…」


玄関先に迎え出てくれたお馴染みの二人。
二人とも相変わらずだなぁ。


「名前ちゃんもうすぐお盆休みなんやろ?」

「そうだよー。8日間もお休みがあるから実家に帰る予定かな」

「なんやぁ…残念やわぁ。俺今年のお盆は珍しく休みもらってなぁ。せやから名前ちゃんと海でも行こうかな〜て思っててん…」

「海?海なら私も行くよー。エリザとギルと本田さんと…あとアルフレッド君とマシュー君とアーサーとローデリヒさん!!」

「な、なんやてぇえええええ!?そっ、そんなの酷い!!俺も一緒に行くぅうう!!」

「お兄さんも一緒にいっきたぁ〜い!!渚に輝く俺…うーん、かっこいいよなぁ…」

「いいですよー。エリザに了承を得ないとですけど。だったら結構大人数になっちゃうよなぁ…。大きい車をレンタルして行かないと…」

「よっしゃあぁあ!!めっちゃ楽しみや〜!!ちなみに予定日は?」

「確か14日だっと思います」

「よっしゃー休みや〜!!ほんま楽しみやんなぁ…」


トニーさんも一緒ならもっと楽しくなりそうだよね。
フランシスさんは…エリザの水着で発情しないように見張っておかないとな。
あれ?そういえばさっきからギルが静かなような気が…


「って、ギル寝てるし…」

「ああ、DVD見てる間にいつの間にか寝ててん。せっかくト●ロレンタルしてきたのになぁ」

「トニーさんトト●好きなんだね」

「あのぼへーっとした表情がたまらんわぁ〜」

「お兄さんは魔女の宅●便とか好きだなぁ。魔女っ子魔女っ子」

「えー私は耳を●ませばが…って、ネタで盛り上がってる場合じゃない…。晩ご飯の準備しないと。二人とも晩ご飯食べて行きますよね?」

「「もっちろーん」」

「最初っから食う気満々ですねあんたら」

「そんな事言わないで〜。お兄さんも手伝うからさ?」

「んー…じゃあお願いします」

「まかせて」


パチンとウインクを投げるフランシスさんに不覚にも心臓がドキりと動いた。
ちくしょう…顔だけは一級品だもんなぁこのフランス人は…!!


「なぁなぁ名前ちゃん、実家帰る時ってギルも一緒なん?」

「そうだよー。お婆ちゃんもギルが一緒に帰ってくるの楽しみにしてるみたい」

「ええなぁー。ほんま羨ましいわぁこいつ。頬っぺたつねったる!!」

「なんだったらトニーさんも一緒に来る?」

「…へ?」


ギルの頬を抓ったまましばらく固まったトニーさん。かと思えば目をキラキラと輝かせ小刻みに震えた。


「そ、それって…俺も名前ちゃんの実家にお邪魔してもええって事…!?」

「うん。家の祖父母賑やかなの大好きだしね。それに電話でイイ人居たら連れて帰ってきなさいよ〜って言われたんだよね」

「お婆ちゃんの言ってるイイ人って…あれじゃないのかなぁ…」

「ほんっまにええん!?俺が!?名前ちゃんの実家に…!?」

「もちろん!!」

「うひょぉおお!!ど、どないしよぉおお!!これって実家に挨拶しに行けるって事やんなぁ!?うわぁー!!つまらない物ですがって差し出すお菓子用意しておかな!!」

「ちょっ、そこまで用意しなくてもいいからね!?フランシスさんも一緒にどうです?」

「ん〜お兄さんは遠慮しておくよ。可愛い女の子達とデートの約束があるしね…」

「…フランシスさんってよくデートしてますけどお金持ってるんですか?っていうかマジでなんの仕事してるのか教えてくださいよ」

「んんん〜…禁則事項です☆」

「死ねよ」


口元に人差し指を当ててウインクをするフランシスさんに心の底から殺意が芽生えたのは言うまでも無い。


「ほら、ギルー。起きなさ〜い」

「んー…」

「しょうがないなぁ…。放っておいて私たちだけで食べちゃいましょうか」

「そうやなぁ。美味しそうなカレーやわぁ〜!!」

「お兄さんと名前ちゃんの愛の合作夏野菜カレーだよ〜」

「それじゃあいただきまーす!!」

「「いただきまーす!」」


フランシスさんに手伝ってもらって作ったカレーはいつもより美味しく感じた。
なんていうか、フランシスさんは魔法の手でも持っているんじゃないかと思うんだよね。
同じ作り方でもフランシスさんが作ることによって料理が美味しくなってる気がする。
今日のカレーだってこくがあってトロトロしててすっごく美味しいもんなぁ…。
こんな才能があるのにもったいない…。


「そういや名前ちゃんは水着とかもう買ったの?」

「はい。この間エリザ達と一緒に買いに行きましたから」

「うわー…名前ちゃんの水着めっちゃ楽しみやんなぁ…」

「あの、期待しなくていいからね!!残念なものしか見せられないからね!?」

「楽しみやんなぁ…」

「トニーさんんんん!?」

「大丈夫だよ名前ちゃん…菊風に言うと貧乳はステータス!」

「フォローになってねーよ」


うわぁ、やっぱり皆の前で水着姿になるの嫌だなぁ…。
上から上着でも羽織っておけばいいか。
エリザも一緒だからきっと注目浴びちゃうよねー…
…バスとアップ運動とか試してみようか…。いや、私だってそこまで落ちぶれちゃいないぜフフフフ…

食事を終え、トニーさんとフランシスさんが帰るのを見計らったように目を覚ましたギルは起きるなり「腹減った…」とお腹の虫を鳴らした。
ぐちゃぐちゃに混ぜたカレーをいっぱい積めて口をもごもごと動かすギルはハムスターみたいでちょっと可愛かったなぁ。
お風呂上りに思い出したように、「トニーさんも一緒に実家に帰ることになったからね」と伝えると数分間固まったまま動かなくなっていた。
その後どういった経緯でそうなったかなどと詳細を詳しく問いただされてちょっと鬱陶しかった。
「なんで誘ってんだよ!?」だとか「アホ!アホ女!!」と怒声を浴びせられたのでとりあえず力いっぱい足のすねを蹴り飛ばしてやると床を転がり回りながら痛みに耐えていた。
私の実家なんだから誰をつれて帰ろうが私の自由だ馬鹿野郎。
最近やたらとギルが私に対して過保護になってる気がするよなぁ…。
まぁ、お互い様なんだけどね。
それだけお互いを大切に思っているという事なのでしょうか…。
…うん、照れくさいけど嬉しいな。


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