「あ、わた飴!!私ちょっとわた飴買ってきますね」

「はい。私はここでギルベルトVSアルフレッドラウンド2の撮影を行っておりますので」

「あ、僕は名前さんと一緒に行きます!」

「アレ見てなくていいの?」

「うん…名前さん一人で行かせるのは危ないから…」

「ま、マシュー君っ…!!」


なんていい子なのっ…!!
こういう紳士的なとこはアーサーの影響かなぁ…。ふふふ、すっごく嬉しいや。


「よーし、お姉さんがマシュー君にわた飴を奢ってあげよう!アニメ柄の袋に入ってるねぇ。どれがいい?」

「え、いいよ!自分で買うから…」

「いいのいいの。この月光仮面みたいなのでいい?」

「名前さんそれ仮面ライダーだよ…。月光仮面っていつの時代!?」

「うふふ。じゃあ私はこの可愛い女の子が載ってるやつにしようかな。あれ、これと同じフィギュアを本田さん家で見たような…」

「プリキュアだー…」

「マシューくん詳しいね」

「え、うん…アルフレッドにいつも無理矢理見させられてるから…」

「好きだよねーあの子も。おじさーん、わた飴くださいなー」

「おう。好きなの持ってってね」

「ありがとうー」


ふふふ、わた飴好きなんだよねぇ。
小さい頃もお爺ちゃんに買ってもらったよなぁ…。


「そういえばさ、前から気になってたんだけどマシュー君ってたまにクマのぬいぐるみ抱いてるよね?あれって何かあるの?」

「え!?なっ、何もありませんよ!!やだなぁ名前さん…!」

「ふふふ、男の子がぬいぐるみなんて可愛いなぁと思ってね」

「アハハハハ…」

「でもあのクマのぬいぐるみすっごく可愛かったよね。また今度見せてくれる?」

「えーっと…は、はい。また今度連れて行きます…」

「うん!」


やけに焦ってるように見えるけど…何かあるのかなぁ。


「うわっ!?」


誰かと肩がぶつかり体がゆらりとバランスを崩す。
倒れる、そう思って目をぎゅっと瞑ってみるものの地面とキスをすることも無く尻餅をつく衝動も感じる事は無かった
って、あれ…?


「ごめん…ダイジョブだった…?」

「あ、はい、大丈夫で…って、ヘラクレスさん!!」

「ごめん、ぶつかった…。痛い場所アリマスカ?」

「わぁ…ぶつかったのヘラクレスさんだったんですね…」


腰に回された腕をぎゅっと引き寄せられ、トンと背中がヘラクレスさんの胸に当たった。


「大丈夫ですか名前さん?あ、こんばんは〜ヘラクレスさん」

「うん。二人でお出かけ?」

「ギルとアルフレッド君と本田さんもね。ヘラクレスさんはお一人ですか?」

「うん。大学の帰りに、ちょっと寄ってきた」

「そうですか〜。あ、良かったら一緒にその辺り見て回りませんか?ギルも喜ぶと思いますし」

「いいの?」

「勿論ですよ!あ、わた飴食べます?」

「うん。アリガトウゴザイマス」

「いえいえ」


ヘラクレスさんは相変わらずのほほんとしててこっちまで和んじゃうなぁ…。


「あ!!ヘラクレスじゃないかー!!どうしたんだいこんな所で」

「ちょっと寄ってみた。そしたら名前とぶつかって」

「ぶつかったって…転んだのかよお前?」

「ううん。ヘラクレスさんが支えてくれたから」

「それはそれは…!!そんな素敵なチャンスを撮り逃してしまうとは…私のバカ!!」

「…もう一回やる?」

「しなくていいですよ」


ギルとアルフレッド君の両手いっぱいに抱えられたぬいぐるみや玩具の山…
的屋のおじさんが隅っこの方で膝を抱えて泣いていた。
…ごめんなさい、おじさん。


「よーし!!次はヤキソバだぞ、ヤキソバ!!」

「ビールとかねーのかよ。ビールビール!!」

「はううう!!名前さっ、そのわた飴の袋はプリキュア…!!キュアパイン萌えぇえええ!!」

「OH!!菊はパイン派かい?俺はピーチが一番好きなんだぞ!!」

「俺は守備時範囲外だぜ」

「皆美少女好きなんだね…」

「俺は…名前の方が可愛いと思う…けど」

「ちょっ、ヘラクレスさんってば〜!!褒めても何も出ませんよっ!!」

「何も出なくても…可愛いと思う。ダメ?」

「えー…あ、ありがとうございます」


うわぁあ、真面目な顔で言われる照れずにはいられないよ…!!
ヘラクレスさんは冗談言ってるのか本気で言ってるのかわからないなぁ…


「もうなんだよヘラクレス!!名前を口説くのはやめてくれよ!!」

「ダメ?」

「ダメだよ!!名前は俺のだぞ!!」

「いつからお前のになったんだよ…!!」

「名前、浴衣すっごく可愛い…」

「ふふふ、モテモテですねぇ名前さん。良い、良いですよ!!グッジョブです名前さぁああん!!」

「はいはい分かったから。皆はぐれないようについてきてね〜」

「あれ?マシューが居ねぇじゃねーか」

「ぼ、僕はここに居ますよギルベルトさん…」

「うお!?いつから横に立ってたんだよお前!!ケセセセ、蔭薄すぎるぜーっ!!」

「うっ…」

「こら、そこのジャイアン。弱い物いじめすんな」

「ジャイアンじゃねーよ!!」


その後も辺りをぐるぐると回って、ヤキソバやたこ焼き、リンゴ飴に金魚すくいなどの出店を回っていった。
すくった金魚を持って帰るとダダをこねるギルをなんとか屋台から引き剥がして別の場所に移るまで30分も時間がかかってしまった。
ギルが騒ぐもんだからギャラリーができちゃってたよ…!!
恥ずかしいなぁもう…
家に帰って疲れきった体をソファーの上に預けた。
ううう…疲れたー…


「浴衣ぐらい脱げよ」

「無理…疲れたー」

「ったく…。って、おおおおおいお前!!前!!前はだけてっ!!あと足!!足見えてる!!」

「いいよーもう…お風呂入って寝るだけだし…」

「だからってお前…」


顔を真っ赤に染めたギルが恐る恐る私の横にしゃがみ込んだ。
何だ、なにか用かこの坊ちゃん。
ギルの腕が伸びたかと思うと、肌蹴ていた胸元の衿をきゅっと閉じるように塞いでいった。
お次に足元も。


「何してんの」

「いや、アレだぜ?お前なんかの乱れた姿見ても不愉快だから、であって…」

「あぁそうですかー。ほんとお前いっぺん死んでこい」

「あ、あんまり男の前でそんな格好すんじゃねーぞ…」

「いや、私だって本田さんやアーサーの前だったら自重しますよ。ギルだしいいじゃーん、みたいな?」

「何なんだよそれ!!ったく…」


赤く染まったギルの頬っぺたをふにふに触ってやると「いー」とう唸って嬉しそうに笑った。
ちくしょう、可愛いな…。

お風呂に入って汗を流し、今日買ったわた飴を食べていると玄関のチャイムが鳴った。
こんな時間にだれだとうと不審に思いながらも出てみると、汗をダラダラかいて息を乱したアーサーの姿があった。
なんだ、またクーラーが壊れたのか?
なんて聞く暇もなく、私の姿を見たアーサーは「ああ…間に合わなかった…ちくょおおお!!」と地面に膝をついた。
…なるほど、一緒にお祭り行きたかったんだね…。
アーサーの肩を叩いて「また今度お祭りがある時は一緒に行こうね」と慰めてやると、「そ、その時は浴衣着てこいよな…。べ、別にお前の浴衣が見たいとかそんなんじゃ(以下略)」といつものようなツンを見せてくれた。
その後もあーだこうだとブツブツ何かを呟いているアーサーを無視してリビングに戻り、お風呂上りにパンツ一丁でビールを一気飲みしているギルの横に座った。
疲れきった体をギルの肩に預けて目を閉じれば数分もしないうちに意識が遠のいて行った。

遠くでアーサーとギルが何かを言い合いしてる声が聞こえたけど…。
まぁいいか。


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