「ギルー、アルフレッドくーんマシューくーん。着付けしてあげるからこっちおいで〜」 「おー」 「OK!!」 「ふぁ〜い」 今日は近くの神社でお祭りがあります。 そんなわけで皆で浴衣を着て行こうって事になったんだけど… 男三人の着付けをするのは面倒くさいなぁ…。 まぁ女物に比べたら簡単だとは思うけど。 「よし、それじゃあ三人ともまずは服を脱ぎなさい」 「ちょっ、服ぅ!?」 「OKOKアイアイサーッ!!」 「ちょっとアル〜!!潔く脱ぎすぎだよ…」 「恥ずかしがってないで二人も脱いじゃってねー。パンツだけになってね」 「俺はもうなったんだぞー!!」 「よーし、それじゃあアルフレッド君から着付けしちゃうよー!」 「イエーイ!!」 もじもじと服をぬぐギルとマシュー君を横目にアルフレッド君持参のサイズの大きな浴衣を彼の肩にかけた。 ったく、ギルの奴普段は平気で上半身裸でその辺ウロウロしてるくせに… 「名前は自分で着られるのかい?」 「うん。だけど久しぶりだしちゃんとできるかなぁ…。女の人の着物は複雑だからちょっと不安かも」 「その時は俺が手伝ってやるんだぞ!!」 「自分の浴衣も着れない子が何言ってんのー」 「ぶー」 「はーい帯締めるからバンザイしてねー」 「バンザーイ!って、うおぉお…!?ななな何してるんだい君!!」 「はいはい、ちょっと我慢しててね」 アルフレッド君の体を前から抱きしめるようにして背中に帯を回す。 アルフレッド君の胸元に当たった耳からドクンドクンと速く脈打つ心臓の音が聞こえた。 以外と純情なんだよなぁ、この子って。 「はいできた!!着崩れないようにしてね。暴れちゃダメだよ」 「う、うん」 「冷凍庫にアイスがあるから食べてきていいよー」 「わっ、分かったんだぞ!!」 「それじゃあ次マシュー君ね」 「は、はい!お願いします…」 マシュー君の着付けを手早く終わらせ、続いてギルの着付けも手早く終わらせる。 うん、久しぶりだったけどちゃんとできたよね。 後で本田さんに見てもらうか… 「それじゃあ私も着替えるからリビングで待っててね」 「おう」 「あぁ、あとアーサーは遅くなるから来られないんだってさ。今さっき電話がかかってきてすんごい落ち込んだ声で言ってた」 「マジかよ。よっしゃー!」 「イエーイ!口煩い奴が居ないぞー!」 ちょっとアーサーが可愛そうに思えてしまった。 よし、私も着替えるか! クローゼットの奥に閉まってあった浴衣を取り出して皺のつかないように綺麗に広げてゆく 紺色に赤と黄色の朝顔の柄が入っているなんともシンプルな浴衣だ。 確か私が高校1年の時にお婆ちゃんが縫ってくれたんだよねぇ… 私のお気に入りの浴衣なんだよね、これ。 「えーっと、前板を入れてっと…」 ここまでは自分でもできるんだけど、やっぱり帯って自分ではなかなか綺麗に結べないよね…。 うーん、やっぱり形が崩れちゃうなぁ… よし、本田さんにお願いしよう!! 「ギルー!本田さんもう来てるー?」 「おぉー」 「私に何か御用ですか?」 「あ、すみません本田さん。帯が上手く結べなくて…」 「あぁ、そういう事でしたらお任せください。中に入ってもよろしいですか?」 「はい、もう帯結ぶだけなんで」 「分かりました」 赤い帯を本田さんに手渡しすると、手馴れたように「失礼しますね」と言って私の腰に腕を回した。 ぐるぐると胸下あたりに回された帯は背中で可愛いリボンの形を作られ着崩れしない程度にしっかりと締められた。 「わぁ、可愛い!ありがとうございます本田さん!」 「いえいえ。ついでですから髪も結ってさしあげましょう」 「マジですか。何から何まですみません…」 「いえいえ、役得ですよ」 ふふふと楽しそうに笑った本田さんは私の髪を持ち上げてコームで結い上げて行く。 なんだか手馴れてるよなぁ、本田さん。 「出来ましたよ」 「うわぁ、凄ーい…。って、あれ?見覚えの無い髪飾りのようなものがついていますが…」 「私からのプレゼントです。と、言っても家にあったものなんですけどね」 「いいんですか?」 「良いのですよ。名前さんに使っていただきたいのです」 「はぁ…。でも女物の髪飾りなんて…もしかして本田さん、昔誰かにプレゼントしようとしてそのまま渡せなかったやつとか言わないでくださいよー?」 「ふふふ。どうでしょうねぇ…」 「ちょっ、嘘でしょ!?本田さんにそんな相手居たんですか!?」 「長い人生、色々な事がありましたからねぇ…。ふふふ、お似合いですよ名前さん」 ちくしょう、またはぐらかされた…。 本当に本田さんの歴史は謎だらけで一生かかってもその真実を知る事は出来なさそうだ。 「三人ともー、準備できたよ〜」 「うわぁああ!!うわぁあああ!!なんだい名前、その格好すっごく可愛いぞ!!!」 「褒めても何も出ないよー」 「も〜またそうやって…」 「名前さんみたいな人大和撫子って言うのかなぁ。すっごく似合ってるね」 「ばっ、こんな奴が大和撫子!?大和撫子は男の体に馬乗りになって顔面殴りつけたりしねーぜ!!」 「よしギル、あっちで話があるからちょっとおいで」 「嘘嘘!!ま、眩しすぎて目もあてられないぜー!!」 「わざとらしいんだよアホが。さっさと行くよー」 「ったく…ダメですねぇギルベルトさん…」 「うるせぇ!!」 涼しい風が吹く夕方の道をカラコロと下駄の音を鳴らせて歩いて行く。 この感じ、久しぶりだなぁ… 「見えてきた!あの神社かい?」 「そうだよ。沢山お店出てるねー」 「名前!!射的やろうぜ射的!!」 「一回だけだよー」 「よーしギルベルト、俺と競争だぞ!!」 「銃の腕で俺様に挑もうとは100億万年早いぜ!!」 早速楽しんでるよこの子達は…。 しかし人が多いなぁ。逸れないようにしておかないと… 「名前!!ぬいぐるみ取ってあげたぞ!!プレゼントさ!」 「わぁ、アルフレッド君上手なんだね。すっごく可愛いよこのウサギ…!!」 「気に入ってくれたかい?」 「もちろん!!ギルはなにも取れなかったの?」 「違う違う、俺がダメなんじゃなくてあの銃がおかしいんだぜ!?ぜってー曲がってやがる!!」 「ぷぷっ。負け惜しみはみっともないぞ!」 「ざけんなメタボ!」 「NO!!俺はメタボじゃないぞ!!」 「喧嘩しない」 「ふふふ、まるでお母さんのようですねぇ名前さん」 「そういう本田さんは何カメラ回してんですか…」 「ふふふ、メモリーッ!!!」 「…」 できればマシュー君と二人で出店を見て回りたい。 「あ、わた飴!!私ちょっとわた飴買ってきますね」 「はい。私はここでギルベルトVSアルフレッドラウンド2の撮影を行っておりますので」 「あ、僕は名前さんと一緒に行きます!」 「アレ見てなくていいの?」 「うん…名前さん一人で行かせるのは危ないから…」 「ま、マシュー君っ…!!」 なんていい子なのっ…!! こういう紳士的なとこはアーサーの影響かなぁ…。ふふふ、すっごく嬉しいや。 「よーし、お姉さんがマシュー君にわた飴を奢ってあげよう!アニメ柄の袋に入ってるねぇ。どれがいい?」 「え、いいよ!自分で買うから…」 「いいのいいの。この月光仮面みたいなのでいい?」 「名前さんそれ仮面ライダーだよ…。月光仮面っていつの時代!?」 「うふふ。じゃあ私はこの可愛い女の子が載ってるやつにしようかな。あれ、これと同じフィギュアを本田さん家で見たような…」 「プリキュアだー…」 「マシューくん詳しいね」 「え、うん…アルフレッドにいつも無理矢理見させられてるから…」 「好きだよねーあの子も。おじさーん、わた飴くださいなー」 「おう。好きなの持ってってね」 「ありがとうー」 ふふふ、わた飴好きなんだよねぇ。 小さい頃もお爺ちゃんに買ってもらったよなぁ…。 「そういえばさ、前から気になってたんだけどマシュー君ってたまにクマのぬいぐるみ抱いてるよね?あれって何かあるの?」 「え!?なっ、何もありませんよ!!やだなぁ名前さん…!」 「ふふふ、男の子がぬいぐるみなんて可愛いなぁと思ってね」 「アハハハハ…」 「でもあのクマのぬいぐるみすっごく可愛かったよね。また今度見せてくれる?」 「えーっと…は、はい。また今度連れて行きます…」 「うん!」 やけに焦ってるように見えるけど…何かあるのかなぁ。 「うわっ!?」 誰かと肩がぶつかり体がゆらりとバランスを崩す。 倒れる、そう思って目をぎゅっと瞑ってみるものの地面とキスをすることも無く尻餅をつく衝動も感じる事は無かった って、あれ…? 「ごめん…ダイジョブだった…?」 「あ、はい、大丈夫で…って、ヘラクレスさん!!」 「ごめん、ぶつかった…。痛い場所アリマスカ?」 「わぁ…ぶつかったのヘラクレスさんだったんですね…」 腰に回された腕をぎゅっと引き寄せられ、トンと背中がヘラクレスさんの胸に当たった。 「大丈夫ですか名前さん?あ、こんばんは〜ヘラクレスさん」 「うん。二人でお出かけ?」 「ギルとアルフレッド君と本田さんもね。ヘラクレスさんはお一人ですか?」 「うん。大学の帰りに、ちょっと寄ってきた」 「そうですか〜。あ、良かったら一緒にその辺り見て回りませんか?ギルも喜ぶと思いますし」 「いいの?」 「勿論ですよ!あ、わた飴食べます?」 「うん。アリガトウゴザイマス」 「いえいえ」 ヘラクレスさんは相変わらずのほほんとしててこっちまで和んじゃうなぁ…。 「あ!!ヘラクレスじゃないかー!!どうしたんだいこんな所で」 「ちょっと寄ってみた。そしたら名前とぶつかって」 「ぶつかったって…転んだのかよお前?」 「ううん。ヘラクレスさんが支えてくれたから」 「それはそれは…!!そんな素敵なチャンスを撮り逃してしまうとは…私のバカ!!」 「…もう一回やる?」 「しなくていいですよ」 ←|→ |