「さあ食え!!思う存分食うがいい!!」

「何キャラだよお前は!!」


目の前に並んだ料理の数々と私の顔を見比べたアーサーは少し顔色を悪くして小さくため息をついた。


「ちゃんと食べないからダメなんだよ。夏バテ解消には食べるのが一番だよ?」

「だけどこれは多すぎだろ…。しかも中華って…」

「あいやー、なんか文句あるあるか?名前の知り合いだからサービスしてやってんのにむかつく奴あへん」

「つか誰だよこいつ!?なんで当たり前のように同席してんだよ!?あへんってなんだよバカ!!」

「すみません王耀さん、この子しょうがない奴でして〜」

「礼儀を知らないガキは困るあるよ」

「名前、俺の作ったギョーザ食べるんだぜ!!」

「あ、うん。ありがとうヨンス君」

「NO。それユーじゃなくてミーがメイキングしたギョーザ…」

「細かい事は気にしないんだぜ!!」

「何なんだよこいつら…!!落ち着いて食えねーだろ!!」

「アーサー煩いよ。食事は静かに食べようね」


このお店の皆は相変わらずだなぁ。
ヨンス君は今夏休みなんだよね。
湾ちゃんは確か専門学生とか言ってたよなぁ…。
今居ないって事は学校はまだお休みじゃないのかな。


「王耀さん、お店出なくてもいいんですか?」

「いいあるよ。今日はお昼休みにしてるあるから」

「いんですか、私たち」

「特別あるよ。おめー上客連れてきてくれたあるからな」


上客って…。あぁ、デンさんとノルさんか。
前に連れてきた時バカみたいに食べてたもんなぁ…。それにお金に糸目をつけないからなぁ、あの人たち。


「アーサー、ちゃんと食べてる?美味しいでしょ?」

「あぁ。ま、まぁ不味くはないな」

「ムキーッ!!なんあるかこの眉毛むかつくある!!おめぇに食わせる料理はねーあへん!」

「んだと…!?こんな店こっちから願い下げだ!!」

「喧嘩しないでくださいよ二人とも。王耀さんも大人気ないですよ」

「大人気って、こいつ俺より年下だろ!?」

「ううん。王耀さんは年齢不詳の仙人だよ」

「はぁああ!?」

「中国4000年の歴史を知り尽くした男あるよ」

「兄貴の起源は俺なんだぜ!!」

「黙れあるヨンス!!」


相変わらず賑やかだなぁ、このお店は。


「わーんやおさぁ〜ん!!仕入れ行ってきましたよー!」

「あぁ、ご苦労ある。冷蔵庫入れておけある」

「はーい!あ、お客さんですか?いらっしゃいませ」

「あ、お邪魔してまーす…」


誰だろう、始めてみかける人だなぁ。
すっごく誠実そうな青年だ。


「バイトの方ですか?」

「そうある。何かの研究だかよくわかんねー事してるからあんまり来ないバイトあるよ」

「へぇ〜」

「あははは…。ずっと研究を続けてるとお金が無くなっちゃってー。王耀さんの所でちょくちょく働かせてもらってるんです。あ、僕は泰って言います!」

「タイ、さん?」

「気軽に呼んでくださいねー。じゃあ僕はこれで!」


気さくで大らかな人だなぁ。


「ご馳走様」

「ん、ちゃんと食べたね。今夜はちゃんこ鍋だからね!!そっちもちゃんと食べるんだよ」

「夏バテなんてなさけねーあるな。うちのお茶飲むあるか?夏バテなんてもんぶっ飛んじまうあるよ」

「遠慮しておく」

「むかつくある!」

「まぁまぁ…」

「名前ー!俺の作った杏仁豆腐も食べるんだぜ!!」

「NO。それも俺がメイキングしたやつ…」

「細かい事は気にしないんだぜ!!マンセェエエ!!」



―――



「なんだよこれ…」

「何って…ちゃんこ鍋」

「暑い!!暑苦しい!!ほんとお前バカだろ!?このクソ暑い日にちゃんと鍋とかマジでやばすぎるぜ!!」

「うるさいなぁギルは。アーサーの為なんだから我慢しなさい」

「眉毛の為って…。お、お前今日の昼もあいつと飯食いに行ってたんだろ…?」

「うん。ちゃんとお土産買ってきてあげたでしょ?シナティーちゃんマスコット」

「なんだよこの猫…すんげぇ気持ち悪いぜ」

「そんな事言うとシナティさんにフルボッコにされるよ。怒るとすっごく怖いから、シナティーさん」

「実在すんのかよシナティー!?」


出来上がったちゃんこ鍋を机の真ん中に置いて食器を運んでいると、タイミングよくアーサーがやって来た。
机の上に置かれているぐつぐつと煮立った鍋をみてアーサーの太い眉毛がぐぐっと寄せられたのは言うまでも無い。


「はいアーサー、沢山食べてね」

「うっ…食えねーよ、こんな…」

「私の作った料理が食べられないって言うの?」

「ち、ちげーよバカァ!!食欲ねーし…」

「それがダメなんだって言ってるでしょーが。ほら、口開けて。無理矢理にでも食べさせてやるから」

「そ、それってお前…!!ばばば、バカァ!!なっ何考えて…!!」

「ほら、あーんして、あーん」

「ちょぉコラァアア!!何やってんだよお前!?それはダメだぜそれはぁああ!!」

「煩いギル。アーサー口開けろ。じゃないと無理矢理にでも食べさせるよ?」

「わ、分かったか…うっ…あー…」

「はい、あーん」


顔を真っ赤にして小さく口を開けるアーサーの口の中にお肉を入れてあげると、更に顔を赤くさせて視線を泳がし口をもごもごと動かした。


「は、ハハハハ!!まぁあーんぐらい俺だって常習犯だぜ!?あーんぐらいでそんな、」

「何言ってんのギル…。ちゃんとご飯食べなさい」

「じゃあ俺もお前が食べさせろよ!!」

「なんでそんな親鳥みたいな事しなきゃいけないの。自分で食え、バカ」

「…ちくしょー!!」

「はいアーサー、もっかい口開けて」

「う、え…!?あ、あぁ…」

「はい、あーん」

「うっ…ちくしょう!!」


その後も次々とアーサーの口の中に野菜やお肉を詰め込んで行き、充分なぐらいちゃんこ鍋を食べさせることに成功した。
うん、これだけちゃんと食べてれば体力も戻ってくるはずだよね。
あとは今朝作っておいたリンゴ酢を飲ませて…。
私も夏バテにならないようにお酢でも飲んでおこうかな。
始終真っ赤な顔をしていたアーサーは「こ、今度は俺が食べさせてやるからな…バカァアア!!」と言って言い逃げして帰った。
もしかしてさっきのはデレの部分だったのでは…?
リビングに戻ると部屋の隅っこでギルがあからさまに拗ねていた。
なんだこの小学生は。
ったく…。しょうがない。
頭でも撫でておけば機嫌も元に戻るだろう。
本当にアーサーと言いギルと言い世話の焼ける子ばかりだなぁ…


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