「おっ。どうしたのーピヨちゃん?」

「ピィ」


会社から帰宅して洗濯物を畳んでいるとピヨちゃんが膝の上に乗ってきた。
尋ねるように首を傾げると真似をするようにピヨちゃんも首を傾けた。
可愛いなぁ。


「ピヨちゃん暑そうだねぇ。水浴びでもする?」

「ピヨっ」

「じゃあちょっと待っててねー」

「俺も水浴びしてぇ」

「シャワーでも浴びてくれば」

「…ちくしよう」


洗面器に薄く水をはってピヨちゃんを中に入れてあげると、羽をバタバタさせて水浴びを楽しんでいるようだった。


「ピヨちゃん羨ましいぜ…」

「ピィ」

「私晩ご飯の用意してくるから後頼むね〜。ちゃんと拭いてあげるんだよ」

「晩飯なに?」

「飯冷やし中華だぜー」

「……手抜き」

「あぁん?何か言いましたかギルベルトさん」

「なななな、何も言ってねーよ!?冷やし中華かー楽しみだぜ!!」


手抜きじゃない。これは手抜きじゃなくて、ただお手軽に作るだけなんだ。
そろそろアーサーも来る頃かなぁ…。
お腹空かせてるだろうしアーサーの分は大盛りにしてやろう。


―ピンポーン


「来た来た。はいはーい、いらっしゃーいアー…」

「よ、よぉ…」

「ど、どげんしたとですか…汗だくですよ…」

「いや、な…うちのクーラーが壊れちまって…」

「成る程…それは辛かったね。まぁうちで涼んでよ。今夜は冷し中華だよ〜」

「悪いな」

「なんならアーサーも水浴びする?」

「水浴び?」

「うん。今ピヨちゃんが洗面器でぴちゃぴちゃと…」

「無理言うなよ馬鹿…」


だらだらと汗をかくアーサーはとっても無気力だった。
アーサーも暑さには弱いもんねぇ…。


「ピヨちゃん拭いてやったぜ」

「ご苦労様ー。ご飯にしよっか」

「暑い日にはやっぱこれだよな」

「お前は眉毛とか眉毛が暑苦しいんだよ。剃れよ眉毛」

「ダメだよギル、眉毛が無いアーサーなんてただのアーサーだ」

「んだよそれ!?どこぞのブタみたいな事言ってんじゃねーよ…ったく」


いつもよりツッコミのキレが悪いなぁ…。
もしかしてアーサー夏バテって奴?
昼は粗食とか言ってガッツリ食べないからいけないんだよ…。
私みたいに丼とか食べてたら夏バテなんてしないのにね。


「アーサー夏バテなんじゃない?お昼ちゃんと食べなきゃダメだよ」

「いいんだよ。朝ちゃんと食べてるし…」

「お昼こそがっつり食べておかないと体がもたないんだよ。明日のお昼は私と一緒に食べに行こう。美味しい中華料理屋があるんだよ〜」

「中華か…。ま、まぁお前がそこまで言うなら一緒に食べてやってもいいぞ…」

「ずりーぞお前らだけ中華!!」

「ギルにもお土産買ってきてあげるから」


アーサーにちゃんと食べさせて夏バテを解消しなきゃなぁ。
夏バテだからってそうめんや冷たい食べ物ばかり食べてるとダメらしいよね。
基礎代謝を上げて元気になるのが一番だ。
明日から晩ご飯のメニューをガッツリ系に変えて行こう。


「よし、明日の夕食はちゃんこ鍋だ!!」

「はぁああ!?このくそ暑いのに!?」

「夏バテの時こそガッツリした物を!!」

「なんか間違ってねーか…?ちゃんこって…」

「俺はヴルストがいいぜ」

「ウインナーはまた今度ね」

「ウインナーじゃねぇヴルストだ!!!」

「どっちだって一緒でしょ。そういうわけだからアーサー、がっつり食べてしっかり元気になってね」

「お、おぉ…」

「頼りない返事だねぇ。もっとしゃきっとしなさい!!」

「お前は母親か…!?」

「もう既にあんたらの母親気分だよ私は!!」

「あんたらって俺も含めてんのかよ!?俺様は子供じゃなくて…あー、なんだ…」

「バカ言ってないで早くご飯食べちゃいなさい」

「…ちくしょう!」


こんな事やってたら当分恋人なんてできなさそうだなぁ…。
まぁギルの面倒みてるだけで結構充実してるもんね。
アーサーも頼れるんだか頼りないんだかよく分からないとこあるし、私がしっかりしておかないと…!!
ともかく明日はちゃんこ鍋だ!!
無理矢理にでもアーサーの口の中に突っ込んでやろうっと。


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