「それではこれよりスポーツ大会を開催いたしまーす!!」 「おっしゃーおめぇら!!気合入れていぐっぺー!!」 「「「おぉー!!」」」 本日は社内で行われるスポーツ大会の日! 今年こそは優勝を狙ってるデンさんはいつもより気合が入ってるよなぁー… 優勝チームには宴会無料券だもんね。 お酒大好き食べるの大好き騒ぐの大好きなうちの部署としてはこれはなんとしてでも手に入れなくてはならない。 優勝して帰らないと会社に居残り組みの皆さんになんと言われる事か…!! 仕事返上で来てるんだもんね、一生懸命頑張らなきゃ!! 「これ…皆の分のTシャツ作ってきた」 「マジっすかノルさん!?自費!?」 「あんこの財布から出したからえがっぺ」 「あ、なーんだ。だったら遠慮なく着させていただきますね」 「おいこらノル!!勝手に俺ん財布使うでねぇ!!」 「ノルさん、なんかこのTシャツ字が書いてあるんですけど…。”消え失せろ”…?」 「それあんこ用」 「こっちは”ハイオク満タン”って書いてありますけど」 「そっちはベールだべ」 「…こっちは”大盛りつゆだく”なんですけど…」 「ティノ用」 「じゃあこの”触るな危険”って」 「おめぇのだべ」 「なんなんですかこの脈略のあるようなにような文字Tシャツは」 「えっがら着とけ」 ノルさんの趣味もいまいちわかんないなぁ… ノルさんが企画する家具のデザインなんかはすっごくオシャレで可愛いのに…。 まぁいいや、皆で同じもの着てる方が士気もあがるしね。 そういえばギルと本田さんが見に来るって言ってたけどもう来てるのかなぁー… 二人とも昨日は散々飲んだみたいだし二日酔いだったりして。 「アハハハ、このTシャツ何なんでしょうね〜名前さん!僕”大盛りつゆだく”ですよー!」 「俺んはハイオク満タン…」 「私なんて触るな危険なんですけど…。何、私は爆発物扱いですか?」 「そっちゃ着てる方が安全だない」 「安全って何が!?」 「おめぇら、試合始めるっぺー!」 「はい!うわぁー、ドキドキしますね!!名前さんスーさん、一緒に頑張りましょう!」 「うん!」 「んだな」 ―――― 「頭いてぇ…」 「ギルベルトさん!!早くしないと名前さんの試合に遅れてしまいます!!私随分前からこの日の為に最新の技術を装入されたビデオカメラ用意してたんですからね!!ズームだって400倍までできるんですよ!!遠くからでも名前さんの腹チラや太ももちらりなんて美味しいシーンもばっちり録画する事ができるんですからねぇええええ!!」 「本田うるせぇ!!頭痛いんだよこっちは!!」 「だから飲むなと言ったんですよ私は!!」 方からビデオカメラの入ったケースを提げた本田は俺の背中をぐいぐいと押しながら耳元でギャーギャーと叫びやがった。 ちくしょう、頭いてぇ… しかも昨日の事あんまり覚えてねーし… やたら柔らかくてふわふわしたものに包まれてたような気がしたんだけどなぁ… 「もしかしてあれポチか?」 「キューン」 「まぁどっちでもいいか。ピヨちゃんも逸れないようにちゃんと俺の頭に乗っておくんだぜ?」 「ピィ」 「なんだか動物使いの人みたいになってますよギルベルトさん」 「あれー、ギルベルト君に本田君だあ〜。こんな所で何してるの?」 「うげっ…!!い、イヴァン…」 「こ、こんにちはイヴァンさん…」 うげぇええええ!! よりによって最悪な奴に会っちまったぜ!! 俺こいつ苦手なんだよなぁー… 「二人でお出かけ?デートか何かかなぁ〜」 「ちげーよ!あれだ、今から名前の奴が会社のスポーツ大会ってやつに出てるから見に行くところだ」 「凄いね〜!そんなものがあるんだぁー。いいなぁ、僕も見に行きたいなぁー名前の活躍する姿」 「よ、よろしければご一緒にどうですか?」 「本田ぁあああ!?」 「うわーい!いいの?じゃあお言葉に甘えちゃうね〜!じゃあ僕の車で会場で送っていくよー。トーリスぅ〜!車こっち持ってきてー」 「かっ、畏まりましたぁー!!」 あいつもまだ若いのに苦労してんなぁ…。 イヴァンのいかにも高そうな車に乗せられて向かった球場。 着いた頃には既に試合が始まっていて、遠くの方でグローブ片手に突っ立っている名前の姿が見えた。 「ビデオセットオーン!!これで名前さんの腹チラゲットですよぉおおう!!」 「あ、名前がこっち見たよー!わーい、名前〜!」 こいつらはしゃぎやがって…。 しっかしこの炎天下の中で野球なんてやっててあいつ大丈夫なのかよ…。 ぶっ倒れたりしたらデンの奴に文句言ってやるぜ ――― 「名前さん!次名前さんの打席ですよ!」 「おっけー。なんだかドキドキするなぁ…」 「バッティングは苦手ですか?」 「一応バッティングセンターで練習はしたんだけどね。せっかくアルフレッド君に教えてもらったんだから頑張らなきゃ」 「気ぃつけて行ってこ」 「やだなぁスーさん。名前さんは女性なんですから相手のピッチャーの方も手加減してくれますよー」 「ティノ君…甘いね」 「んだな」 「え…?」 優勝商品がかかってるんだからどのチームもなりふり構ってないんだよなぁ。 女だろうが子供だろうが手加減は無用なのが暗黙の掟だ。 「名前さーん!!こっち、こっち向いてくださーい!!」 本田さん来てるし…!! それにイヴァンも居るんですけど!? って、ダメだダメだ、集中集中…!! バッターボックスに入りバットを構えたかと思うと、私の胸下10センチぐらいの所を野球ボールが過ぎて行った。 あっぶな…!!本当に手加減無しだなオッサン!! 「ハハハ!女に俺の球が打てるわけないさ!さぁ、苦しまずにあの世に送ってやるぜ!!」 って、ええええええ!? 何キャラ!?何であのオッサン脇役のくせに目立ってんのぉおお!? ちくしょう、むかつくなぁ… 「名前ー!!打たねーとあとで社長相手に野球拳やらせんべー!!」 「んなこぢょさせね…」 「んだベール、やっか?乱闘戦なら俺も負げねぇっぺ!!」 「うわぁああ!!喧嘩しないでくださいよ二人ともぉおお!!ひゃぁあ!!ちょっ、スーさん顔こわっ…!!」 外野煩い!! そんな事もお構い無しに投球のフォームに移るピッチャーを思いっきり睨みつけてバットをギュッと握る。 そうだ、あのボールを何か憎いものに置き換えて打ってみるなんてどうだろう。 何かの本で見た方法だけど、やってみる価値はあるよなぁ… よし…!! 「うおらぁあああああ!!!」 「うおおおお!?」 ―カッキーン う、打てたぁあー!! 「走れ走れー!!」 「うわぁ、うわぁああ!!名前さん凄いです!!」 打ったボールは内野を抜けて地面に落ちた。 1塁までしか走れなかったけど上出来だよね!! 女の私に打たれた事が大きなダメージだったのか、相手ピッチャーの球がどんどん弱いものになって行き結果はこっちのチームの勝ち。 時間がかかるから特別ルールで5回までしかプレイできないってのも勝因の一つだったのかもしれないなぁ。 大きなグラウンドで一度に二試合行われるスポーツ大会。 あと何勝すれば優勝できるのかなぁ… 「名前ちゃーん!!めっちゃかっこよかったでぇえー!!」 「トニーさん!!トニーさんも見に来てくれてたの?」 他のチームの試合を観戦しながら休憩をとっているろ、そっと背中に重みが圧し掛かった。 両手を添えて頬っぺたを背中にくっつけるようにして寄り添ったトニーさんはキラキラとした目で私を見上げた。 「菊にメールで教えてもらって駆けつけてきてん!!名前ちゃんめっちゃかっこ良かったわぁ。もう阪神に入団できんで、阪神!!」 「いやいやここはジャイアンツでしょ〜…って、トニー胸倉掴まないで!!お兄さんの服伸びちゃう!!これ高かったんだからなー!!」 「おんどれ今なんつった?ジャイアンツ?野球の名門っちゃあ阪神やろーがぁあああ!!どこん目ぇつけとんねんおんどれぁああ!!」 「トニーさん!!トニーさんキャラ変わってる!!」 「ハッ!!ご、ごめんなぁフランシス…。つい関西人の血が騒いでもたわぁ」 「お、お前はエセ関西人だろーが…げほっ」 フランシスさん…同情します。 「ギル達はどこですか?」 「んー?なんや昼飯買いに行くーてどっか行ってもたわぁ。多分コンビニかどっかやろ」 「なんだ…皆で一緒に食べようと思って沢山お弁当作ってきたんだけどなぁ」 「ほ、ほなら俺も一緒に食べてもええ…!?久しぶりに名前ちゃんの手料理食べたいわぁ〜!」 「もちろん!!あ、同僚の二人も一緒なんですけど大丈夫ですか?」 「ええよええよー」 「じゃあお兄さんも名前ちゃんのお弁当いただいちゃおうかなぁ」 「しょうがないからくれてやりますよ。ペッ」 「なんで俺だけそういう扱いなの!?」 → ←|→ |