「そういうわけでよぉー…あいつマジでサディクの事好きなんじゃねーのかなって…ヒック」

「ギルベルトさん、少し飲みすぎですよ?いくらお酒に強いからって言ってこの短時間で一升瓶丸々空ければ誰でも酔いますよ!?」

「大丈夫らって〜。あいつ帰ってくるまで時間あるし…」

「もう!!叱られても知りませんからね、私!」


本田の家の居間に敷かれた畳の上でゴロゴロと体を揺らすと、視界がぐるぐると回った。
やべぇ、これ結構酔っちゃってるぜ…


「ったく…昼真っからこんなに飲んで…」

「お前だって飲んでんじゃねーか」

「私は良いんです。それで、サディクさんがどうかされたんですか?」

「だーかーらぁー。名前の奴昨日からサディクサディクって…。あいつが来る時もやけに気合入れてめかし込んでるし…俺に対する態度と違いすぎねぇ?」

「まぁ…そうですね…」

「サディクと話してる時も頬赤くしちゃってよぉ…。なんだよあれ、可愛いんだよあのバカ女ー!!」

「分かります、よく分かります」


息を荒くしてグっと親指を立てる本田。
輝いたその目が眩しいぜ。
背中を丸めて膝の間に顔を埋めると、背中にピヨちゃんを乗っけたポチが心配そうに俺の顔を覗いてきやがった。
可愛いぜ…


「ポチー!!お前は俺の気持ちが分かってくれるよなぁああ!?」

「キュン」

「だよなーだよなー!!あいつ趣味悪すぎじゃねぇ?相手オッサンだぜオッサン!!そりゃまぁ経済力もあるし男らしいっちゃーらしいけどよぉ…。俺様の方がかっこいいよな!?」

「……わん!」

「なんだよ今の間は…」

「ぶふぅうっ!!ナイス!!ナイスですよポチくん!!流石私の愛犬!!」

「ちくしょー!!どいつもこいつもバカにしやがって!!」


あー頭ぐらぐらしてきた…
けどまだ飲み足りねぇ…。
こうなったらとことん飲んで飲んであんな奴の事は忘れてやるぜ!!
そうだよな、あんな凶暴メスゴリラなんかじゃなくても女は他にも沢山居るんだし!?


「サディクさん、ですか…。私は名前さんがサディクさんに抱いている感情はただの憧れのように感じますけどねぇ…。って、何飲んでるんですかギルベルトさん!?」

「酒」

「飲みすぎですよ!!あーもうこれ高かったんですからね!!こうなったら体で払ってもらいますからね!!」

「体ってなんだよ」

「いえ、ノリでつい。何が楽しくて男体を…!!どうせなら名前さんの体で支払ってほしいですよもう!!」

「お前…酔ってんのか?」

「酔っ払いのギルベルトさんに言われたくないです」

「おい本田、お前三つ子だっけ?お前が三人に見えるぜ」

「もうお酒飲むの止めてください」


ゆらゆら揺れる視界の端っこに、これまたゆらゆら揺れている名前の姿が見えた気がした。
って、あいつが帰ってくるにはまだ早いよな…幻覚か、これ。
ちくしょー、ちっせぇ体しやがって。
ぎゅーって抱きしめたいぜ、こいつ。


「うわぁあ!?何!?いきなり何すんのギル!?」

「幻覚見るなんてあの眉毛の事バカにできねーぜ…。やけにリアルな感触…」

「ちょっ、暑苦しい!!腰撫でるな腰!!」

「ギルベルトさん…次私…次私にもぎゅってさせてくださーい」

「何本田さんまで酔っ払ってんの!?おいこら離せ!!離せつってんだろーがコルァアアア!!!」

「ぐふっ!」


う…痛みまでやけにリアルだぜ…
だんだん意識が遠くなってきやがった
うっ…


「本田さん…この状況の説明をしていただけますか…」

「あ、アハハハ…やけにお帰りが早いですね、名前さん」

「明日はスポーツ大会本番なので今日は早く切り上げてきましたから。そんな事はどうでもいいんですよ…。この状況を詳しく、そう詳しく説明していただけますか…?」

「えっと、あの…」

「ん〜…名前ー…」

「くっつくなドアホぅ!!」

「いでぇええ!!殴るなよ…!!」

「ったくこんなに酔っ払って…。さっさと帰るよ。明日は大会本番なんだから無駄な体力使わせんな」

「膝枕ー」

「何この子、甘え上戸?アーサーみたいな事してんじゃねーよバカ!!」

「いいだろーたまには…」


名前の膝にぼすっと顔を埋めるように寝ころがると、なんかよくわかんねーけどすげぇいい匂いがした。
あぁ、これはこいつの匂いだ。
ふわふわしてて甘くて…やべぇ、マジで眠い…


「ったくもう…無駄な体力使わされた…」

「な、なんですかぁああ!!膝枕なんて!!膝枕なんて!!爺に刺激を与えないでください!!あぁ、ちょっとそのままじっとしててくださいよ!!今ビデオカメラ持ってきますからぁあああ!!」

「いや、撮らなくていいですから」

「グッジョブ!!グッジョブですよギルベルトさぁあああん!!」

「って聞いてねーなこのジジイ」


その後の事は記憶にねぇ。
ただすげぇいい匂いと柔らかい感触に包まれてたって事だけは覚えてる。
あーもう、なんか酒に酔ってて気分良いしサディクとかで悩んでたのがどうでも良くなってきたぜー
今が幸せならそれでいいんじゃねぇ…?
俺様幸せすぎるぜー…


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