「最近本当に暑くなってきたわよねぇ…。日本の夏って湿気が多いというか…とにかく暑いわ」

「エリザも早くも夏バテ〜?ギルも家で暑い暑いってダラダラやってるよ」

「あのプー太郎…。そうだ名前、8月に入ったら海にでも行きましょうよ!ローデリヒさんや菊さんも誘って!!」

「いいね〜。あ、でも私水着持ってないや」

「なら一緒に買いに行きましょう!!名前にぴったりの水着を選んであげるわっ!!ワンピースタイプも可愛いけどやっぱりビキニかしら〜。ピンクもいいけどブルーも似合いそうよね!!それからそれからっ」


両手をポンと合わせてやや興奮気味に私をじっと見つめるエリザ。
海かぁー…もう何年も行ってない気がする。せっかくだし皆で行くのも楽しそうでいいよね!
ギルに海パン買ってあげないと…
ウサギさん柄とかだとまた怒っちゃいそうだなぁ…。
じゃが芋柄、とかだったら良いのか…?


「ローデリヒさんっ!!来月の休日を利用して一緒に海に行きませんか?」

「海、ですか…。いいですね。良い気分転換になりそうです」

「良かった!ねぇ名前、来月のお盆のお休みはどれぐらいあるの?」

「八日間ぐらいあると思うよ。8日から12日は帰省するから…それからならいつでも大丈夫!」

「良かった!!ついでにキャンプってのも良いわね…。うふふ、女の子の友達と夏を過ごせるなんてとっても嬉しいわ!」

「私もすっごく嬉しいよエリザー!」

「あまりはめを外さないようにしてくださいよ」

「「はーい」」


今年の夏はとっても楽しい夏になりそうだ!!



―――



「そういうわけでね、夏に海に行こうって話になってるんだよねー。あ、アーサーご飯のおかわりいる?」

「ん、悪いな」

「ほいほーい」

「海か…。海と言えば水着だよな」

「ですよねー。エリザの水着は何色かな…」

「あいつ相当胸でけーから水着のサイズねーんじゃねぇの?」

「こいつ最悪だな…」

「私も今度エリザと一緒に水着買いに行くんだー。どんなのにしようかなぁ…」


ご飯をよそった茶碗をアーサーに差し出すと、受け取ろうとしたその手がピクリと止まり数秒間停止した。


「おおおお、お前はあれだよな…。ぴっ、ピンクとか似合うんじゃないのかな…」

「なにもじもじしてんの。しっかり茶碗受け取りなさい」

「あ、あぁ…」

「お前もサイズあんのかよ。胸小さすぎてサイズねーんじゃねぇの?」

「ねぇアーサー、人間って洗濯機で洗うと心も綺麗になるのかな?家庭用洗濯機で大丈夫だと思う?」

「お前の家のは小さいからな。アルフレッドの家にどでかい洗濯機あるぞ」

「そうだね。おいギル、ちょっとアルフレッド君の家の洗濯機行ってこい。漂白剤で洗ってやっから」

「なんだよその新手の苛め!!洗わなくても俺の心はピュアハートだぜ!?」

「何言ってんのこのバカ。バカは死なないと治らないものなのかしら奥さん」

「奥さんってなんだよ。まぁバカは一生バカのままだろうな」

「変態眉毛に言われたくねーよ」

「あぁん…?ちょっと表出ろ、今日こそ地の果てまでぶっ飛ばしてやるから」

「やなこった」

「殴らせろ!!一発でいいから殴らせろ…!!」

「嫌だ!!」


こいつら両方バカだ。
類は友を呼ぶと言いますか…
あれ、だったら私もバカの仲間?
うーん、それは遠慮させていただきたいなぁ。


「おい名前、電話鳴ってるぞ?」

「んー?誰だろう…。って、ささささ、サディクさんっ…!!」


携帯の画面を開きディスプレイに浮かぶ文字を確認してみると、そこには”サディクさん”の文字が。


「もっ、もしもし…!!」

『おう、嬢ちゃんかい!』

「あ、ひゃい!!私です!!」


うわぁあサディクさんだぁああ!!
落ち着けよ私!!緊張しすぎて”ひゃい”とか言っちゃったよぉおお!!もうバカぁああ!!


『前に言ってた晩飯食わせてくれるって話だけどよぉ、急なんだが明日の夜お邪魔しちゃってもいいかい?』

「あ、はい!!大丈夫です!!」

『悪ぃなぁ。なっかなか休みが取れねーもんでよぉ。最近遠方の仕事がめっきり多くなっちまって帰りも遅いもんで…。明日久しぶりに休みが取れたんで嬢ちゃんの手作り料理でも食わせてもらおーと思ってねぃ』

「うわぁあ…!!わ、私なんかので良いのかなぁ…。分かりました!頑張って美味しい料理作りますね!!」

『楽しみにしてるぜ。そんじゃ明日の7時半頃におめぇさんのマンションまで行くかんな!』

「はい!!あ、場所とか分かります…?」

『本田ん家の近くだっけか?まぁ分かんなくなったら電話入れらぁな!!』

「分かりました!!それじゃあお待ちしてます!」

『おう!!楽しみにしてんぜぃ』


うわぁあああ…!!どうしよう、どうしよう!!
明日サディクさんが私の料理を食べに来てくれるってぇええ!!


「ぎ、ギルー!!」

「んだよ」

「え、エイドーリアーン!!」

「ゴフッ!!ちょっ、入った、喉入っ…!!!」


歓喜のあまり分けのわからない言葉を発しながらギルの喉元にチョップをくらわす。
うわぁあ、明日サディクさんが…!!
どうしよう、どうしよう!!


「んだよそんなに喜んで…。誰がここに来るって?」

「トニーさんのアパートを直してくれた大工さんだよ!」

「へぇ…そりゃあ俺も一言礼を言わないとな。そいつのお蔭であの貧乏もここから居なくなったわけだし」

「アーサー…あんたって奴は…。まぁいいや、ともかく明日はサディクさんが来るんだからめい一杯部屋を綺麗にして…部屋に花とかあると良いかなぁ!ふふふ、楽しみ〜!!」

「ちょっ、どうしたんだよお前!?お前がそんなになるなんて…そのサディクって奴いったい…」

「サディクさん…もう一度あの仮面の下の素顔を拝ませていただきたいなぁー…」

「仮面んんんん!?」

「名前…!!喉入った…痛い…!!」

「ギル何さっきから床で転がり回ってんの」

「お前のせいだろーがぁあああああ!!!」


ゲホゲホと咳き込みながらヒィヒィ言っているギルの背中をさすってあげながら明日サディクさんに食べてもらう料理のメニューを頭の中で考えていった。
洋食もいいけどやっぱり和食かなぁ…
サディクさんはどっちが好きなんだろう。
味は薄味がお好み?それとも濃い味?
あああ、こんな事ならさっき聞いておけばよかった!!
今から電話で聞くのもなんだしなぁ…
そ、それに自分から電話をかけるのはちょっと恥ずかしいし…。
ともかく一生懸命作ればきっとサディクさんも喜んでくれるよね!!
よーし、明日は腕によりをけけて精一杯料理を作ろう!!
サディクさん、喜んでくれるといいけどなぁ…。


「ちょっ、お前勢いよくさすりすぎ!!摩擦で痛ぇよ!!!」

「ふふふ、楽しみだなぁ…」

「って聞いてねぇええ!!!」



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