「ギルー、ホットケーキ食べる?」

「ホットケーキ?」

「うん。昨日アルフレッド君づてにマシュー君から美味しいメイプルシロップもらったからさぁ。どうせならホットケーキでも作って食べようかと思って!」

「食う食う」

「なんだかよく分かんないけど、”食べると幸せになるメイプルシロップ”らしいよ」

「マジかよ!?うさんくせーな…」


マシュー君からもらったメイプルシロップ。
本当にキラキラしててすっごく美味しそうだなぁ…。
紅茶に入れるのもいいけどまずはホットケーキでその味を楽しむのもいいかもしれない。
うーん、ホットケーキぐらいならギルでも作れるかなぁ…。
ちょっと試しにやらせてみよう。


「ギル、ホットケーキ作ってみない?」

「なんで俺なんだよ」

「いやぁ、ホットケーキって簡単だし。いつまでも卵焼きだけじゃギルの料理の腕も上がらないままだなーと思ってね」

「卵焼きで充分だぜ!!」

「それで満足できるお前は凄いよ」


フローリングに寝転がってゴロゴロ回転するギルの腕を引っ張り無理矢理体を起こし、頭からエプロンを被せる。
まったく、でかい子供の世話してる気分だよ。


「ピヨちゃんはそっちで待っててねー。キッチンに来ると焼き鳥になりかねないからね」

「ピィ」

「ちょっ、お前最悪だな!!ピヨちゃんそんな事言うとかありえねぇえええ!!」

「いいから手ぇ洗ってー。ほら、ちゃんとエプロンの紐結びなさい」

「お前はおかんか!!」


誰のせいで母親やってると思ってんだこのプー太郎。
ホットケーキの材料って薄力粉と砂糖と卵と牛乳…それからベーキングパウダーでいいんだっけ?
すっごく久しぶりに作るから美味くできるか心配だなぁ…


「よーし、まずは薄力粉をボウルに入れてー。それから卵と牛乳とベーキングパウダーを加えて、よーくかき混ぜてね」

「うおらぁああああ!!」

「ちょっ、混ぜすぎ混ぜすぎ!!勢いよく混ぜるからこっち飛んだじゃん!!」

「俺混ぜるの上手すぎるぜ!!とりゃぁああ!!」

「調子に、乗るなあぁあああ!!」

「いでぇえええ!!殴ったな!?しかもグーで!!」

「もっとゆっくり混ぜろバカ!!」


ああもう顔にまで飛んできたじゃんかよ…!!


「ゆっくり、そうゆーっくり混ぜるんだよ…!!」

「こうか?」

「そうそう。うん、やればできるじゃん!」

「まぁ俺様すげー器用だしな!!」

「それが混ざったらホットプレートで焼くからね〜」

「おう!!」


うん、なんだか楽しくやってるみたいだな。
暖めておいたホットプレートの上にギルが混ぜてくれたものをお玉ですくってゆっくり流してゆく


「表面にぷつぷつって穴が開いてきたらひっくり返すんだよ」

「おう!!これで引っくり返すのか?」

「うん。お好み焼き引っくり返すみたいにね」

「お好み焼き…?あぁ、何回かトニーん家でやったな」

「トニーさんのお好み焼き…!!関西に居たって言うぐらいだからきっと美味しいんだろうなぁ…あとたこ焼きとか!」

「めっちゃ美味かったぜ!!」


いいなぁー…今度作ってもらおうかな。
たこ焼きとかも美味しそうだなぁ…


「おお!!なんかブツブツ出てきたぜ!!」

「よーし!!それじゃあひっくり返して〜」

「行くぜー!!うおらぁああ!!」

「おおお!!上手ー!!」

「これぐらいの事俺様の手にかかればどうってことねーぜ…?」

「うわぁ、かっこつけてんのうざーい。その調子で残りの分も頼むよ〜」

「おう!」


卵焼きでひっくり返すことに慣れたのか、意外と上手にホットケーキをひっくり返すギルはなかなかさまになっていた。
出来上がったホットケーキを数枚重ね、上からたっぷりのメイプルシロップとバターをかけるととっても美味しそうなホットケーキが出来上がった。


「それじゃあいただきまーす」

「いただくぜ!」

「あむっ……こっこれは…!!」

「うんめぇええええええ!!!」

「お、美味しいぃいい!!何これ、何この美味しさ…!!このメイプルシロップ何!?」

「マシュー…お前はとんでもねーものを生み出してやがるぜ…ガチで幸せになれる美味さ…!!」

「本当に美味しい…!!しあわへぇえ〜…!!」

「これなら三食ホットケーキでもいけちゃうぜ!!」

「三食ホットケーキ!?いや、でもこの美味しさならいけちゃうかもなぁ…。うん、本当に美味しい…!!」


マシュー君が絶賛するだけの事はあるなぁ〜!!
アーサーに紅茶入れてもらってこのメイプルシロップ淹れたらすっごく美味しくなるんじゃない?


「美味しいねーギル」

「だな。またマシューからもらってこいよ」

「どこかに売ってるやつなのかな…。また今度聞いておくね」

「おう!!」


口いっぱいにホットケーキを詰め込んでもごもごと食べるギルの笑顔ときたら…
本当に幸せそうでこっちまで嬉しくなっちゃった。
食べると幸せになれるメイプルシロップは伊達じゃなかったよ、マシュー君…!!

ギルの口元にメイプルシロップがベタベタになってついていたので、タオルでごしごし拭いてあげると真っ赤な顔をして「自分でやれるっつーの!!まぁめんどくせーからお前にやらせてやるぜ!!」と高笑いされた。
なんだ、このバカ息子は。
本当に世話のやける子だなぁ…。
でもバカな子ほど可愛いというやつなのか…そんなギルも可愛いと思ってしまう私は相当な末期なのかもしれない。

まぁ、幸せだからいいか。

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