”雷が鳴ったら一緒に寝てね”とは言われてたけど、まさか本当になるとは思わなかったぜ…。
名前の奴布団の中でべたべたくっついてきやがるし。近いし。暑いし。熱いし。
うん、俺じゃなかったら絶対我慢できねーよあれは。
隣の眉毛とかだったら一分で襲い掛かってるぜ?
いや、でも俺が来るまではあいつが傍に居てくれたとか言ってたよな…。

ちくしょー…むかつくぜあの眉毛…!!


「んおー…おはようギルー。なんかギルと一緒に寝た日っていつもギルが先に起きてるねー」


誰のせいで一睡もしてねーと思ってんだアホ女…!!


「うおー!!快晴じゃん!!嵐の後の空って綺麗だよね〜!!今日は良い一日になりそうだーっ!!」

「俺は眠い…。ちょっと寝るから飯できたら起こせよ」

「はぁ?夜中何してたの」

「何もしてねーよ」

「意味わかんない」


じとりとした目で俺を見た名前は小さくため息をついて寝室を出て行った。
人の気も知らねーで…!!
至近距離にあいつが居なくなってやっと一息つけた。
あーもうこれすぐ眠れる…



―――



「ったく、ギルの奴まだ眠いってどういう事だろう」

「夜中に何かしてたんじゃないのか?」

「さぁねー。だけど寝てる間もギルの温もりあったような気がするし…。寝転びながら漫画でも読んでたのかもね」

「…」


朝一番でそのスコーンという名の兵器を持って来たアーサーは、「紅茶も淹れてやるよ…」と自分からすすんでキッチンに立った。
まぁ紅茶は飲むけどね、スコーンは食べられない。
朝の新聞を読みながら何気なく話していたその会話が途切れ、不思議に思いアーサーほ方に視線を向けるとなんとも言えない…笑顔のような、それでいて何かが切れてしまったような表情で固まっていた。


「ちょっ、どうしたのアーサー!?」

「…今なんつった?」

「はぁ?今って何…」

「今さっき、寝てる間も、あいつのぬくもりがって」

「あぁ、昨日雷鳴ってたじゃん?だから一緒に寝たんだよ」

「…で?」

「でって…何」

「あのプー太郎はまだ寝てんのか?」

「うん」

「お前の寝室で?」

「うん」

「そうか、そうか。ん、分かった。お前ちょっと外出てろ。いや、俺の部屋行ってろな。この部屋崩壊するかもしれないけど弁償するから安心していいぞ」

「ってアーサァアアアア!?何!?何しようとしてんの!?目が据わってるよお前ぇええええ!!!」

「どいてろ。あの野郎今度こそ地の果てに埋めてきてやる…俺の幸せな生活をめちゃくちゃにしやがってあのプー太郎マジで殺す殺す殺す」

「アーサァアアア!!!」


スコーンを手に取ったアーサーが寝室に向かっていくのを必死に羽交い絞めにして止めた。
やばい、完全に目がいっちゃってるよこの人ぉおお!!


「バカ…急に抱きつくなよ…」

「いや、抱きついてんじゃなくて止めようとしてんの!!ああもういいから落ち着け!!そこ座れ!!座ってスコーン食ってろ!!」

「いや、俺はあいつに「大人しくしないと絶交」よし分かった」


うん、やっぱりアーサーにはこの言葉が一番利くみたいだ…


「あのねぇ、そうホイホイと簡単に手ぇ上げるのよくないよ?だから元ヤンだとか言われるんだよアーサーは」

「うっ…」

「もういいから朝ごはん食べちゃいましょう。紅茶、淹れてくれるんだよね?」

「あ、あぁ。きょっ今日の紅茶はいいやつ使ってるから美味いぞ、きっと!」

「うん。楽しみ〜」


それから二人で軽く朝食を済ませ、アーサーは用があるからと言って自分の部屋に帰って行った。
あ、ギル起こすの忘れてた…!!
けどあの状況で起こすのはダメだよね、うん。
寝室にギルの様子を見に行ってみると、気持ち良さそうに寝ていたのでそのままにしておいてあげた。
また起きてきたらご飯作ってあげよう。
なんか今日は朝からどっと疲れたなぁ…
今日は本でも読んでゆっくり休日を満喫しよう。
明日はギルと一緒にバッティングセンターにでも行こうかなぁ…
打つ方も練習しておかないとね!!
あと私グローブ持ってないんだよね…
買うのもなんだしなぁ…
本田さんなら持ってそうだし後でメールして聞いてみよう。

ともかく今日はゆっくりのんびりとした休日を過ごせそうだ。
ギルが起きるまでピヨちゃんと遊んでおこっと!


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