「こんなとこにお兄さんを呼び出すなんて…。うんうん、何も言わなくても分かってるから安心していいよ〜名前ちゃん。さぁ、これからお兄さんとあまーい夜の時間を堪能しようか…」

「フランシスさん…私、名前に変な事してるとこ見ちゃったら手が滑ってこのあつぅ〜いコーヒーを貴方の顔面にぶちまけちゃうかもしれませんよ」

「うん、嘘だからね、冗談だからあっつあつのコーヒーポッド手に持って睨むのやめてエリザちゃん!!」


夕焼け色に染まったこのカフェ、”アンダンテ”はいつものようにゆったりとした時間が流れていた。
本日ここにフランシスさんを呼び出したのは誕生日プレゼントを渡す為。
口煩く言われそうだからギルやアーサーには内緒だ。


「はいフランシスさん、お誕生日プレゼントです」

「へ…?」

「あれ…昨日お誕生日だったんですよね?」

「いや、まぁそうだけど…うん」

「私知らなくて…昨日は何も出来ずにすみませんでした」


プレゼントは仕事帰りに買ったもので、色々と悩んだ挙句無難なエプロンと鍋掴みを購入した。
多分フランシスさんの事だからもっと素敵な物を持ってるんだろうけどなぁ…


「えっと、本当につまらないものですけど…」

「そんな事ないよ。メルシー、名前ちゃん」


机から乗り出し、私の頬にちゅっとキスを落としたフランシスさん。
うわぁ、恥ずかしい…
だけどまぁ、厭らしさは感じないし…別にいいか。


「そうだ、これこの間教えてもらった作ってみたんです!!良かったら食べてください」

「どれどれ〜?ちょっと味見…。うん、美味しく出来てるじゃんか〜。もうどこに嫁に出しても大丈夫だなぁこりゃ」

「何オッサンくさい事言ってんですか。あ、オッサンなのか」

「ちょっ、お兄さん!!お兄さんだからね!!」

「フランシスさんって髭剃ればあと3歳は若返りますよね〜」

「え、嘘。いやいやでもこれが俺の売りだしなぁ…」

「フランシスさんっていつから髭伸ばしはじめたんですか?」

「んー、たしか23…いや、21だったかなぁ…もう随分と前だった気もするし…。そういやまだ高校生だったアーサーが俺の真似して髭伸ばすとか言ってたけどあいつツルッツルでさぁ。ほんとあいつは昔っから俺の真似ばかりしたがるんだよ」

「そういえばアーサーって足とか腕も薄いような…」

「下半身の方「ここでその話はしないでください」


本当にこの人は…!!
ギルといいフランシスさんといい、本当に懲りない人たちだよね。
類は友を呼ぶという奴なのか…。

帰りは結局またまたマンションまで送ってもらうはめになってしまった。
気使ってくれなくても大丈夫なんだけどなぁ…
たまたまマンションの下で一緒になったアーサーはフランシスさんを見つけるなり目の色を変えて「なんでテメェがこんなとこにいんだよ、あぁ?」と今にも掴みかかりそうな勢いでフランシスさんを睨んだ。
仕方が無い奴だなぁとでも言いたげに「ヤボな事聞くもんじゃないぞ〜、アーティー坊や」とアーサーをからかった。
ああもう、余計にアーサー怒っちゃったじゃないか…!!
二人を無理矢理引き剥がして、やや乱暴にフランシスさんにお礼の言葉を投げつけてアーサーの手を引きマンションの中へと入って行った。
ったく、近所迷惑だっつーの…

その日のジョギングはアーサーと私の二人っきり。
ギルはどうしても見逃せないテレビがあると言っていた。
昨日と違ってマイペースで走れたから結構楽しかったなぁ。
アーサーはちょっとへばってたけど。
喧嘩の時は力ありあまってるぐらいなのに、こういう時は体力ないんだよなぁアーサーって。

今日はフランシスさんにプレゼント渡せたし、それに私の料理の味も認めてもらえたし本当に良かった。
サディクさんに連絡して何時来ていただけるか聞いてみなきゃなぁ…
ふふふ、とっても楽しみ!

家に帰ってソファーでぐーたらしているギルにタックルをくらわせてやると「うおおお…!!今大事な場所に…!!俺の大事な場所に入った…!!」と床で転がりながら痛みに耐えていた。
うわぁ…なんかごめん…


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