「というわけでピヨちゃんが戻ってきたんだよね〜」

「ということでって…ありえねえだろ!?」

「いや、まぁいいんじゃない?ギルだし」

「そういう問題か…?」


電車の吊革に捕まって私を見下ろしたアーサーは大きくため息をついた。
まあ私もびっくりしたけどさ。
だけどギルがあんなに嬉しそうにしてるの見てたら、まぁいいかなんて思っちゃったんだよなぁ…。


「そうだ。昨日とその前の日は雨でできなかったんだけど、私今日から食後にジョギングしようと思ってるんだよね。ダイエットも兼ねてそろそろ体動かしておかないと…」

「そういえばお前のとここの時期にスポーツ大会とかあったよな。イベント事多いよな…」

「お祭り好きなんだろうね〜社長が」

「ジョギングか…。俺も最近体動かしてないし一緒に走ろうかな」

「うん!一緒に走ろうよアーサー!!ギルも一緒に走ってくれるって言ってたし三人で頑張っちゃおうよ」

「うげ…あいつもかよ…!!まぁいいか。それじゃあ今夜からな」

「うん!」


アーサーが一緒に走ってくれるならちゃんと長続きできそうだ!!
私とギルだけだったら…なんというか、面倒くさくなって途中放棄しちゃいそうで怖かったんだよね…
いざという時アーサーを頼りにしちゃうのはもう癖のような物になってきたかもしれない。
大人としてダメだと思うんだけど…まぁお隣さんだし協力し合うのは悪くないよね、うん。





「トニーさん!」

「おひゃぁああ!!名前ちゃんや!!久しぶりやなぁ〜!!」

「最近会えなかったもんね〜。どう?新しくなったアパートは」

「めっちゃ快適やで〜!って言っても相変わらず狭いしボロ臭い雰囲気やけど前よりはだいぶ良くなったわ。せやけど名前ちゃんとこおった方が何千倍も居心地良かったでー…。あーあ〜」

「まぁまぁ。そういえばロヴィーノ君とフェリシアーノ君が帰国してそうそう電話してきてね。わざわざ大学まで会いに行くはめになっちゃってさぁ〜」

「そういやそんな事言ってたなぁロヴィの奴。それからお土産がどうとか、近々名前ちゃん家に遊びに行くとか色々言ってたで」

「お土産に関しては…うん。遊びに来るのかぁ。事前に連絡入れてくれれば何か用意しておけるんだけどね」

「多分あいつ連絡無しにいきなり来る思うで〜。俺もいつもそうやもん」

「ロヴィーノ君らしいけどね」


そやなぁとトニーさんはどこか照れくさそうに笑った。
ロヴィーノ君の事大事に思ってるんだなぁ、トニーさんって。

ついトニーさんと話し込んでしまって、スーパーを出る頃には辺りが薄暗くなっていた。
いけないいけない、早く帰らないとまたギルに文句言われちゃう…
急ぎ足でマンションにかえる途中、後から私と同じ速度で歩く足音が聞えた。
私が足を止めると同じように止まって、歩き出すと同じように靴の音が鳴り始める。
…なんだろう、気持ち悪いなぁ…。
いざという時の為にアーサーに持たされた防犯グッズを手に握り、急ぎ足でマンションに帰ろうと足を進めた。
同じように早まる足音。
やばい、本当に怖い。これは思い切って振り向くべきなのかな…
そうだよね、もしかしたら勘違いかもしれないし。
うん、頑張れ私!!それじゃあせーので振り向くよ…!!
せーのっ


「………」

「ボンソワール名前ちゃん」

「ってあんたかぁああい!!お前か!!お前がさっきから私の跡つけてたんかゴルァアア!!」

「ちょっ、キャラ変わってる!!いやぁ、怯える名前ちゃんの後姿が可愛くてついね!!お兄さんちょっぴり変質者の気持ちが分かっちゃった、みたいな!?」

「分からなくていいですよ!!なんだってフランシスさんはいつもいつもぉおおお!!アーサーにいいつけますよ!!呪いかけさせますよ!!」

「ヒィイ!!それだけはマジ勘弁!!あいつのは洒落になんないから!!」


振り向いた後方にはいつぞや私を追いかけてきた時のようないやらしい顔をした髭…フランシスさんが居た。
本当にこの人ろくな事しないよな…!!


「何か用ですか…?」

「いや、たまたま見かけたからさ。もう暗くなってるしこんな可愛い子を一人で歩かせるのは危ないと思ってね〜」

「あんたが一番危ないですよ。心配してくださるのは嬉しいですけ私は大丈夫ですから!!」

「そうかそうか。こりゃお兄さん余計な事しちゃったかなぁ」


だけどマンションまで送らせてよ、とやんわり微笑んだフランシスさんは何時ものフランシスさんとは少し違って見えた。
なんていうか、どこか寂しそうと言いますか…
私の気のせいかもしれないけど。

その日の夜は予定していた通り食後のジョギングを開始した。
一応20分程度走るはずだったんだけど、最初の5分で私とアーサーはヨロヨロになってしまった。
ま、まさかこんなに体力落ちてるなんて…!!
意外な事に持久力のあるらしいギルは顔色一つ変えずに「あー走るの楽しすぎるぜ!!お前ら走んの遅すぎなんだよ!!ガーハハハ、ガホッ!!うげぇっ喉っ!!喉虫入った!!うおええええ!!」と一人で楽しんでいるようだった。
ゆっくりとしたペースで走りながらアーサーに今日のフランシスさんについて話してみると、「そういやあいつ今日が誕生日だった気がするな」と呟いていた。
そうだったんだ…。
一応お世話になってるんだし何かプレゼント渡したかったなぁ…。
もっと早くに教えてくれれば良かったのに、ギルもアーサーも!
今日のいつもと違うフランシスさんもなんとなく気になるし、明日なにか買ってフランシスさんのとこにプレゼントを渡しに行こう。
自宅は分からないからエリザのお店にでも来てもらおうかなぁ。
予定、空いてるといいけど。

それにしてもギルが体力バカだったとはなぁ…
まぁ前々からわりといい筋肉してるとは思ってたけど。
家に帰ってギルの筋肉を触ってやると、「ばばばばばばか!!なにすんだよぉおおお!?」と分かりやすい反応を返された。
もう少し筋肉ついてたら私好みなんだけどなぁ。
いや、けっして筋肉フェチじゃないけどね!

だけどサディクさんの筋肉はすっごく素敵だと思うなぁ…






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