「そういえばそろそろスポーツ大会の時期ですねぇ」

「へ…?」

「あれ、名前さん忘れちゃったんですか?毎年この時期に社内でスポーツ大会やるじゃないですか!!各部署から数名選抜されてのスポーツ大会!!優勝した部署には飲み放題食べ放題の宴会チケットがもらえるんですよねぇ〜。本当にうちの会社って行事事が多くて楽しいですよ〜!!」


ティノ君のわくわくとした気持ちが口調から伝わってきた。
って、スポーツ大会って…そういえば去年も梅雨明けの炎天下でやってたような気がするなぁ…。


「確か今年は野球でしたよね。少なくても9人は参加しなくちゃいけないのかぁー…」

「去年はバレーだったんだよね。私も無理矢理参加させられたけど…」

「僕は仕事が入ってて行けなかったんですよねぇ…。それに僕って小さいし。去年はスーさんも大活躍だったんですよね?」

「…そんなことね」

「スーさん照れてるなぁ〜。結局去年は決勝で負けちゃったんだけどね」

「デンさんが本当に悔しがってましたね」

「うん…あんなに悔しがってるデンさん初めて見たもんねぇ…」

「今年はなんとしてでも優勝しないと…!!」


その日の午後、デンさんからの選ばれた選抜メンバーの発表が行われた。
私とティノ君、スーさんやノルさんやデンさんを含む11人が選抜され、各自トレーニングを怠らないようにとのお達しが出た。
スポーツ大会にはルールがあって、最低でも1人の女性社員をチームの中に含めないといけない。
私の部署は圧倒的に男性社員が多い上に、体力のある若い女子社員といえば私ぐらいしか居ないのだ。
よって、拒否権は認められないわけでして…




「たっだいまぁ〜」

「んー」

「おかえり〜名前ちゃん」

「あ、来てくれたんですね〜フランシスさん!!」

「んだよ、この変態呼んだのお前か!?」

「うん、その変態を呼んだのはこの私だ」


家に入るなり玄関へ出迎えてくれたギルとフランシスさん。
実はフランシスさんに料理について色々教えてもらおうと思ってお呼びしたんだよねぇ〜。
フランシスさんって変態だけど料理の腕はすっごく良いし!!
今度サディクさんに手料理を食べていただく約束しちゃったし頑張って腕を磨かないと…!!


「さぁーて名前ちゃん、準備はいい?」

「はい!」

「エプロンOK?」

「OK!」

「手洗いOK?」

「OK!」

「ノーパンOK?」

「お……って何考えてんだよあんた」

「いや、冗談冗談!!怖いからそんな顔しないで!!」

「料理中にふざけてると怪我しますよ」

「はーい…。それじゃあ始めようか。今日はラタテュイユを作るからね」

「ラタテュイユ…?」

「フランスの家庭料理で夏野菜なんかを軽く煮込んだ料理なんだけど、そのまま食べても美味しいしパスタの具なんかにも使えしね。夏の暑い日には冷やして食べるのも絶品なんだよなぁ〜」


手際よく野菜を切り始めたフランシスさんは説明をしつつ冗談も挟みながらすいすいと料理を作っていった。
フランシスさんってお料理教室の先生とかに向いてるんじゃないかなぁ…
いや、生徒のご夫人に手ぇ出してクビにされるのがオチか…

見た目も綺麗なフランシスさんの料理は私が作るものより遥かに美味しそうだった。
私の料理っていつもギルに「ワンパターンなんだよ」って言われちゃうもんねー
新しい料理を覚えるのって大変だけどすっごく楽しいや。


「マジで美味すぎるぜお前の料理!!」

「お前は相変わらず食事のマナーがなってないよなぁ〜。名前ちゃん、ちゃんと躾しなきゃだめじゃん」

「もう諦めたよ。それでも良くなった方なんじゃない?」

「まぁ以前よりはましになってる気がするけどさぁ〜」

「マジでうめぇ。名前のより10倍うめーぜ!!」

「じゃああんたもうフランシスさん家の子になりなさい!」

「母親かよ!!」

「お兄さんもこんなでかい子供要らないよ〜。名前ちゃんだったらいつでも面倒みちゃうんだけどなぁお兄さん!」

「はい。人類が滅亡してこの世に私とフランシスさんしか居なくなったらお世話になる事にしますね」

「うん、是非にでも」

「アホだろお前…」


それから食後に料理本を広げて色々とフランシスさんにアドバイスをしてもらいながら色んなコツを教えてもらった。
これで少しは私の料理も美味しくなるのかなぁ…
今度試しに出来栄えのよさそうなのをフランシスさんに味見してもらおうかな。

フランシスさんの帰った後でお風呂上りに体を動かそうとストレッチをしてみた。
まぁスポーツ大会のためにも体を慣らしておかないとね。
だけど私って体硬いんだよなぁ…
足を広げて体を前に倒そうとすると、「んだよそんなもんもできねーのか!?手伝ってやるぜ!!」と高らかに笑ったギルにおもいっきり背中を押された。
普段自分の力では倒れない角度へ曲がった私の体はみしみしと酷い音を鳴らして激痛が走る。
本当に痛かった…!!
もちろんギルに「もっとゆっくりやれ」と指示を与えてストレッチを手伝ってもらうことにした。
ダイエットにもなるし明日から食後に20分程度ジョギングでもしようかなぁ…
その事をギルに相談してみると、「夜は危ないだろアホ!!」と怒られた。
おぉ、ギルが私の心配をしてくれるなんて…!!
「なら一緒に走ってよ」とお願いすると、そっけない態度で「いや、それは無理」と返されたもんだからなんとなく腹が立った。

お前なんて中年のオッサンのようなビール腹になってしまえ。
まぁいいや、明日にでもアーサーを誘ってみよう。
あいつ体力ありそうだけど結構持久戦とか弱いんだよね…

小さく「まぁアーサーだったら大丈夫かなぁ」と呟くと、テレビを見ていたギルが勢いよく立ち上がりよくわからないポーズととって「しょうがないから俺様がお前のダイエットに付き合ってやるぜー!!」と叫んだ。

いや、まぁギルが良いならそれで良いんだけどね…


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