ああもう、今日は朝からとんでもない目にあったなぁ…。
あろう事かアイス君の前であんな際どい下着を見られてしまうなんて。
高校生の教育上良くない…!!
まぁ私の作ったお弁当もすっごく喜んでくれたし良かったなぁ。
学校までアーサーが車で送ってくれたし。
ついでに私も会社に乗せてってもらえたからラッキー!

今日は帰りにエリザのとこに寄ってコーヒー買って帰らないとね。
デンさんに美味しいコーヒーがあるって教えたら「買ってきて俺にだせ!」なんて命令染みた事言われちゃったからなぁ…
どうやらアイス君の事は何も気にしていないようだった。
というより、ノルさんが美味くごまかしてくれたのかな。
お昼を一緒させてもらった時は何も言ってなかったけど。
お昼ごはん奢るって約束してたのにご飯を食べ終わるなりレジに向かったノルさんは無言で私の分までお金を払ってしまっていた。
何を考えているのかは分からないけど女性に、しかも部下に奢らせるのはダメらしい。だったらなんで電話で私が奢るって言った時頷いたんだ。
まぁたまにはノルさんと二人で一緒にご飯を食べるのも楽しいけどね。
自然と無言になる事が多いけど、不思議とノルさんとの無言って心地良いんだよね。


「こんばんは〜」


いつものようにエリザのお店に行くと、中はいつもよりお客さんが少ないように見えた。


「あら、こんばんは」

「ローデさんこんばんは〜」

「聞きましたよ。アントーニョはちゃんと自分のマンションに戻ったそうですね」

「そうなんですよ〜。私もトニーさんには頼りっぱなしだったんで居なくなるとすっごく寂しいんですけど」

「貴方の部屋は厄介者ばかりですね…。あぁ、そうそう。今日エリザはお休みですよ」

「え?」

「何か用があるとかで急にお休みを。まぁ、病気や怪我で無いのならそれで良いのですが…」

「そうなんですか…。残念だなぁ」

「何か用でも?」

「いえ、エリザの顔が見たかっただけですよ。あとコーヒー買いに来ました」

「マスターに言うといいでしょう。まぁ今からショパンを一曲演奏しますのでお聞きなさい」

「はーい」


ショパンかぁ。ローデリヒさんらしいな。
カフェのマスターにいつものコーヒーをお願いして近くの椅子に座って待ちながらローデリヒさんのピアノの音色を聞いた。
相変わらず上手だなー…。

それからローデリヒさんのピアノに聞きほれて結局三曲程聞き入ってしまった。
いつもより遅くなってしまったので急ぎ足で家に帰ると、ギルが玄関で仁王立ちしていた。


「おせーよ!!」

「しょうがないじゃんエリザのお店に寄ってたんだから!!」

「それにしても遅すぎんだろ!!遅くなるときは連絡入れるって約束だろ!!」

「うるさいなぁお前は頑固親父か!!すぐに晩ご飯作ってあげるから待っててよ」

「すぐにだぜ!!まじペコペコすぎてお腹と背中がくっつくぜー!!」

「はいはい今すぐにー」


ったく世話のやけるガキだな…。
そういえばギルと二人っきりの夜って久しぶりなんだよね…。
トニーさんはバイトが遅くなってもちゃんと帰ってきてたし。
なんだかリビングもちょっぴり広くなったような気がする。
こんな事でもしギルが居なくなった日には私どうなっちゃうんだろう。
一人じゃ、広すぎるだろうなぁ。


「マジで今日カレーなのかよ」

「だって昨日アーサーと約束したしね」


もぞもぞと後に立ったギルが私の背中に多い被さるようにして首元に顎を置いた。
自然と前のめりになる体を必死に抑える。


「何やってんだお前は…!!」

「めーしー」

「今やってるでしょーが!?なにお前、マジで小学生!?もう中二通り越して小学生だよ!!」

「なんだよ中二って。お前中二好きだよな」

「そりゃあ…って、好きじゃないから。ああもう、料理の邪魔すんな!!」

「はーらへったー」

「すぐできるから待っててってばよ」

「NARUTO!?」

「あ、今のなし。なんかつい口に出てた」

「お前もオタク化してんじゃねぇ?本田の影響力マジでやべぇ」

「してないから。ほら、退かないとカレーのルーが飛ぶよ〜」

「飛ばすなよ!!」

「だから退け。重い」

「なぁ」

「なに」

「あの下着…」

「なに」

「ずっと閉まっておくのかよ」

「当たり前じゃん。誰かにあげられるわけでもないし。エリザなんかだと似合うんだろうけどなぁ…。おっといけない、危ない妄想が…」

「まずサイズが合わn「何か言った?」いえ何も」


その後もだらだらと背中に体重を乗せるギルをそのままにカレーを作った。
玄関の呼び鈴が鳴るとパッと離れてリビングに戻ったギルはいつもと変わらない仕草でぐーたらとテレビを見始めた。
幸せそうにカレーを頬張るアーサーに若干の癒しをいただき今日一日の疲れも愚痴のこぼし合いで癒されていった。
うんうん、色々大変だよねぇお互い。
仕事の話になると興味がないのか話に入れないのか、カレーを食べ終わってすぐにソファーに横になったギルはそのまま漫画を読み始めた。
あ、でもちょっと拗ねてるなぁアレ。
ギルが拗ねてる時って無理矢理顔を私から背けるんだよね。
構ってほしいから足ぴょこぴょこさせたり「あー一人楽しすぎるぜー」って騒いだり。
まるで子供なんだけど、こういうとこが可愛かったりするんだよねぇ…
私も末期だなぁ。

アーサーの帰ったリビングで、例のイヴァンにプレゼントする予定のマフラーの仕上げにかかっているとまたもや背中に圧し掛かる重みが。
また甘えっ子モードなのかなぁ…
まぁ、久しぶりだし良いか。

頭をぐりぐり押し付けられたり背中に”バカ”と指で書かれたり、なんだかよく分からないままされるようにしていたけど、ブラのホックを引っ張ってバチンとやられた所で私の何かがブチ切れた。

殴られた頬とボロボロになった体を引き摺って風呂場に向かうギルは…もう既に泣いていた。いつもなら我慢してるのに、今日は我慢できなかったらしい。
まぁたまには力の差ってのを分からせてあげないといけないしね

うーん、でもちょっとやりすぎたかなぁ…。
あとで謝っておくか。
頭でも撫でてやれば機嫌も直るだろうしね。
単純な子で本当によかった。


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