「あ、ここで大丈夫だよ!!」

「OK」

「ごめんね香君、わざわざこんなとこまで送らせちゃって…!!今度お礼するから!!」

「お気遣いはナッシング。俺はオールオッケー」

「うん、分かり辛いけど気にしなくていいって事だよね。ありがとう!また今度お店に行くからね!それじゃあ…!」

「うん」


ひらひらと手を振る香君に大きく手を振って、辺りをキョロキョロと見回す。
いったいあの兄弟はどこに居るんだろう…


「OH!!名前ーーーーっ!!!」

「ごふぅうう!!ちょっ、重っ、ぎゃぁああ!!」

「あ、アルぅううう!!ダメだよ名前さん死んじゃうよぉおお!」

「ごめんごめん、つい力加減を忘れてたんだぞ!!」


HAHAHAHAHAと天高らかに笑い声をあげたアルフレッド君はいつもよりテンションが高いらしい…
よりによって面倒くさいのに捕まっちゃったよ…
そういえばこの二人も同じ大学なんだっけ。
じゃあロヴィーノ君とフェリシアーノ君の事知ってるかな…


「ねぇ二人とも。ロヴィーノヴァルガスとフェリシアーノヴァルガスって兄弟知ってる?」

「ヴァルガス?さぁ、知らないなぁ…。なんてったってこの大学は広いからね!!それから留学生も多いからどいつがどの顔だったなんていちいち覚えていられないよ〜!」

「僕も知らないなぁ…。その二人がどうかしたの…?」

「ちょっと知り合いなんだけどね、緊急事態というか…」

「名前ーーーこのやろぉおおお!!!」

「うヴぇぇえええええ!!名前〜〜〜!!」

「って居たぁあああ!!」


涙と鼻水を垂らしながら両手を広げてこちらに走ってくる二人。
あーもう顔ぐちゃぐちゃにしちゃって…!!
一足早くフェリシアーノ君が私に飛びつこうとした所を数歩後に居たロヴィーノ君飛び蹴りをして邪魔をした。
…何やってんのこの子達は…


「ヴぇええ!!痛いよ痛いよ兄ちゃん酷いよぉおお!!めそめそぉおお!!」

「うっせぇ黙れ馬鹿弟!!俺より先に飛びつこうとしてんじゃねぇえ!!」

「相変わらずだね…二人とも…」

「よ、よぉ名前。久しぶりじゃねーかこのやろー!!」

「久しぶりだね、ロヴィーノ君にフェリシアーノ君」

「名前…ハグ、ハグー」

「あーもう、はいはいハグね…」

「先越すんじゃねーよ!!」


地面にはいつくばって両手を伸ばすフェリシアーノ君の手を掴むと、フェリシアーノ君の背中にロヴィーノ君が乗っかった。


「痛いよ、痛いよ兄ちゃん…」

「名前!!俺が先だぜ俺!!ほら、ハグしろよちくしょー!!」

「ああもう煩い!!静まれぇええええ!!」

「うっ、怖い、名前怖いよぉおお!!!」

「うぐっ、別に怒らなくてもいいだろちくしょっ…ひっく」

「あああもぉおおお!!」

「名前ーーーっ!!なんだよこいつらぁあ!!俺の名前に馴れ馴れしすぎなんだぞ!!」

「何言ってんだ金髪眼鏡!!こいつぁ俺のもんなんだよバーカバーカ!!犬のクソでも踏んでろこのケッバレ!!」

「OH!!君こそ猫におしっこかけられるといいよ!!この[ピーーーーー]!!!」

「アルゥゥウウウウ!!それはダメ、その言葉はダメだからぁあああ!!」

「うえっ…ヒック…めそめそめそぉおおお〜」


あぁ…頭が痛い…


「あのね、皆…お姉さん皆みたいに若くないからついて行けない…。もう頭バーンってなりそう」

「何年寄りみたいな事言ってんだよちくしょー。とっととアントーニョが今どうなってんのか教えろよ!!あいつ携帯も通じねーし何やってんだ!!」

「今はバイト中!!訳あってトニーさんちの屋根が吹っ飛んじゃって、つい昨日まで私の家で一緒に暮らしてたの」

「はぁぁぁああああ!?」

「えー…いいなぁトニー兄ちゃん」

「一緒に暮らすってお前、ちょっ、なんでだよ!?」

「いいじゃん別に。トニーさん頼る場所ないって言うしさぁ…。ほら、分かったらもう家に帰りな!!帰国してきたばっかで疲れてるでしょ?」

「なんで…なんでお前の家なんだよこのやろー…」

「ロヴィーノ君はイタリアだしフランシスさんは相変わらずフラフラやっててあれだし…。トニーさんも頼りになる相手が私の家しかなかったんだよ。泣きながら私の家に来たもん」

「うっ…ぢぐしょー…」

「泣かないの。鼻水出てるし…。ほら、ちーんして、ちーん」

「子供扱いすんじゃねーよ……。ちーん!」

「名前俺もチーンってやってくれよ!」

「放送禁止用語使うようなギャングにはしてあげません」

「う゛ぅうー…」

「ほら、もう日もほとんど沈んでるんだし早く帰らないと」

「分かった…。そうだ名前、これイタリア土産」

「ヴぇー。俺からもあるよ〜」

「え?あ、うん。ありがとね、二人とも」

「また連絡するからな!!」

「チャオー名前〜!」


はぁ…嵐が去った…


「名前、もう暗いしマンションまで送っていくよ」

「え?アルフレッド君とマシュー君電車だよね?いいよ、ここからだとマンションまで近いし…」

「HAHAHA!!今はバイクで来てるんだぞ!!」

「そうなんだ」

「名前さん、ちゃんと送っていきますから安心してください」

「そっか…じゃあお言葉に甘えようかな」


しばらくその場で待っていると、低いエンジン音を響かせて現れたピカピカに光る大型バイクのサイドカー付き。
運転しているアルフレッド君に無理矢理後に乗せられて「しっかり捕まってるんだぞ!!」と声をかけられるともの凄い勢いでバイクが走り出した。
う、わ…!!スピード出しすぎだよアルフレッド君…!!!
難なく無事にマンションの前まで送り届けてもらい、もう一日の体力と精神力を使いきった私は家に入るなり玄関の前でぶっ倒れた。
悲鳴をあげたギルが「わー!!」だとか「救急車!!117ー!!」だとか叫んでいた気がするけど、もうこの際気にしてなんか居られない。
なんてハードな一日なんだ、今日は…
若い子には付いて行けないよー…。
我も歳をとったって事なのかなぁ。

あ、二人にもらったお土産開けてない…
まぁ明日でいいかな

とにかく今日は本当に疲れた。
しばらくはあの大学にもアルフレッド君にもヴァルガス兄弟にも近づきたくない気分だよ…

ううう、眠い…


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